49.ドライヤー
お待たせしました。
一等地のいいホテルに泊まったら案内された部屋はまさかの"それ"用の部屋で。その雰囲気に惑わされた俺は愛花とサーシャ、ミーシャと体の関係になってしまった……。
なんてことはなく、普通にご飯を食べ普通に風呂に入り普通に寝る準備をする。それだけのことだ。
だから今から一緒に寝るということに、決して緊張なんてしていない。決して。
俺の劣情云々は横に置いておくとして、サラッと言ったけどこのホテルにはちゃんと風呂があった。それこそ四人で入っても全然余裕がある大きい風呂が。
いやちゃんと俺とその他三人で分けたけどね?
流石に一緒に入るほど俺のメンタルは強くない。
そこ!へたれとか言わない!何だったら変わってやろうか!?俺の気持ちがよーく分かると思うよ!
……こんな茶番はいらない?早く飯の話をしろ?
あっはい、了解しました。
えーっと、誰に言われたのか分からないが飯の話をしろといわれたので話します。
まず、滅茶苦茶美味しかった。日本で一万円くらい払って食べられるレストランのメニュー並みに美味しかった。
微妙と思うだろ?
とんでもない!この世界にしては本当に凄いんだぞ!
なんてったって牛肉が使われているんだから!
どういうことかというと、この世界はどうも牛を食べるというよりも闘牛にして狩りに連れていくことが主流らしい。
だから牛を捌いて肉を食べるなんてことは貴族、それも伯爵以上でないと厳しいらしい。
だから今回俺達が食べられたのは奇跡に近い。なぜならCランク冒険者なんてそこらにいくらでもいる、ただの一般人であり、牛肉を食べるために使えるお金なんてあるわけがないからだ。
やっぱり依頼を受けて正解だったな!
因みにそれ以外は普通にサラダとか焼き魚とかがランクアップして出てきただけだった。
以上、食レポ?でした!
・~・~・~・
「海斗、どうやって寝るか決めた?」
「はて、どうやってとは?」
ご飯も食べ風呂も入り残すところ寝るだけとなった頃に突然愛花が質問してきた。
にしても、どうやって寝るの?ってどういう質問だよ……。普通に上を向くなり寝返りうつなりと、そういうのを説明しろってか?
「寝る位置のことよ。誰と誰の間に挟まるのか、とか、誰かを抱き枕にするのか、とかね」
「え?俺ってはじっこじゃないの?」
皆の間に挟まったりしたら俺寝れる自信ないんだけど……。
「そんなわけないでしょ。あなたをはじっこにしたら寝相の悪さで落ちるじゃない」
「俺そんなに寝相悪くないよ!?」
少なくとも朝起きたら布団から這い出ていたりとか、体が180°回転していたりとかはなかった、筈だ。自信はちょっとだけある。
「寝相がどうでもいいとして、とにかく真ん中で寝て!あと出来ればミーシャちゃんと隣でね」
なんでここでミーシャ?
俺と一緒に寝たいとか言ったのか?
「なんか理由でもあるのか?」
「さあ?寝るときになれば分かるわよ」
「もうすぐじゃん」
あと三十分もないぞ?
ーー基本的にこっちの世界は皆夜が早い。
電気が通っていないことを考えれば当たり前のことなのだが遅くても午後十時には寝ている。それ以降起きているとなると王族とか公爵のようなお偉いさん達ばかりだ。
というのも、夜は明かりの代わりに魔法ランプを使うのだが、これがまた高い高い。一つで二週間使えれば良いほうなのに一つ買うだけで金貨六十枚はする。
そんな高価なものを乱用できるのは金がある人だけってことだ。
もっともこのホテルはやろうと思えば一日中使っても良いらしいけど。
流石一等地のホテル、格が違うね!
「髪を整えたりしていればあっという間ね」
「髪かぁ。俺は自然乾燥派だしな」
「傷むわよ?」
「でもめんどくさいし」
それが原因で乾かすのをやめた。
我ながら単純な理由である。
「はあー。しょうがないわね。今日は私がやってあげる。私がサーシャちゃんの髪を整える間にミーシャちゃんの髪を整え……なくていいから乾かしてあげて」
「はいはい。りょうか………………え?」
今、なんと?
「だから、私がやってあげるって言ったの!ほらさっさとミーシャちゃんのところへ行ってきなさい!」
「はいただいま!」
お、おおう。まじか。
愛花に髪を乾かしてもらう日が来るとは……。
楽しみにしておこう。
尚、当然のことながらこの世界にドライヤーというものは無いため、普通は自然乾燥だ。
だが海斗や愛花は風魔法で代用できるため普段から髪を乾かしている。そして海斗と愛花の奴隷であるサーシャとミーシャもまた、愛花の手によって綺麗に整えられているのだ。
……訂正。海斗は普段から髪を乾かしてはいない。今回が特別である。
・~・~・~・
「ミーシャ~。こっちおいで~」
「はーい!」
さてさて、早速ミーシャの髪を乾かしていきますかな。
「このくらいの強さでいいか?」
「うん」
「では失礼して」
風魔法を使い丁度いい温風を送る。
因みに温風はいろいろ試行錯誤して出せるようになった。具体的には風魔法を使う直前に弱い火魔法を混ぜ込む感じだ。温風が使えると本当に楽だよ。寒い時とか自分の魔力を使うだけで暖かくなれるんだもん。
まだ冬どころか秋にすらなってないけど。
「どう?気持ちいい?」
「うん……凄く気持ちいいよ。ふぁ……はふ。眠っちゃいそう……」
あらら、もうおねむの時間か。
いやそうか、この世界ではそれが普通だ。というか今は結構遅いほうだ。
日本にいたときは平気で一、二時まで起きてたからな。
ミーシャはまだ幼いんだし、しっかり面倒みないとな。
「眠いなら寝てもいいぞ?ちゃんとベッドに運んでやるから」
「うぅ~ん。頑張って起きる」
「無理は良くないぞ?」
眠気を逃すと眠れなくなるしな。
「……でも、お兄ちゃんと一緒に寝たい……から」
……………………何この可愛い生物。え、え、俺キュン死しそう。
と、とりあえず冷静になるか、うん。
そしてそのまま一言も喋らずに俺はミーシャの髪を乾かし続けるのだった。
日常でもいきなりキュンと来ることってありますよね。
それが三次元か二次元はともかく……。




