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継ぐ者 剥ぐ者  作者: しおこんぶ
19/26

サカナとネコとタヌキ 4

No.19














 赤い実を落としてくれているとはいえ、低木が邪魔をして一直線に行けないことが多々あり。茂みを迂回して、さらに赤い実が茂みに落とされたらしく見失いことも多々あった。その度にタヌキが木に上って方向を確かめては走り、方向を見失ってはまた木に上ってを繰り返した。身軽で体力のあるタヌキもさすがにバテてきている。




 先へ進むにしたがって、木の根が張りだして足元が覚束ない。救いは赤い実のなる木が一本の木から伸びているようで、迷子になる心配がないことくらいだ。それでも、蔦の密集度が高くなってきているようで赤い実があちこちに落ちている。


 チョウチョが目印に落とした実と区別がつかなくなっていた。それももう必要がないけど。




「しんどい・・・・・」




 迂回するくらいなら擦り傷を作ってもいい。茂みに足を突っ込みバキバキと枝を折りながら茂みへ覆いかぶさるように乗り上げ茂みを越える。


 いてて、でも思ったより擦り剝いてないな。枝が服に引っかかって茂みを越えられないなら諦めて迂回しようと考えていたけど大丈夫そうだ。よし出来るだけ真っ直ぐに行こう。よろよろと張りだした根を踏み越え、時には密集した木と木の隙に体を滑らせて通り黙々と突き進む。見ていたタヌキがちょっとマジ?な顔をしていたがサカナに気付く余裕は無かった。










「だぁ!やっと着いた。お前らって羽があったのかよ。ずるいぞ」




 茂みを掻き分け、開口一番にタヌキが叫んだ。続いてサカナも叫ぶ。




「はあっ、たどり着けた!」




 髪を葉っぱだらけにして茂みから顔を出した。二人とも顔や腕に小さなすり傷をいっぱい作っていて、服も所々が破けている。




「ひどいよ。ここって低い木が多くて真っ直ぐに進めなくて大変だったんだから!僕たちを抱えて飛んでほしかった。」




「低木に阻まれて、迂回されられてばかりで前に進めなくて体力ばっかり無くなっていくし、サカナなんか茂みにジャンプして乗っかって真っ直ぐ進み始めるしさ。結局俺も泳ぐように無理矢理ここまで来たんだからな」




 一通り喚いて、大きなため息を一つ吐いて座り込んだら、立てなくなった。足がだるい。疲れたー・・・












 サカナの頭が揺れ始めてウトウトと気持ちよくなってきて・・・・・・頬を引っ張られた。むにー。




「ひゃ!?」




「寝ちゃダメよ。」




 ビクっと体がはねて眠気がちょっと覚めた。




「ふぁー、寝ないよ。」




「おう、寝るなよ。」




 目を瞑りながらダルそうにタヌキが言う。座りながらちょっと頭が揺れているが大丈夫か?




「言ってるタヌキも眠そうなの。」




「おう。」




「・・・・眠気がかなりきてるのネ。立とうか。」




「おう」




「寝てるでしょ?」




「おう」




「ふ。」




 キンギョがちょっと悪い顔して鼻で笑う。どうイタズラしてやろうか?と考えているに違いない。




「遊ばないの!サカナとタヌキも立って。帰る方法を見つけるのが先よ」




 慣れているようでチョウチョが先回りして止めに入った。タヌキ、今のうちに起きた方がいいよ。頑張れ?


 しぶしぶ立ち上がるタヌキは瞼が閉じたままになっている。僕も疲れてだるいけど座っていたらまた眠ってしまいそうだから立ち上がった。


 あー体が重いー。




























「うーん、でっかい宝石だなぁ。これってチョウチョとキンギョが言ってたやつだよね?」




「たぶんね。ここまで大きいなんて以外だったわ」




「キラキラして綺麗だな、夜空が宝石の中に閉じ込めらえれてるみたいだ。」




 とてもきれいでずっと見ていたくなる。けれど僕たちは全員が違う色に見えていた。タヌキはかなり眠いようで瞼を閉じたまま。起きろそして何色に見えるか言おうな?




 チョウチョはオレンジに近い茶色。


 キンギョは赤。


 僕は夜色に見えると。


 で、タヌキ。




「人によって色が違って見えるのかしら。タヌキは何色に見えてる?」




「んんー?」




 閉じている瞼を頑張って開き、目の前の宝石を見上げる。と、これでもかってほど見開き驚きの表情に変わっていく。




「すげー、向こうがすげー明るい。眩しい。」




 目を可能な限り細めている。眠いのと眩しいのとで目がシパシパさせて。




「「「明るい!??」」」




「これってユーナとマツリが言ってた木の根っこのトンネルだろ。帰れるな」




「待って、タヌキには何が見えてるの?宝石は見えていないの!?」




「何言ってんだ?蔦で出来たトンネルの向こうがすげー明るいじゃん。こっちが暗いから光って見えるだろ」




 そう言って宝石に手を伸ばし、そのまま腕が宝石に飲まれて─────消えていこうとするタヌキに全員が待ったをかける




「「「ちょっと待ったー!」」」




 ネコの時とは違う。タヌキの言うことが本当なら、この木に嵌った宝石のサイズで道が繋がっているハズだ。石が見えている僕たちだけじゃ向こうに行けないだろう。




 三人同時にタヌキの体を引き寄せ、勢いで後ろにひっくり返った。ぐはっ胃に肘が。タヌキを横へ転がして、チョウチョは宝石へ走り寄って触れる。が、腕が宝石の中へ入る事もなくペタペタと冷たい表面に掌が触れるばかりだった。




「蔦のトンネルなんて私達には見えないわ。」




「光って何?腕が宝石ん中に消えたよネ。私には赤い宝石がみえるんだけど」




「へ?」




「えー!?光ってるって明るいの?夜色の宝石の中にキラキラしてるのは見えるけどさっ!」




 は?空の明るさ、昼間の明るさの事じゃないのか!?照明的な明るさ?なら向こうは建物の中とか・・・・???




「私はオレンジに近い茶色の宝石が埋まって見えているわ。」




「どこに宝石!?光ってるけど空洞だろ!」




「向こうってどこだよ、蔦に絡んだ宝石の後ろ側って、同じように蔦に絡んでるだけだし」




「触ってもタヌキみたく腕きえないの。どうやったの!?」




 一斉に話だし、わちゃわちゃわちゃ・・・・・










 ちょっと落ち着こう。










──────────────────






 タヌキが蔦に右手をかけ、


タヌキの左手をサカナの右手が繋ぎ、


サカナの左手をチョウチョが右手で繋ぎ、


チョウチョの左手をキンギョの右手が繋ぐ。




「みんないいな。行くぞ」




 真剣な顔して振り向くタヌキ。チョウチョ、キンギョ、そして僕も真剣な顔をして頷く。




わちゃわちゃが落ち着いてから、試しにサカナがタヌキの手を握ったまま反対の手で宝石に触れてみることにした。するとタヌキの腕と同じで抵抗なく中へ腕が消えていったのだ。




─タヌキにしがみ付いていたら行けるのでは!?




 となり、縦一列に並んだ状態で今に至る。もし、直接タヌキと手を繋いでいないチョウチョとキンギョが置いて行かれそうになったら、僕とタヌキを引きずり戻して繋ぎ方を変えて何度でも試す。




 最終的にはタヌキを中心にして三方にチョウチョ、キンギョ、僕がしがみついて行くという。タヌキが挟まれて無茶苦茶になりそうだけど諦めてもらうしかない。




「せーの!」




 掛け声をあげて根を跨ぐタヌキ。続いて僕、チョウチョ、キンギョと根を跨いでいき、全員が宝石の中へ入った途端、ぐっと重力が増したように重みを感じガクンと膝から座り込みそうになった。




「うぅ」




 なんとか耐え地面に座り込まずにすんだが、繋いでいたチョウチョの手の力が抜ける感触がして、咄嗟に振り返る。




「お、重っ」




 チョウチョの重量に耐えかねた声を聴き、座り込んでしまっている姿をみた。さっと驚きの表情に変わり僕の手を握りなおそうとチョウチョは腰を浮かせ腕を伸ばしてきた。 辛うじて繋がっている手に、互いに力をいれなおしたが遅かった。手が離れてしまった。




「だ、だめ。待って!」




 チョウチョが叫ぶ。けれどその姿は僕の見ている前で消えてしまった。もちろんキンギョも一緒に。




 ふっと体が軽くなる。感じていた重みが消えて、古びた建物が連なる狭い路地に立っていた。振り返ると二階に続く外階段があるだけで通ってきた蔦がない。




「コケるかと思った。体が重くなるなんてなー。しかし薄暗くらいな、向こうからだとすげー眩しかったのに」




 キョロキョロと辺りを見回すタヌキ。こっちはそれどころじゃない、チョウチョとキンギョが来ない。何もない空間に腕をいれれば消えたんだから、出てくるはずなのに・・・・・




「チョウチョとキンギョが出てこない」




 焦る声にタヌキが僕に顔を向け、その視線を横へずらす。そこに居るはずのチョウチョとキンギョが居ない事を知る。




「重さに負けてチョウチョが座り込んじゃったんだ。その時手が離れかけてお互いに手を繋ぎなおそうとして一瞬だけ手が離れたんだ」




 問われる前に自分から話す。もっとしっかり繋いでいればよかった。まさかあの宝石の中に閉じこめられたりしてないよな。最悪を想像してしまって血の気がひく。タヌキは声もでないようで螺旋階段を見つめて────正確には何もない空間をみている。




 パンッ!突然の音に体がはね続いてもう一度パンッと音が鳴る。二回目は頬に痛みを感じた。両目を閉じて肩を竦め体を固くしたがジワリと頬に暖かさを感じそっと目を開くとタヌキが僕の顔を両手で包んでいた。じゃなくて僕の頬を両手で力を込めて挟んだんだ。タヌキの頬が赤くなってるから自分で叩いたんだろう。




「気持ちを変えろ。あいつらはここと違う場所へ出たんだろう。出てこないんだからここで待ってても意味がない。とにかく移動するぞ」




 力強い目で睨むように僕に言う。両手で僕の顔を挟んだままで、唇がむにゅっとなってて返事ができない。切り替えの早さに驚いたがその通りだ、先に進もう。そう答えたいからむにゅっとなったままの唇を元に戻してくれないかな?










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