No.25
No.25
クッションを枕代わりにして爆睡するツギの手には妹からの差し入れの本が握られている。
ハギが読んでいた小説とはちがうジャンルで、妹ちゃんオススメ「大人向けの怖い話の絵本」。
十ページ前後しかない絵本を読みきれず寝落ちって・・・・指を本の間に挟んで寝ているツギに気付かれないようににじり寄り、起こさないように本に挟んだ指をそっとってやる。微笑をたたえたハギは本を閉じ、ツギのお腹の上に置く。
ふふ、読みかけのページを閉じちゃった~。
元々、イタズラ好きのハギは隙あらばこういう事をしている。ささやかなイタズラ。妹ちゃんが来てからは特に、色々とアイテムを持ってきてくれるからイタズラもバリエーションが増えてきて楽しくて楽しくて。
仕事場である空間は、そこら中に浮かんでいる「世界」以外はなーんにも無い。今までがそうだったから当たり前に思っていたけど、妹ちゃんの登場でいろんなものが増えて快適で楽しくて、なぜか仕事がはかどった。
不思議だわぁ。遊びと仕事って連動しているのかしら?いっぱい遊んで試してみようかなぁ。うふふふ。
ツギの目の前であれこれ持ってきてと頼みにくいから良い方法はないかと考える。色々と楽しめるオモチャがほしい。
特に!イタズラ好きなことを妹ちゃんに話したら、イタズラグッズなるものが売っているという。ぜひ欲しい。けれど妹ちゃんはまだ子供。少ない小遣いを私のために使わすのは躊躇われる。
久しぶりに世界へ渡ろうかしらぁ。自分でお金を稼ぐのもいいし、誰かに貢いでもらうのもいいわねぇ。
過去、管理者に就いた者は互いの生まれた世界に出かけたりしなかった。干渉しないのが暗黙の了解だったようで。
でもぉ、禁止してるわけじゃないし~。ツギが嫌がるなら生まれた国以外に行けばいいわよねぇ。うん、決めた。じゃぁ、早速遊びに行く妹ちゃんの「世界」についてお勉強しましょう~。
管理者は自分が生まれた世界をつねに傍に置く。ツギとハギの「世界」は仲良く並んでフワフワと浮いている。普段なら手元へ「世界」を引き寄せるのだけど、相棒の大事な「世界」だから定位置から動かしたりせず、自分から近づく。
そと覗けば、妹ちゃんが暮らすニホンの国が映る。
・・・・・固定されてる。これじゃニホン以外の国が見えないぃ~。
ちらっとツギを見ると気持ちよさそうに寝ている。
ハギが持つのは繋がったままになっている不自然に歪む空間や世界同士を引き剥がし安定させること。逆にツギは空間や世界同士を繋ぎ、影響を与え活性化させる。
これが管理者となった時に引き継がれた能力。
その他諸々あるけど管理者=空間を繋ぐ・剥ぐなのだ。
じっくりとツギの世界を見たけど、世界自体がガッチガッチに固められていた。偶発する空間の歪みすら許さないと言わんばかりの固めよう。
これでは行くのに道を開いてもらわないと行けない。一応遠慮してニホンに行くのはやめておこうと思っていたのに。ニホンにすら行けない。
「固定ってないわぁ」
がっくりと肩を落とし、妹ちゃんが来るのを待って一緒に世界へ行くのを説得してもらおうと考えるハギだった。




