46.国王からの依頼
お待たせしました。
また、前話と登場人物まとめの話について変更点があります。詳しくは後書きにて。
2021/5/3 加筆訂正を行いました。
2021/5/9 加筆訂正を行いました。
場が落ち着いたのでまた一から話し合うことになった。
今この場にいるのは国王と宰相、アリスとルーシャ、それから俺と愛花にサーシャとミーシャの八名。
ルーシャの父は仕事で予定が合わず来れなかったらしい。なんでも例の侵入者事件で犯人の手がかりが見つかったとか。詳しくは聞いていないので分からないが。
「改めて、儂がアレックス・フォン・ルーズ・ローエイじゃ。このローエイ王国の国王である。先程は悪かったな」
「始めまして、ですね。私はエレク・フォン・ターニリアと申します。今は宰相をやらせていただいています。以後お見知りおきを」
エレクは赤銅色の髪に緑目の170センチメートルくらいの身長で如何にも仕事人といった様相だ。家は公爵家で歳は40前半らしい。
「一応、私も。アリス・フォン・ルーズ・ローエイですわ」
「ルーシャ・フォン・セールスです。試したりして申し訳ありませんでした」
「もういいわよ。そっちの都合もあるんだろうし」
「まだお許しは頂けなさそうですね」
口では許しの言葉を挙げつつも実際はまだ不機嫌な愛花さん。
これにはルーシャも苦笑いである。
そんななかアリスだけは王女としての矜持なのか真剣に愛花に向き合っている。
「愛花さん。本当に申し訳ございませんでしたわ。最近は善人のフリして近付いてくる者が多くてーーいえ、これはただの言い訳ですわね。忘れてくださいまし」
「ま、そういう人ともたくさん会っているんだろうし疑うのは仕方ないと思うわよ」
偉い人ほどそういうのにもよく出くわすんだろうな。
「というか、どこの世界にもそういう人はいるんだな」
あれ?愛花が凄い目でこっちを睨んできてる。俺なんかやった?至って普通のことを言ったはずなのに。
そんな俺の疑問はルーシャの言葉で解明する。
「海斗さん。どこの世界にも、というのは?」
あっ!!!!
やっばい!!!!
このままだと異世界から来たことがバレる!!
「いや、ええと……」
どうする俺!?
どう言い訳する!!??
ええと世界、世界……。
世界ってどういう時に使う!?
比喩で考えろ俺!
あっ!これならいける!!
「自分達は冒険者なのですが、冒険者の中にも善人を装ってパーティーを組み、大きな利益が出たところでその利益を奪い取るような人がいるんです。だからどの世界、つまりはどの業界にも同じような人はいるんだな、と思いまして」
「なるほど、そういうことでしたか。てっきり別世界からいらっしゃった神の使徒様かと思いましたよ」
「いやいや、自分はそんな大層な者じゃないですよ」
嘘である。
この男、冷や汗をかきながら必死に通常を装っているのである。
尚、さっきまで俺のことを睨んでいた愛花も流石に今の言葉で動揺していた。
唐突に自分の髪を気にし始めたり手を握ったり開いたりと忙しなく動いている。
「オホンッ。話を戻してもいいかな?」
「あ、すみません。話しすぎました」
「失礼しましたわ、お父様」
ナイス国王!
バレずにすんだぜ!
「では話を戻すぞ。まず一つ目にはお礼じゃな。娘アリスの危機を救ってくれて本当に感謝しておるぞ。ありがとう」
「私からも。アリス様を救ってくださりありがとうございました」
「本当に感謝しておりますわ」
「皆さんありがとうございました」
そういって次々と頭を下げる国のトップ達。
ははは、これは壮観だな。国王に頭下げさせたとか、実質俺この国の国王じゃね?
そう現実逃避したくなるほどには凄い光景である。
「いやいやいやいや、皆さん頭を上げてくださいよ!そんな簡単に頭を下げられてもこっちが困ります!」
「そ、そうよ!助けられる状況だったから助けただけの話じゃない!そんな大げさにしなくても……」
そういうとやっと頭を上げた皆様。
王なんだったらもっと堂々としていて欲しい。
「む、下げすぎるのもよくないか。だが、これに関しては本当に感謝しておるからな」
「分かったから!そんなに言うなら他のことで埋め合わせしてくれればいいから!」
「ああ、分かった。何か要望があれば後で教えてくれ」
「何か考えとくよ……」
これだけでもう疲れた……。
後何を話すの?
「二つ目じゃが、お主達にはとある依頼を受けて欲しいのじゃ」
「依頼?」
それは、冒険者としての依頼ということだろうか?
「うむ。アリスとルーシャと共に北西にあるエルフの里へ向かって欲しいのだ」
「お父様!それは……!」
なんだ?何か裏があるのか?
「だが、彼等でないとお前達も納得せんだろう」
「確かに、そうですが……」
おーい?俺達のことスルーしないで?
「話すだけ話してみればよいだろう?」
「……分かりました」
だから何の話だって!
「すまんな、こちらの事情で止めてしまって」
「それはいいので説明が欲しいっす」
「ああ。実はな、今我が国は北西にあるエルフの里から救援要請を受けている」
救援要請?穏やかじゃないな。
いや王様からの依頼って時点で穏やかなわけないか。
「それでその救援要請の内容なんじゃが、里の中心にある世界樹が魔力不足で暴走しておるようなのじゃ。世界樹の生命源は魔力じゃからな、本能で動いておるのだろう。具体的には魔力を得るために近くにいる生物をなりふり構わず吸収する、とかじゃな」
怖っ!
世界樹さん怖いよ!
"さん"であってるのかわからないけど。
「そこで必要なのがアリスとルーシャじゃ。この二人は魔力付与というスキルを持っておる。そのスキルと魔力回復ポーションを組み合わせて間接的に世界樹に魔力を送ろうという話しになったのじゃ。だが、これには問題があってな……」
ふむ。一聞すると結構いい案だと思うのだが。
何が問題なのだろうか。
「魔力を送り続ける間も世界樹が二人のことを吸収しようとしてしまう、それをどうするかが問題なのだ」
あー。そういうことか。
つまり二人は世界樹のためにスキルを使って魔力をおくる。
だが魔力の足りない世界樹は自分に魔力を送ってくれる二人でさえ吸収しようとしてしまう。
それをどうにかしないといけないわけか。
「それって俺達じゃなくてもっと他に強い人を雇えばいいのでは?というか騎士は?」
普通に考えて俺達を使うよりSランクの冒険者とか騎士を使えばいいはずだ。なんで俺達に頼む?
「それがな、冒険者や騎士だと妙な胸騒ぎがすると二人揃って言うんじゃ。普段なら気にせんのだが今回は娘達の命と世界樹がかかっておる。そのために余計な心配は無くしたいのだ」
ふうん?つまり裏を返せば俺達なら大丈夫ってことか?
「なら私達もダメなんじゃないの?」
「いえ、皆さんだと胸騒ぎが無くなるどころかむしろ一緒に行きたいと思うのですわ」
「私も同じです。何故皆さんなのかは分かりませんが、こう、安心する何かがあるのです。こう、未知の力が入ってくるような……」
なんだかよく分からん。どうやら二人にしか分からない感覚のようだ。
未知のって所に若干焦りは感じたけどな。いやだって、どう考えても俺達はこの世界からすると未知の存在だし。
「どうだ?受けてくれるか?」
「そうはいわれても、まだ報酬を言われてないですし」
「おお、そうだったな。報酬は白金貨三枚でどうじゃ?」
「白金貨三枚……」
日本円で三億。
魅力的に聞こえる、が。
「話を聞く限り、危険度と報酬が見合っていない気がしますけど?」
よく考えてみて欲しい。
世界樹は魔力が欲しいのであってアリスとルーシャの二人が欲しいわけじゃない。
何が言いたいかというと、魔力を持っている俺達も世界樹の標的ということだ。俺達が狙われるのに付け加えて二人も守らなければならない。
そしてもう一つ、魔力が欲しいということは襲いくる敵に魔法は通じないということだ。何故なら魔法は魔力でできているから。もし魔法を打とうものならすぐに吸収されて意味をなさなくなるだろう。
完全物理で戦わなければいけない。
こんなハードな条件なのに白金貨三枚は軽いのではないか?
底辺冒険者が何言ってるんだという感じではあるけど。
でもたぶん、上位の人はこれくらいの交渉はすると思う。
さて、そんなアホみたいな大金を本当にくれるのかはさておき、やっぱり三枚はちょっと少ないと思う。
「よし分かった。なら白金貨五枚、それとエルフの奴隷を一人ただでくれてやろう」
ほう?エルフの奴隷とな?
白金貨五枚は妥当なところだと思うがそれにエルフ奴隷までついてくるらしい。
これは受けるかを考えてもいい案件では?グフフ……。
そんな露骨に態度が変わった海斗を愛花は呆れた目で見ているのだった。
変更点ですが、前話でアリスはアレックスの孫と表記しましたがこの先の展開を考えると都合が悪くなるので娘に変更しました。それによりアレックスの年齢およびジルに関する文を削除したので確認をお願いします。
ただしジルはまた別の登場人物としてこの先登場する予定です。
また、一章最後の登場人物まとめの話しについては海斗と愛花のステータスにアイテムボックスの欄を追加しました。大きな影響は無いですがあの存在を思い出してくれると嬉しいです。(作者は忘れてました)




