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第3話 プレゼント

 手紙が届いた翌日、ルーカス様が我が家を訪れ、さっそく父と応接室で話を聞くことになった。

今回も内容が内容だけに人払いをしている。


「ローラ嬢。リストは完成しているかな?」


「はい殿下。こちらにございます」

リストと資料をルーカス様に渡す。

よし!私の仕事はこれで完了!心の中で小さくガッツポーズをした。

ルーカス様が無事に探しものを終えたら、帰国前にここの地域を通るはずなので少し話でも出来るかもしれない。ついでに婚約者も見つかって惚気けられたらどうしよう!


ルーカス様はリストをパラパラと眺めたあと満足そうな顔をしてから侍従に手渡した。そして、代わりに包みを受け取っている。

ルーカス様が頷くと侍従はリストを確認するためか部屋から出ていった。


「では、私からはこれを。ぜひ着てみて欲しい」

ルーカス様はピンク色のリボンの付いた包みを私に渡した。


なんだろう。父の方を見ると、うんうんと頷いている。

ここで開けてみろってことね。

服をもらっても自室でしか着られないんだけどね。


包みを開けてみると…………



真っ白なエプロン。

裾にかけてふんわりしていて、フリフリレースが裾と肩に付いていて前世で「メイドさん」がつけるやつ。

後ろの紐も太めになっているから結ぶと大きめのリボンが出来てカワイイです!



「呪いのメガネの話は聞いていたからね。着替えがダメなら上からつけるタイプならどうかと思ってエプロンをオーダーしたんだが、こちらを試してはどうだろうか?」

ルーカス様はニッコリと微笑んでいる。


この間の話を覚えていてくれたんだ!

私は黒い質素なワンピースの上にエプロンを身につけた。



おおっ、身につけられる!!かわいい!

前世でメイドさんにも憧れたのよね〜!

この世界の侍女のエプロンはもっと簡素なものだ。ルーカス様は前世の記憶からオーダーメイドしてくれたのね。アニメとか漫画見てるって言っていたもの。


このメガネの呪いの仕組みがよく分からないけどエプロンはつけられるの!?これは新たな発見かもしれない。この部屋から出ても大丈夫かな。


「殿下!ありがとうございます。嬉しいですわ。私、お茶のおかわりを侍女に申し付けてきますわ」

私は取ってつけたようにお礼を言うと、父が止めようとした手を振り払いドアから廊下に飛び出た。

なんだかドアの向こうから誰かの笑い声が聞こえた気がするが知らない。


部屋から出てもエプロンは消えない!!

今までは自室やその時着替えた部屋から出ると黒い質素なワンピースに戻っていた。


スキップしながら厨房に向かい、侍女にお茶のおかわりを用意するように伝えた。

早く自室に戻って鏡で見てみたいな。楽しみ♪自室以外で黒いワンピース以外の姿をするのは久しぶりだ。

応接室のドアを開けると、ルーカス様は笑いを堪えるような表情でこちらを見ている。

ううっ、恥ずかしい。嬉しさが込み上げてニヤついている顔を見られてしまった。さっきの笑い声もルーカス様だろうな。


「ローラ嬢よく似合うではないか。ではこれで決まりだな!」

ルーカス様は悪い笑顔(当社品)だ。


父はちょっと考えて

「わかりました殿下。さきほどのお話はお受けいたしましょう。ローラ、殿下がお前のために用意してくださったエプロンよく似合うよ。1枚違うだけでずいぶん印象が変わるものだな」


父とルーカス様は私がいない間に何の話をしたのだろう。まさか私は売られたりしてないよね。


「ローラ嬢、何か変なことを考えてはいないかい?この国での探しもの(旅行兼ヨメ探しの())で私の案内役と侍女を務めてほしいとドットリー男爵にお願いしたんだよ。戻ってきた君の表情で決めると言われたが、どうやら合格だったようだな」

今度は王子様スマイルでニッコリと微笑んだ。


「殿下の探し物のお手伝いはさせていただくとは言いましたが、婚約破棄されたばかりの娘を旅に出させるのはと躊躇いたしました。申し訳ございません。ローラ、殿下のお役に立つように頑張りなさい」

父は申し訳無さそうにしているが、ルーカス様は全然気にしていないようだ。


「さて、それでは国家機密に関わる情報もあるのでドットリー男爵にも席を外していただこうか」



―――――――


「ちょっとルーカス様!どういうこと!」

私はルーカス様に詰め寄った。


「リストは君が作ってくれたんだろ?君がいたほうが話が早いじゃないか。それに、せっかく転生者仲間に出会えたんだ。この国にいる間に君ともう少しゆっくりと話したかったんだ。それが1番の理由だよ。ちょっと強引に進めた感じはある。ごめん」

ルーカス様は少し寂しげな表情で私を真っ直ぐに見つめた。


たしかに王族としての制限の多い生活の中で気を許せる転生者仲間に会ったら話したくなるのかな。私は呪われてこんな姿で婚約破棄はされているけど自由はある。

ちょっと可哀想になってきたかも。

婚約破棄された時点で傷モノ扱いだし、今さら他国の王子と旅をしたって元々よくない評判なんて変わらないか。それにこの魔女っ子スタイルじゃ近寄ってくる年ごろの男の子もいないし。自分で言っていて悲しいけど。


「わかりました〜。せっかくだし、楽しみながら旅しよっか。ルーカス様が帰国したら前世のことももう話すこと出来なくなっちゃうし。あと、改めて〈メイドさんのエプロン〉ありがとう。前世で着てみたかったやつだから」

ニコッと笑ってクルリと回ってカーテシーをした。


「ありがとう!!よろしく頼むよ!ローラの〈メイドさん〉姿もよく似合ってかわいいよ」

ルーカス様は両手でギュッと私の手を握った。

面と向かって褒められるとなんだか恥ずかしい。



「ルーカス様、そろそろよろしいですか?ルーカス様のお姫さまのご機嫌は治ったようですし」

ガチャとドアが開き茶色のサラサラした髪の可愛い顔立ちの少年が現れた。

なんか後半よく聞き取れなかったけど、私の機嫌は治っています!


「ノア!うるさいから!ローラ、紹介するよ。僕の乳母の息子で幼馴染のノアだよ。例の宝物庫の担当した幼馴染の弟なんだ。一緒に来たんだけど、この間は船酔いの影響で部屋の端に立っていただけで大人しかっただろ?」

ルーカス様は頭をポリポリと掻きながらノアを指さした。


「ローラ様、この間はきちんとご挨拶もできず申し訳ございませんでした。私はノア・フォスターと申しまして、ルーカス様の侍従をしております。この度は愚兄のためにお力を貸していただけるとのこと大変感謝しております。テンセイシャのお話は聞いております。幼い頃からルーカス様はゼンセの話を私にはしてくれておりました。私ではわからない点が多く寂しい思いをさせて…………」


「ノア!ほら、ローラも出発の準備をしなくちゃいけないだろ?その辺でいいから。ローラ、ノアの前でもいつも通りで大丈夫だから。よろしくね!」

ルーカス様は慌てて話を遮った。ま、長くなりそうだったしね。

ノア様はこの間は部屋の端に立っていて存在感がなかったけど、実はおしゃべりな人なのね。


「わかったわ。ノア様、ローラ・ドットリーです。よろしくお願いしますね!」

私は手を差し出したが


「ほらほら急ぐよ!!ローラは荷物の準備して!」

またルーカス様に遮られてしまった。


 私も急きょ探しもの(旅行兼ヨメ探し)の旅に出ることになった。急いで部屋に戻ってトランクに荷物の準備を始めた。

着替えのワンピースは部屋用しか必要ないのが悲しいかな。荷物が少なくていいけど。もらったエプロンは身につけて鏡の前で見たらやはりカワイイ!クルリクルリと何回か回ったところで我に返る。急がないと!


そうそう、この黒い質素なワンピースは一晩経つとどんな汚れも臭いも、ほつれさえも消えているという素晴らしいポテンシャルの持ち主?なのだ。 

三編みもメガネさえかければ自動できれいに編まれるし、服装を気にしないズボラな人なら楽でいいのかもしれないな。あとはパジャマと下着と〜次々に荷物を詰めてゆく。私の作ったリストだと、訪問先は20件ある。移動なども含めるともしかして2ヶ月はかかるかな?


我が家の事業もありこの世界では旅行なんて行ったことないので楽しいかもしれない。気分転換にもいいしね!


荷物をまとめて玄関を出ると、きらびやかではあるけど重厚な作りの長距離用の大型馬車、後ろには護衛と荷物を載せる一回り小さい馬車が用意されていた。 


見送りの父に挨拶を済ませて、荷物を後ろの馬車に載せて「よいしょ」と乗り込もうとすると


「ローラ嬢はこっち」

ひょいと後ろからルーカス様に抱きかかえられ馬車を降ろされた。

「ちょっとルーカス様!下ろして下さい。自分で歩きますから」

足をバタバタさせてみるが全然微動だにしない。


「いいから、いいから、そのまま。そのまま。急ぐからね〜」


視界の端っこに目を丸くしている父が見える。うわ、恥ずかしいっ!!


大型馬車にポンと乗せられてしまった。

さすが、長距離用の座席はフワフワと座り心地がいいってそうじゃない!!


「ルーカス様!もう恥ずかしい。普通にこっちに乗ってと言ってよ!」


「まあまあ、さあ行こうか!最初の街に出発だ」

ルーカス様は私の隣にしれっと座った。


明日も夜に更新予定です。

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