41.王女と公爵令嬢
遅れました、すみません。
行きの時と変わって今度は俺達だけでの護衛となる。
それによって陣形も変わり前に俺とサーシャ、後ろが愛花とミーシャの組み合わせになった。
愛花に奴隷紋のことを聞きたかったのだが、馬車の前後では距離があり声が届かないためサーシャに聞くことにした。
「奴隷紋ってどんなものなの?というかいつからついてたの?」
「ええと、先にいつつけられたのかを言うと最初に売り払われた時にはついてました」
「それからずっとついてるの?」
「はい。これは解除魔法を使わないと消えないんです。契約を解除するだけなら契約魔法でもいいんですけどね」
つまり今までは契約魔法で主人との契約だけを解除して奴隷紋はそのまんまだったってわけか。もし逃げ出したとしても誰かの奴隷になるように。
酷い話だな。
もっともそうされていなかったら今の俺達の関係は無かっただろうからなんとも複雑だ。
いや待てよ?そもそも解除魔法を使える人が少ないとか言わないよな?
「解除魔法ってどのくらい使える人がいるんだ?」
「そうですね……。Sランク以上の魔法使いなら使えると思います」
Sランクって相当なレベルじゃん!
てことはこれ、仮に奴隷商とかが解除しようとしても出来なかったっていうことになるのか。
いやまあ奴隷商が解除しようとするのかと言われれば答えはNOなわけだが。
「あと奴隷紋の効果ですが、主に奴隷の行動を制限するものと罰を与えるものの二つがあります。これ以外にも魔法を組み込めばいろんなことが出来ます」
制限と罰ね……。
予想通りではあったかな。命令すれば言うことを聞くなんて普通ではありえない。
だからこの紋で強制させるのだろう。
にしても罰とは。
行動を制限すればそもそも気に障ることも無いだろうに。
これは趣味とかで使う奴が多かったのかな。
まあ、俺達みたいに自由にさせていたとかならまた話は別だが。
俺達だって二人が悪いことをしたらそれ相応の罰は与える予定だ。二人とも良い子だからそんなことはないと思うけどね。
……なんなら俺の方が罰を受ける可能性が高い気がするぞ。日本にいた頃には自堕落生活を送っていたからな。
愛花にしょっちゅう怒られた。
この世界ではそんなこと無いようにしないと。じゃないと二人に示しがつかない。
まあこの話は置いといて、次の魔法を組み込むって所だ。
「魔法を組み込んだら何が出来るようになるんだ?」
「たくさんありますよ?位置を特定するものや身体や精神の成長を阻害するものまで、とにかくいろいろあります」
「成長を阻害って、どういう意味があるんだよ……」
「小さい子供が好みの方とかが良く使うようです」
最低なロリコン野郎だな。
「そこまでするとか終わってるな。それにしてもサーシャはいろんな事を知ってるんだな」
正直サーシャがいなかったらこの世界の常識が分からなくて大変なことになっていた自信がある。その知識は一体どこで培ったんだろう……?
「奴隷商や街の人が話しているのを盗み聞きして覚えました。あとは売られる前に本を読んだりして覚えました」
「へえー。結構好奇心旺盛だったりする?」
この場合はただの好奇心ではなく知的好奇心の方だな。
「自分では良く分かりません。ですが昔からいろんな事に興味はありました」
「それを好奇心っていうんだよ」
「そう……なんですね」
まだ良く分かっていない様子。
それとも納得出来てないだけかな?
とにかくその気持ちは大切にして欲しい。
「あれ?前に何か居ますね」
サーシャの視線の先を見ると確かに何かが見える。
「ここからだと良く見えないな……。もうちょっと進まないと」
そのまま真っ直ぐに進んでいくとその正体が見えてきた。
「あれって馬車じゃないか?凄い大きくて豪華だけど」
今俺達が護衛をしている馬車の倍くらいは大きい。
装飾も金や銀が多く使われているようで煌めいている。
「あれは恐らく上位貴族か王族の馬車ですね」
貴族は予想していたが王族とは予想外。
でもなんでこんな場所で止まってるんだ?
……なんか面倒事の予感がする。
「こういう時ってどうするのが普通何だ?」
「動き出すようでしたら少し距離を置いてから私達がその後ろを、止まったままなら先に行くと話をしてから進むのが普通です」
「ふーん。とりあえず行ってみるか」
商人に確認をとり、そのまま例の馬車のところまで進んだ。
・~・~・~・
馬車に追い付いたわけ何だが、向こうが少し騒がしい。
「止まれ!そこの者達で誰か回復魔法を使えるものはいないか!?」
護衛であろう騎士の一人が話しかけてくるが、とても切羽詰まった様子。
回復魔法だから誰か怪我でもしたのかな?
「俺は使えるぞ」
「本当か!?ならこっちに来てくれ!治して欲しい方がいるんだ!」
ん?
治して欲しい方?
同僚とかなら治して欲しい人になるはず。
ということはもしかしてお偉いさんか?
「この方です」
騎士に案内されその場を見渡すと地面に倒れこんでいる金髪の女の子とそれを抱き抱える緑の髪をした女の子だ。
二人とも俺と同い年くらいだ。
「こちらの方は……?」
「ルーシャ様、こちらは通りすがりの冒険者で回復魔法が使えるとのことです」
緑の髪の子はルーシャというらしい。
その子が縋るような目で俺を見てくる。
「回復魔法が使えるというのは本当ですか?」
「ええ、致命傷とかでなければある程度は」
流石に致命傷とかいわれたら無理だ。
技術が上がれば出来るかもしれないが今はまだ出来ない。
「なら、この子を治して下さい!お腹を矢で打たれちゃったんです!」
お腹か……。
パッと見た限り腎臓や肝臓に直撃ではなくかすっただけの様なのでまだ治る余地はある。
にしてもどうやったら矢が刺さるんだよ……。
護衛が居たんじゃないのか?
まあいい、とにかく治すのが先決だ。
「失礼します」
一言断ってから金髪少女の服を捲り体を見る。
周りの騎士達が何か言いたそうにしていたが、命に関わる問題なので渋々引き下がったようだ。
矢はまだ刺さっておりそれで血が流れ出るのを止めているようだ。ここで矢が抜かれていたら失血で危なかったかもな。
他の部位を見るが矢が刺さった場所以外に怪我はなく、
矢が刺さった痛みで気絶したようだ。
呼吸も安定しているし問題は患部だけのようだ。
これだけなら十分治せる範疇だ。
「今から矢を抜きますが血が飛び散るかもしれないので少し離れて下さい」
血がかかっただなんだと言われると面倒だからな。
「分かりました」
そういってルーシャを初め皆数歩下がった。
よし、やるか。
運良く矢に返しはついていないようなのでこのまま引く抜く。すると予想通り血が吹き出るので持ち合わせた布で押さえる。
その間に回復魔法を使い穴を塞ぎ処置を完了する。
魔法って本当に便利だな。こんな直ぐに傷が治るんだもん。
「治りましたよ。後は目が覚めるのを待つだけです」
そう伝えるとほっとした様子を見せるルーシャ達。
「良かったです。この子が死んだら大変なことになっちゃいますからね」
「つかぬことをお伺いしますがそちらの方は一体?」
王女とかそんなレベルの人っぽいけど。
「申し遅れました。私はルーシャ・フォン・セールスと申します。公爵家の娘です。またこちらはアリス・フォン・ルーズ・ローエイです。この国の王女でございます」
やっぱり王女とその類いだったか。
これは本当に厄介事の予感。
次で二章に入ろうと思います。




