第2話 育成計画始動
主人公の影が薄いです。
これからちょっと存在感出るとうれしいな。
「おっ、やっときおったか。ホンマ待ちくたびれたで。で、どないやった?」
「はい、確かにビリケンさんの言った通りでした。周りにも教えたみたいで、ものすごく感謝されたと」
「うんうん、せやろ!これでちーっとはワイの事信じてみる気になったかいな?」
「はい。それで何をすればいいんですか?」
「よっしゃ、ほな早速この問題を解いてもらおうか」
そういってビリケンさんが出したものは薄くて白くてぴらぴらしたものと、ちょうど真ん中の辺りが黒くなった細長い木の棒だった。
「・・・・はい?これをどうするんですか?」
「何や、テスト見たことないんかいな。もしかして字も書かれへん?」
「はい」
「まいったな~そこからかいな。・・・・しゃーない!テストはやめや!代わりに何個か質問するからしっかり考えて答えてや」
テテッ♪と口で変な歌を歌ったビリケンさんは声のトーンを変えて問題を出してきた
「第一問、今日の収穫で林檎が35個取れました。明日の収穫で30個取れたらリンゴは全部で何個になるでしょう?」
「えーっと、何んでそんな変な声でしゃべっ ぶっ!!」
ズッパー~ン
「アッホンダラ~!誰が突っ込みの練習せぇ言うたかっ!」
何やら、ジグザグに折り曲げた変な形の棒のようなものでぶっ叩かれた。ものすごい衝撃と目から火花が散るような痛みがすごい。
「きっ、急に何するんですか?」
「すまんすまん!条件反射で思わず体が動いてもうたんや。まさか、答え返さずに突っ込みが返ってくるとは思わんかったもんで、堪忍やで」
あまりの衝撃だったので、叩かれたところをさすってみるけど何ともなってないのでひとまず安心する。仮にも神様に危害を加えられたのだから何が起こっていても不思議じゃない。
「これはハリセンっちゅうんや」
「はりせん?」
「どんだけ強くたたいても痛みと衝撃を感じるだけで、外傷は一切でけへん。スパルタ教官御用達の神器や。まあ、ちょっと脱線してもうたけど、問題の答えは分かるんかいな?」
「えーっと、35個?と30個?だから・・・・・・・・」
「わかった。みなまで言うな、、。ファイナルアンサー⤴とかやりたかったけどしゃーないな。先は長いわ。。」
フヘン村では基本的に物々交換で経済が成り立っている。顔見知りがほとんどで、基本的に見た目の量で必要な情報が得られてしまうため、計算という技術を必要としていない。歴に対しても酷くあいまいだ。
ただ、この界ではきっかり一年ごとに、御使い様と呼ばれている彗星が天を走る。それによって年が明けたことを知り、自らに年を重ねていく。誕生日という概念はないので、みんな同じ日に年を重ね自らの年に1を足す。それ以外の計算はほぼ存在していない。
もっと大きな都市へ行けば商人がいて物流や市も盛んなので算術もすすんでいるのだが、いかんせん教える体制がないので、あるがままが現状だ。
「ほんなら、アレン育成計画を発表するで」
ビリケンさんが発表した内容は、最初の一年は基本的に座学がメインらしい。文字の読み書きから始まり、算術を一通り修める。夢の時間の7割ほどを使うらしい。
残った時間で基礎体力を上げるための訓練をするとのこと。
「とまあ、こんなとこやな。ところでアレンの憧れる英雄ってのはどんな感じなん?」
「・・どんなって言われるとすごい英雄?」
「ちょっと聞き方変えよか。せやな、、その英雄は剣を使う?それとも槍?それとも魔法?」
「剣です。どんな恐ろしい魔獣でも一刀で切り伏せるような」
「戦士のような荒々しい感じ?それとも騎士のような厳粛な感じ?」
「うーん、戦士みたいな感じですけど、そんな荒々しくなくて、困ってる人がほっとけないみたいな」
「なんや、テンプレ英雄かいな」
「え?」
「こっちの話やから気にせんとって。ほな目指す姿も見えたことやし、早速はじめよか」
「はい?目指す姿?」
「せや、最終的には今アレンが言うたような存在になってもらおうと思うてる」
「え?僕なんかがそんな風になれるわけないですよ」
「アレン、いまから言うことは誰にも言うたらあかんで」
何やらビリケンさんがすごんで迫ってきた。
「え、そんな大事な事を僕なんかに言うつもりなんですか?」
「言わんとはじまらへんし、アレンもやる気でぇへんやろうから特別に教えたるわ。アレン達が15になったらもらってる加護があるやろ?アレいつでももらえんねん」
「え?え?ええ?えええ?」
「そんでもって、一人の神が与えてるんやのうて、大勢おる神の誰かに気に入られるとその神の持っとる権能を加護として卸してもらえるんや」
「???」
「つまり、頑張って神に気に入られたら、どんどん加護が増えんねや」
「EEEEEEEEEEEEEEE?」
「おどろきすぎて言葉になってへんけど、まあそんな反応になるわな。ちなみにこのこと知っとるやつは、人では今のところアレンだけや」
「・・・これ、うっかり喋ったらとんでもないことになるんじゃ、、、」
「まあ、そんなに心配せんでええよ。今のアレンが言うても説得力あらへんし、いくつか追加の加護がついた時にはうっかり喋るようなことものうなっとるやろうしな。せやさかいに安心してわいにしごかれたらええで!」
それからの夢中訓練は文字通り夢中になるほど興味深く、僕はどんどんのめりこんでいった。相変わらずハリセンでしばかれるとめちゃくちゃ痛い。でも叩かれていると、無意識の恐怖から条件反射の様に答えが出てくる。半年もたったころビリケンさんから課題が出た。
「よっしゃ。そろそろ基本的なことは分かって来たな。ほならちょっと昼間にやって欲しいことがあるんや」
「昼間にですか?」
「せや。将来英雄みたいになるゆうことは、アレンはいずれこの村から旅立つようになるやろ?その時に後ろ髪惹かれるようやとお話にならんから、今、修行中のうちに訓練の一環として、村の生活水準を上げとかんとおちおち旅にも出やれへん」
「なるほど」
「この半年で教えたことちゃんと覚えてんな?」
「はい。なぜかここで覚えたことは忘れないし、なんだか体も前よりがっしりしてきたような感じがします」
「それがこの夢中訓練のええとこやな。実際に目や耳つこうとるわけやないからな。直接頭の中へ中身を書き込んでるみたいなもんやから絶対忘れへんし、身体も段々と引っ張られるようになる。ここで岩が切れるようになったら現実でもスッパリいけるで!」
「そんな効果があったんですね?」
「せや。ほんなら昼間にやってほしい事言うで。まず、神父についていって、行商人との交渉に同席してき。確か明日が今月の交渉日やったやろ。ほんでしっかりと話を聞いて、自分なりに考えてワイに教えてくれ」
「行商人との交渉ですか?」
「せや。ちょっと主人公の影が薄いって、、ゴホン!これまで話聞いてもわからんかったことが分かるようになってるはずやから、『一言一句聴き逃さん』ってなくらいの心構えで頼むで。ただし、その場では何を思っても何も言うたらあかん。絶対に何も言うなよ」
「振りですか?」
ズッパー~ン
「いった~~っ」
「どこでネタ拾うてくるんや。とにかく、絶対に何も言うなよ。絶対に!」
そこまで念を押されると頷かざるを得ない。翌日、アレンは父に事情を話し早速神父のところへ行って、行商人との交渉へ同席させてくれるように頼んだ。神父は快く了承してくれたので、いよいよ、夢中訓練の効果を実感できると思ってワクワクしていた。