5.奴隷って言われても
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2021/1/20 文法の修正を行いました。
元の位置に戻るまでの間に何があるわけでもなく、俺達はその道とも呼べるか怪しい道を歩き始めた。
歩き始めて数分。ギリギリ目視出来る位置に森の終わりらしき場所が見えた。
何でそんなことが分かるかと言えば答えは単純。そこから先は木がパッタリと無くなっていたからだ。
「思ったよりも森を抜けるのは早そうだな」
「そうね。なんだか拍子抜けって感じ」
転生先が鬱蒼とした場所だっただけにこんなに早く抜けられるとは思わなかった。
最も、あれで森が終わりと決まった訳ではないのだが。
「そういえば、森なのに動物とか異世界定番の魔物がいないわね」
「確かにそうだな。ここは生き物があまりいないのか?」
そう言った直後だった。
ガサガサ
「「!?」」
音のした方を見るとウサギが駆け抜けていくところだった。
「……普通にいたな」
「そうね……。たまたま出会わなかっただけみたい」
これを皮切りにして他にもいろんな動物と出会った。
鹿や馬、リス、果てには虎のような動物まで。
人がいないからか動物達が発する音がよく聞こえる。
パカッパカッ、ガサガサ、ドサッ。
ん?ドサッ?
そんな音立てる動物なんていたか?
「今の何の音だ?」
「右側から聞こえたわね。注意してみてみましょう」
忍び足で近寄り、息を殺し、茂みの先を見てみる。
すると……。
「な!?こ、これはもしや!男のロマン、獣人というものでは!?」
そこには頭から猫耳を生やし腰から尻尾が出ている、所謂獣人と呼ばれる女の子が二人、地面に倒れていた。
「そんなこと言っている場合!?早く安否確認しないと!」
おっと感動している場合じゃない。
倒れているってことは何かしら危険な状態のはずだ。
異世界で初めて会った人が出会った直後に死ぬなんて嫌すぎる。
と思っていたら頭の中に何か声のようなものが響いた。
『奴隷を獲得しました。但し獲得時間がほぼ同時のため共有奴隷となります』
「「は?奴隷?」」
どうやら愛花の方にも同じ声のようなものが聞こえていたらしい。
「海斗も何か聞こえたの?」
「ああ、なんか共有奴隷が何ちゃらって言ってたぞ」
「私も同じね。どういうことなのかしら……?」
「だが奴隷っていうなら丁度いい。この二人が起きた後にこの世界のことを聞いてみればいいんだから」
「私達が転生者ってこと話しちゃっていいの?」
「愛花も異世界物は読んでいただろう?こういうのはきっと命令なりなんなりすれば他人には言えなくなるはずだ」
「そういえばそうね。なら余計に倒れている原因を見つけて看病しないといけないわね」
とはいえ二人に目立った外傷はない。
なら内出血はどうだ?
肌が露出している部分には内出血の痕跡は見られないが服の中はまだ見ていない。
「愛花。服をめくって内出血しているかどうか調べてくれ。俺は後ろ向いているから」
「分かったわ」
背後で服が擦れる音がする。
少しばかり興味がいってしまうがここは我慢。
「もういいわよ」
「どうだった?」
「特に内出血しているような痕は無かったわ」
「そうか……」
外傷もなく内出血の痕もない。
なら考えられる可能性はなんだ?
そう俺が唸っていると愛花が何かに気付いた。
「この子達、目の下のクマが酷いわよ?もしかして殆ど寝てないんじゃない?」
そう言われて確認してみると、確かにクマができていた。
普通に過ごしていたらできないようなレベルで、だ。
「この子達、どうするの?」
「そうだな……。俺がこっちの子を背負うから愛花はもう一人の方を背負ってもらってもいいか?」
「いいけど、どうするの?」
「とりあえず川まで戻る。ここからそんなに遠くないしいつ起きるか分からない以上、水が近くにあった方がいいだろう」
人は水が無いと三日で死ぬからな。
獣人も同じかは分からないがあるに越したことはないだろう。
「なるほど。それにしてもこの子達、まだ十二、三歳って感じね。こんな小さい子達が何でこんなところにいるのかしら?」
「それもあとで聞いてみよう」
俺達は気を失っている二人をそれぞれ背負って川のある場所へと戻った。
登場はさせました。登場は。
……ごめんなさい、次回ちゃんと喋らせますのでブックマーク切らないでください。お願いします!