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第1話 男爵令嬢は婚約破棄される

第4作目、こちらは連載になります。

週末コツコツ投稿していく予定になりますので、よろしくお願いします。


 「ローラ、僕は君みたいにセンスのない娘は無理だよ。婚約は破棄させてもらおう。その代わりに妹バネッサを我が家に迎えてあげるよ!」

領主であるヨアン・フェイス伯爵がニコニコと笑顔で告げた。

我が家の美しい庭で何を言われているのだろう。私は黒いワンピース姿で立ち尽くした。


その腕に絡みついているのは私の妹バネッサだ。

「お姉ちゃんごめんね〜。ヨアン様は私の方がいいんだって。いくら元が良くてもおかしな格好しているんじゃあね。それにね、私のお腹にはヨアン様のお子がいるのよ。ウフフ」

バネッサは愛おしそうにお腹を撫でている。


「そんなっ!」

バネッサと婚約者がそんな関係になっているだなんて。


そんな話をしているうちに部屋を出て1()5()()、お茶会が始まって10分が経った。


マズイ!!

ピューンと黒いものが飛んできて私の顔の指定席に乗っかった。


()()()である。

ハーフアップにしていた髪もキュルキュルと編み込まれて三編みになった。


「ハッハッハ!なんだそれは!見世物小屋にでも行ったらどうだ?」

「お姉ちゃん、私は恥ずかしいよ!キャハハ!」

2人は顔を真っ赤にして笑っている。



私だって恥ずかしいに決まってるじゃない!

その場から走って逃げ出した。



子ができた以上父も私も反対することも出来ず、私とヨアン様の婚約は破棄され妹のバネッサが伯爵家に迎えられることになった。バネッサがヨアン様と一緒に暮らしたいとのことで、婚姻前だがヨアン様の家で暮らすこととなった。



――――――――




 私の名前はローラ・ドットリー。ドットリー商会の長女、18歳だ。

お祖父様が輸入で功績をあげたということで男爵の位をいただいてはいるが、男爵とは名ばかりだ。


サンダール王国で海に面しているこの地域は外国との交通と貿易の要所となっている。うちの商会では外国からの輸入品を主に取り扱っており利益を生み出している。


しかし、その中には時々厄介なアンティークが混じっていることがある。簡単に言うと私はその厄介なアンティークによって1年前から苦しめられているのだ。


私は黒髪の三編み姿にメガネ、黒い質素なワンピース。

好き好んでこんな格好をしている訳ではない。私だってヘアアレンジしたり、美しい色のワンピースを着てお出かけしたいのだ。


輸入品であるこのアンティークのメガネをうっかりかけてしまったときから、()()()()姿()()()()()()()()。素敵な水色のワンピースに着替えても自室から出ると、黒い質素なワンピースに変わってしまうのだ。水色のワンピースはちゃんとクローゼットに戻っているからあら不思議。


そして、このメガネは自室の外で外してもなんと15分で私の顔の定位置に戻ってくるのだ。寝ているときだけずっと外していられるのだけれど……


そもそもこの国ではメガネという概念がない。 

国民みんな目が良いらしい。

メガネをかけているだけで変な目で見られるのに、いつも同じ格好の黒い質素なワンピースじゃ白い目で見られる。


そんな私が「メガネ」を知っているのは前世で日本という国で暮らしていたから。前世では視力がよくてメガネにちょっと憧れていたけど、まさかメガネのない世界でメガネに苦しめられるとは!!


ついでに言うとこの姿は前世の私が幼い頃にTVで見ていた「魔女っ子アメリ」の姿そのものなのだ。三編み、メガネ、黒いワンピースの魔女っ子、萌え系アニメではないので姿は地味なのだ。



 領主であるヨアン伯爵と婚約を結んだのはメガネをかける前のこと。単純に私の容姿が気に入ったのと、新しい事業始めるのにドットリー商会の資産と販路が魅力的だったから。


私が魔女っ子スタイルになってしまっから、妹に乗り換えていいとこ取りしようという魂胆だろう。



婚約者に捨てられる形になったが私はむしろ嬉しかった。私は父の事業を手伝うのが楽しいし、前世で自由を知っているからこそ貴族の奥様なんて柄じゃもの。

ただ、バネッサはあまり考えて行動するタイプの娘ではないから貴族の奥様が務まるかは心配だ。

ああいう物言いをしても私にとっては可愛い妹なのだ。




 そんなある日だった。

外国からの商船に驚くべき人が乗船していたのだ。

父の商会に使用人が慌てて迎えに来たので私も一緒に向かうことになった。


港に着くと、商船の周りには人だかり出来ていた。

「初めまして。突然来て悪いね。私はリンガール王国のルーカス・リンガールというものだ」

金髪碧眼の整った顔のThe王子様な見た目の男の人が商船から降りてきた。

リンガール王国とは海を隔てた向こう側にあるという大国だ。

リンガールという名前が付いているということは王族なのだろう。なぜ、王族が商船に!? 


「これはこれは、リンガール王国の王族の方がいらっしゃるとは光栄です」父は冷や汗をハンカチで拭きながらにこやかに話しかけている。

「君たち、よろしく頼むよ」

気さくに握手を求めてくるなんて、リンガールの王族は気さくなところがあるのね。


「ふむ。ここでは込み入った話は難しいな。どこかゆっくりと話すことが出来るところはないだろうか」


「それではまず我が家へお越しいただけますか。領主の方にも連絡を入れておりますが、時間がかかりましょう」


我が家には事業で高位貴族などを相手にしても失礼のないような応接室がある。父はそこに迎えて話を聞くのだろう。



とりあえず、このまま港にいる訳にもないので我が家の馬車に乗ってもらい我が家に向かった。

「我が家では主に輸入品を取り扱っております。最近の珍しいアンティークの輸入品は娘にも見てもらっていまして。こんな(なり)ですがセンスはなかなかでして」

間が持たない父は事業についてペラペラ話していた。


王子様?も興味深そうに聞いていて話しは盛り上がっているようだったが、嫌な予感しかしない私は黙って話を聞いていた。



我が家の応接室に着くとさっそくとばかりに話し始めた。

「さて、改めて説明しよう。私はリンガール王国第一王子ルーカス・リンガールだ。私はこの国にあるものを探しにやってきた。君たちには探しものを見つけるのを手伝ってもらいたいんだ。ちょっとした手違いで我が国の重要文化財がさきほどの港からこの国に入ったらしいということなんだが、それからの足取りは自国では掴めなくてね。それでお忍びでやってきたということだ」

キラキラ王子スマイルをわたしに向けてくる。


「君なら見つけられるんじゃないかな。手伝ってくれるよね?」

急に話を振られて驚いた!いやいや私は関係ないでしょう。


「い、いえ私では力不足です」

ブンブンと私は首を振る。


「そんなことはないよ。珍しい輸入品を君は見ていたんだろう?名前はなんて言うの?」


「ローラ、ローラ・ドットリーと申します」

ニッコリとキラキラ王子スマイルを向けられて断れるはずがない。



ドーン!!!


応接間のドアが急に開いた。王子の護衛が剣に手をかける。

「きゃっ!本当に王子様がいらしたのね!」


「こらこらバネッサ。失礼はいけないよ」


伯爵様と我が妹のバネッサ!!

私はサァーっと青くなった。他国の王子に無礼すぎない!?


「失礼いたしました殿下。婚約者は身重なもので気が高ぶりやすく。殿下ようこそ我がサンダール国へ。私はこちらの領地を治めますヨハン・フェイスと申します。何かお探しものとのこと、ぜひこの私にお任せを」


フーンという顔をしていたルーカス王子は

「ルーカス・リンガールだ」

スッと握手を求めヨハン様の顔をジーッと見ている。


「今回はこちらのローラ嬢にお願いすることにするよ。君は気が高ぶりやすい婚約者で手一杯のようだし」

ニコリと笑い王子は答えた。


「いえ。婚約者であるバネッサはローラの妹ですのでローラに面倒を……」


「私はローラ嬢にお願いすると言ったが?妹の面倒をみさせるなんて私の探し物の邪魔でもするつもりかい?」

王子の顔色が変わった。見ているこっちがヒヤヒヤする!マズイ!

父が私に視線を寄こした。


「王子様!私の方がお役にぃ〜」

バネッサが空気を読まず口を開いた!バネッサの口を押さえて


「殿下!私がぜひお手伝いさせていただきますので!いえ、お手伝いさせて頂きたいです!」

無理矢理笑顔を作った。


「うん。ローラ嬢には期待しているよ。部外者には出ていってもらって詳しく話をしようか。男爵も席を外してもらえるかな?侍従もいるので2人きりじゃないから安心して」

さきほどとはうって変わってニコニコした表情になり、父も私も安堵する。


伯爵も苦笑いしながら、バネッサを連れて屋敷から出ていった。


父が応接室から出ていくとフーっと息を吐き、王子はタイを緩めた。

「僕はあんまり駆け引きは得意じゃないからね。さて、本題に入ろっか!君もリラックスしてよ!ほら、座って!」

なぜだか王子の隣の席をポンポンしている。


「いや、あ、失礼します」

王子の隣なんて緊張する!!


王子が目配せすると護衛がスッと扉から表へ出た。

ええっ!


小さな声でコソコソと王子は囁いた。

「聞いてほしい。君は転生者だろ?」



!!!!


なんでわかったのだろう。私にはチートな能力も、素敵な発明をする力もなく至って普通に暮らしていただけなのに。魔女っ子スタイルだけど。


「実は僕も転生者なんだよ。こんなところで会えるなんてビックリした」

さきほどの王子スマイルとは違うニカッと笑う顔にドキッとした。


「私が転生者ってなんでわかったんですか??」


「僕には転生者チートというのかな?変わった能力があるんだ。それでわかった。君にもそういうのないの?」


「私にはそんな能力ないですよ。だから庶民よりの男爵令嬢をやってます。まあ、妹に婚約者取られましたけど」


王子は不思議そうな顔で私を見つめた。


私は手をブンブン振りながら

「私のことはいいんです!変わった能力とはすごいですね!聞いても?」


「ああ、今回の件にも関係するからね。君が転生者なら話しやすい。僕の能力は()()だよ。触ったものの情報を読み取ることが出来るんだ。これがなかなかよくて、人間にも使えるんだよ。さっき握手したでしょ?」

王子は手のひらをヒラヒラさせた。

そういえば王子は父と私、ヨアン様と握手をしていた。


「もしかして!!」


「その通り!君のステータスに()()()と書いてあったからね!!嬉しいよ。今まで転生者には会ったことがなかったから。僕のことは気軽にルーカスと呼んで。ステータスと言っても全ての情報が見えるわけではないからプライバシーの侵害はしていないよ!ハハハ!」


そうなんだ!ルーカス様の転生者チートすっごい!


私の転生者チートはどこに行ってしまったのだろう。



「ちなみに君はいつの時代から来たの?僕は令和だよ!令和知ってるかな?」


私も同じ!嬉しいっ!

「私も!私も令和から来たの!!まさか同じ時代からだなんて。あっ!敬語を忘れてしまってすみません」

つい懐かしい元号も聞いてテンションが上がってしまった。王子様になんてことを。


ルーカス様は目を細めて

「いや、2人の時は敬語なしでいいよ。転生者仲間じゃん!」


ホッとした。さっきの静かなお怒りモードを見ているから心配したけどよかった。

「それならよかった。この世界じゃ身分は大事だからね。王族に敬語なしでなんて不敬罪で処刑されちゃうもの」


私たちはしばし前世でのドラマや漫画、ゲームなど色々な話をした。歳も近かったんじゃないかと思うくらいに話が弾んだ。


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