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夢の中に出てきた異世界の神?様に鍛えられて成り上がる村人の話  作者: ゆらり
神?様からの試練 その1
5/6

第4話 アレンの意志

サボってすみません。

頑張って更新します。

次の日、アレンは一日中上の空だった。家業の手伝いをしても簡単な失敗を繰り返す有り様で、集中出来ないのなら、気分転換でもしてこいと父に放り出された。


頭の中を占めるのは、昨日の夢中訓練でビリケンさんから言われたこと。


昨日の取引でマンジョーウ達が毛皮と引き換えにした物品が村人達へ配られる。これで今年も冬を越せると喜ぶ顔を見ると、このまま何も知らなければ怒りを覚えることもない。惨めさを噛み締めることもない。全てを忘れさせてくれるのならば、それもいいかと思う。


漠然と英雄になれると夢中訓練でしごかれてきた。算術を徹底してしこまれ、文字の読み書きと合わせて物語をつかった感情の表現方と言葉の裏の読み方。そのどれかが欠けても、マンジョーウのやっていることは理解できなかっただろう。許せない。自分たちを家畜のように扱うマンジョーウも、それにたいして無力な自分に沸々と怒りが沸いてくる。


フラフラと歩きながらそんなことを考えていた。ふと気付くと、村の外れまで来てしまっていたことにあきれながら、これからもどうしていこうかと悶々としていると、肩をたたかれ聞きなれた声に意識を戻された。


「よっ。なにしけた面して悩んでんだよ?」

「オベル。お前こそこんなとこで何やってんだよ。サボりか?」

「いや、アレンのおやじさんに頼まれてな。何やら思い悩んでるみたいだから、様子を見てきてくれって。・・・力になれるかは分からねぇが話しぐらいなら聞くぜ」


父さんにそれほどまでに心配されていたことが少しうれしい。目の前にいるのは、家族以外では生まれてから一番多くの間一緒にいた腐れ縁とも、親友ともいえる存在だ。


「オベル、もしもの話なんだけどちょっと感想を聞かせて欲しいんだ」


アレンは、先日のマンジョーウとの取引を疑惑ではなく少し違和感を感じるぐらいのニュアンスで伝えた。今の段階では断定はできないし、先入観を与えてしまう。それでは素直な感想は得られない。伝えた段階で多少の先入観を与えてしまうのはしょうがないが、最小限にする必要がある。


オベルは少し考えたあと、意外な反応をした。


「確かに違和感は感じるが、それがどういうことに繋がるのかわからねぇ。それでアレンがそんなに悩むとも思えないし、多分まだ言ってないことがあるんだろ? それとも言えないんなら、あれか?『異世界神?の援助』とか関わってんのか?」


アレンは内心すんごくびっくりしている。これまで複雑な会話をしてこなかったというのもあるが、こんなに洞察力に優れていたという認識がなかったからだ。夢中訓練を受けて成長した実感があったが、そのおかげというか弊害というか、認識力に差があると感じ、無意識のうちに説明しても分かってもらえないなどという奢った思考に陥っていしまっていた。自分は特別な存在だと、どこかで思っていたのかもしれない。オベルにならと思い全てを打ち明けることにした。


夢中訓練の事や、マンジョーウのやっていること。じぶんが英雄になるとはさすがに言えなかったが、喉の奥につっかえていたものが取れ、胸が楽になるのを感じた。


「なるほどな。そんなことやってたのか。サリアの件もあったから、なんか特別なことになってんのかな?とは思ってたけど、そんなすごいことになってたんだな」

「成長を実感できるのはものすごくやりがいがあるよ。ただ、知らない間に誰も分かってくれないなんて、最低な考えを持ってたんだなって。オベル、ごめん」

「まぁ、しょうがねぇんじゃないの?俺じゃあ取引についていっても何も疑問持たなかったと思うぜ?」

「ありがとう。オベル、いきなりなんだけど頼みがある」

「なんだ?」

「俺と一緒にマンジョーウの代わりの商人を見つけに行かないか?」

「へっ!面白いこと言うな。詳しく聞かせろよ」


アレンはマンジョーウのような承認に搾取される状況を変えるためには、自分たちが取引に詳しくならなければいけない事。相場を知ること。ショーヤにある商人ギルドと話を付ける必要があることを伝えた。それをするためには、読むこと、書くこと、計算することが最低限必要で、今の自分なら教えることも出来る事。15歳の成人の儀を迎える前の子どもに教育していく事なんかを一気呵成にまくしたてた。


「なるほど、その読み書きと計算はどれくらいで身につくもんなんだ? それによっちゃぁ結構な準備期間がいるな。」

「とりあえずの段階なら半年もあれば十分だよ。下地を作ってしまえばあとは子供らの方が覚えが速い。商人たちに持って来てもらうんじゃなくて、ショーヤに物資を持ち込んで売ることが出来れば、取引自体をある程度コントロールできると思う。そのためにも商人ギルドの許可が居るんだ。」


ただ、それを実現するためにも、こちらの動きをマンジョーウにばれないようにする必要がある。バレさえしなければ、搾取されるとはいっても次の冬を越すための物資は手に入れることができる。動きを知られてしまえば、マンジョーウは来なくなるだろう。そうなった時に物資を手に入れる方法がないと村は冬を越すことが出来なくなるのだ。


「なら、まずは、俺に教えろよ。俺とアレンで商人ギルドと話をしよう。そのあとは子どもたちも巻き込んで、街へ行くやつらを増やしていけばいい。」

「いいのか?一度やってしまったら、もう2度と今の生活には戻れないぜ?今なら少なくとも暮らしていく事は出来るんだ。」

「何言ってんだよ。そんな家畜みたいな扱いされてるってわかって我慢なんかできるかってんだ。お前もそうだから悩んでたんだろ?うまくいけば、今までとは違った冬が来るぜ。」

「ああ。ならビシバシ行くから覚悟しろよ?」

「へっ、うじうじ悩んでたやつが偉そうに何言ってやがんだ?返り討ちにして、俺のすごさを思い知らせてやるぜ」


オベルとのつながりの深さに救われ、アレンは再び夢中訓練へと望む。



いつもの夢中訓練場?ではビリケンさんが神妙な顔で待っていた。

「どや?どうするかきめたんか?」

「・・ビリケンさん。俺は夢中訓練を続ける。力をつけて、村のみんなを助ける。助けたい。今日オベルと話して、自分一人じゃないってことがよく分かった。英雄になれるかどうかは分からないけど、村の為にできることがあるなら全力でやる。」

「その答えに後悔せぇへんか?」

「後悔するかもしれない。でも、何もしないままなら、何もできない今のくやしさをずっと抱えたままだ。やればよかったってきっと後悔する。どうせ公後悔するなら誠意いっぱいあがいてやる。」

「ホンマにえぇんやな?ここが分岐路やで。これ以上進んだらもう後戻りはできへん」

「ファイナルアンサー!」

「はぁ、ここでボケかますぐらい余裕あるんやったら大丈夫か。・・よっしゃ!ええやろ。アレンにはワイの加護を追加したるわ。」

「え?異世界神?の援助ってビリケンさんの加護じゃ・・・?」

「ん?あぁ、異世界神?の援助はまぁ受験表みたいなもんや。援助してもろうて、納得のいく成果を示せたら加護がつくかもしれんってやつやな。最初やし、慈悲にあふれたワイが試しとってん。今日の答え次第では異世界神?の援助はなくなっとったかもしれんな。」


アレンはこれから起こることに不安を覚えた。単純に夢中訓練が続くと思っていたのだが、どうも違う。訓練と思っていたものは神?様の試練場のようなもの。納得のいく成果がどんなものかはわからないが、散々しごかれて『やっぱやめた』ってされるかもしれない。それに、ビリケンさんの加護がどういったものかもわからない。


「アレンにつくワイの加護やけどな、2種類あんねん。一つ目は『幸運の加護』や。こいつはそのまんまちょっとだけ運が良くなる。劇的な感じで何やってもええようになるわけやない。成人の儀で気に入った奴がおったらつける加護やな。ホンデ、二つ目の加護。こっちが本命でワイらの間では『権能貸与』っていうんや。ええか?加護には絶対に2種類ある。良薬と劇薬や!二つ目の加護の権能貸与は、神様の権能の一部を切り取ったもんや。当然一部やからそれに関連するところはほとんど影響ない。今から授ける『良縁の加護』もそんなやつや。」

「権能の一部だけ?」

「せや、文字通り『良縁』だけや。つまりアレンにとっての良縁が運ばれてくる。もしくは会う人すべてが良縁の対象になる。ここで注意せなあかんのは、アレンにとっては良縁でも相手にとってはどうなるかわからんっちゅうとこやねん。」

「相手にとっては良縁じゃない場合があると?」

「受け取り方の問題と、アレンの関係の作り方次第で、相手にとっては非常に厄介な腐れ縁になってまうかもしれんっちゅうこっちゃな。常に意識して相手にもじぶんが良縁である努力が必要になる。そうせぇへんかったら、自分が一方的に助けてもろ手終わり!恩知らずの出来上がりや。あこぎなことすんな~!」

「まだやってない! でも普通の加護と違ってものすごく影響が強いってことなんですね?」

「せや。あとは人に限らんっちゅうとこも特徴やな。」

「人に限らないって、動物とか?」

「それもあるな、せやけどこの加護の本命は、ワイの同僚たちや!神と呼ばれる存在、象徴として事象を引き送すようになった概念とか、生物の枠にはまらんとこにも影響力がある。アレンをが英雄になるためには、多くの加護がいるからな。もちろんそれに見合った成果がないと加護はつかんけど。」

「サリアについている弓術の加護の二つ目はどんな加護になるんですか?」

「弓術の加護を授けんのは『グシスナウタル』っちゅう神さんでな。その権能は『必中の魔法の弓』や!二つ目の加護につくのは『必中の加護』。弓に限らずどんなもんでも放ったものは狙い通りに当たる。その代わり狙いが明確でないと何しても当たらん上に、視認してなくても、対象のイメージが明確やったらどんなに離れとっても関係なしに当たってまう。防ぐしかないんやけど、そもそも狙われとるかどうかもわからん時にまで警戒しとるやつなんか少ないから、めちゃめちゃ危険な存在になるな。もっとるだけで暗殺者からひっきりなしにオファーが来るし、統治者たちからは問答無用で抹殺対象に上がるくらい厄介やで」


説明を聞いたアレンは、唖然とするしかない。もしかしたら今から授かる『良縁の加護』も同じような危険性を孕んでいるのかと考えてみる。どんな人にあっても良縁になるということは何をするにも障害がなくなるようなものだ。それこそ革命を起こすことすら容易に出来てしまいそうだ。


「せや、そうやって授かった加護を理解して、悪用せぇへんって確信がなかったら、おいそれとは授けられへん。アレンはワイの信頼を得たっちゅうこっちゃから誇ってええで! これからアレンは英雄になるために大勢の神と交流を持つ。良縁の加護が引き寄せよるからな。加護を授かるにしてもそれが自分にとってホンマに必要なものかはその時に考えて判断する必要があるんや。もちろんここで良縁の加護を断るっちゅうんもできるけど、その時は神と出会う可能背はほぼないと思っとって。」

「リスクを背負う覚悟があるか?っていうことですね?」

「どうする?受けるか?断るか?」

「・・・・・受けます。『良縁の加護』を授けてください」


不安と期待に押しつぶされそうになりながらも、アレンは進決意をした。

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