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継ぐ者 剥ぐ者  作者: しおこんぶ
3/26

結菜と茉莉 2

No.3





────こんなに暗いトコを降りてきたっけ?




 楽しかったドキドキは徐々に不安でいっぱいのドキドキに変わっていく。


結菜が来た道を戻ろうと、茂みに近づいてみたが棘がいっぱいのツタが広がっていて斜面を登っる事が出来ない。


急斜面は変わらないのに、降りるときには木漏れ日がふりそそいでいたのに今はそれが無い。


真っ暗だ。降りてきた時とはまるで違う事に戸惑う。




「・・・・のぼれないね」


「うん、ほかの道をさがそっか」




 どちらからともなく手をつなぎ歩く。


野原はなだらかな上りと下りの坂が連続していて、進んでいくと少しずつ景色が変わっていく。


歩いていたらパシャッと水をはねた。二人の足元に水が流れていた。




「うわ!びっくりした~」


「小さい川がながれてる!すごいちっさい!」




 どこから流れてきているのかその先をみようとしても、背丈のある雑草の中に隠れてしまい分からなかった。双子の膝くらいある雑草は、よくみれば小さな蕾が開きかけていて花が咲こうとしている。


 雑草を掻き分けて見れば、小さなカエルがいっぱい泳いでいた。




「うわぁ。オタマジャクシ!」


「ちょすいちで見たのよりちょっと大きいね。こっちのオタマジャクシはねんちょうさんね」




大きなオタマジャクシにテンションがあがり、双子にあった不安はいつの間にか消えていき、他にも何か無いかな~っと、探すのに夢中になっていった。




 小川を見失わないように、雑草を掻き分けながら上流に歩いて行くと大きな木があった。それは半分が川の中に根をおろし、しかし木は根元から倒れ、苔やキノコが生えていて蔦も巻きついいて、倒れてからの年月がそう短くない事を物語っている。枝は朽ちてしまったのか雑草に埋もれて見えない。




 大きな根は盛り上がり、川に浸かっていない根の又の部分の土が、雨で流されたのかトンネルのように向こう側が見えている。


双子ならちょっと屈めば通れる程度の高さと幅がある。当然だけど、ここを通らない理由は無い。


キラーンと目を輝かせロックオン。目指すは根っこのトンネル!




「たんけんさいかーい! ゆうなたいいん あとに続けー」


「おー!続くー!」




 キャッキャッと凸凹した木の根をのぼりトンネルを抜けるとそこは森の中だった。




「あれ?」


「はらっぱ・・・どっかいった?」




 トンネルを抜ける前、その向こう側は原っぱが続いていたし、木の向こうに見えるのは原っぱだった。トンネルからのぞく景色も原っぱだった。なのに、通り抜けてみると森の中に双子は立っていた。


 振り返って木の根のトンネルを覗いてみると原っぱが見える。結菜が原っぱの方へ戻って振り返ると木は原っぱにある川に根を半分突っ込んだ状態だし、ここから見えるトンネルの向こう側には原っぱに立つ茉莉が見える。




「こっちから見たらまつりは原っぱにいるけど、そっちは森?」


「森よー?ちょっとこうたいしよう。」


「りょうかいです!」




 トンネルを通るのに必要な距離は数歩分。たったそれだけの距離で不思議がおこる。立ち位置を変えてみても原っぱから向こう側はやっぱり原っぱが続き、根を通り抜けて行くと森の中にいる。木の根のトンネルを通らずに反対側へ回ると原っぱしかない。そして森にいる片割れの姿が見えない。




「これは!!!!ひきょう!」


「うわぁすごい!たんけんしなくちゃっ」




 急斜面を降りた後、見えていた家が消えていて、降りてきた時には無かった棘がいっぱい付いたツタのせいで登れなくて不安を覚えたというのに、もうすっかり忘れてしまっている。


石を拾い、二人してガリガリと木に印をつける。縦と横、十字の印。




「めじるし~めじるし~」




「しっかりつーけーるーのぉぅううー」




 ガリガリ。


顔を真っ赤にして、四歳児の渾身の力で印を刻みあげる。即興の変な歌を力みながら・・・・。尖った石を選べば楽なのだが、そんな選び方をしていない。ただ石で木に印をつけるという行為が探検ぽくてしているだけなので、双子にとって印に深い意味はなかったりする。




 ─────・・・・




 ──────────・・・・・




「なんかきこえる?」




 印付けに熱中していた茉莉がふと顔をあげ耳をすます。結菜も削るのをやめて静かにあたりを見まわす。




「あ、なんかいってる」




「人がいるみたい!」




────────・・・・




声がだんだんと近づいてきて、双子は声が聞こえるほうをじっと見つめて、何を言っているのか聞き取ろうと静かにしている。




「まぁーだだよ~」




 茂みからザバッザバッと葉っぱを散らしながら男の子が飛び出してきた。双子と目が合った男の子はびっくりしてピタリと動きを止めてしまった。




「「かくれんぼね!」」




 目をキラキラと輝かせ、声をそろえて話しかけると、勢いに押された男の子はコクコクと頷く。




「やっぱりね!かくれんぼだとおもった」




「まつりもわかったよ。めいすいり」




 いつ探検から推理に変わったのか。しかもぜんぜん推理じゃないし。男の子が双子のテンションにひいてるがお構いなしに盛り上がっている。


後退り、この場を離れようとした男の子に、背後から体当たり気味に抱きついた者がいた。




「捕まえたぁ!鬼交代っ」




「わぁ!?」




「ん?」




 捕まえに来た子供が双子を見て目が見開く。


ついでに口もぽかんと開いて行く。少しの間をあけ、大きく息を吸い込み




「すげー同じ顔!なにこいつら?」




 男の子のことをサカナと呼ぶ彼は少し背が高く、サカナの首に腕を巻き付け軽く首を絞めつけてる。二人の服装は別の国同士といった風情で、サカナと呼ばれた男の子は短髪で、赤を基調にした上下そろいの服でをきているが幾何学模様が染められてごちゃごちゃとしてて目がちかちかする。


 もう一人は、大きすぎるシャツで肩がズレ落ちている。ズボンは分厚く丈夫そうな生地だが膝に穴が開き、使い込まれているのが分かる。全力で遊びまくっているのか服が土で汚れている。髪も左耳側だけ三つ編みをして後ろで一纏めに結っているが、枯れ葉から瑞々しい若葉まで冗談かと思うほどにくっつけている。




 さらに突然現れた男の子に、双子の上がったテンションはピタリと止まってしまった。どちらも双子より少しお兄さんだ。じーっと見ていたら汚れだらけのお兄さんの方が遊ぶ?っと誘ってくれた。




「一緒にかくれんぼするか?」




「・・・・」




 無言でコクリと頷けば、動きがおんなじ!!!!とゲラゲラ笑ってサカナの肩をバンバン叩いている。


大きな声で森のどこかに隠れている友達を呼び戻し、双子をいれてかくれんぼを仕切りなおした。













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