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流行最前線!

作者: みなみ

広い心でご覧ください……





「あっ、お姉様ぁ!

食堂にいらっしゃるなんて珍しいですわね!

私たちとご一緒しません?」



ざわざわと騒がしい食堂に、お姉様を見つけて私は声を掛けた。

伯爵令嬢であるはずなお姉様だが極度の人見知りもあいまって根暗属性である。

そんなわけでいつも隠れるように裏庭でボッチ飯を堪能してるのである。

両親はじめ家族は、社交も貴族の義務だからとぶるぶるしながらお茶会や夜会に出向き帰ってくるなり寝込んだりゲロゲロ吐く姉が流石にかわいそうになり期待するのはやめた。

緊急家族会議が開かれ、社交やらは私が担当する事となった。

私は華やかなのも裏をかく貴族社会も面白いし楽しいから別に構わないので大喜びで引き受けた。

美しい微笑の影で足を引っ張り合うオドロオドロシイ華麗で凄惨な貴族社会!ワクワクしません?しますよねぇ!


こほん、私の萌えは置いといて、お姉様である。

社交的とは言いがたい方が、賑やかな食堂に居るなど珍しい。

これは久々の姉妹ランチを堪能するしかありませんわ!

ちょっとキョドりながら私や私のお友だちと話すお姉様を見ると大変ゾクゾク…こほん、微笑ましくてきゅんとするのですわ。



「シリル…」



振り向いたお姉様は制服を濡らしていた。

顔はマジで吐いちゃう五秒前的に青くて白い。

もう一度言う。

服を濡らされていた。


お姉様の回りを囲むように群衆が割れている。



ホホウ、これはトラブル発生ですわね!!!!!!



ばさり…と、腰に付けた扇を優雅に広げ私は無敵の微笑を口元に浮かべ一歩進み出た。



「あらまぁ、どうなさったのです?

お姉様、お召し物が濡れてましてよ?こちらへいらして下さいな。」



捨てられた小動物的な目でこちらを見るお姉様。

そんな目で見られたら私、いじめたくな…こほん、抱きしめたくなりますわ。

ささっとさりげなくお姉様を後ろに控えるお友達に託す。

彼女達は心得たもので、お姉様を中心におきその姿を隠す。

危ない危ない。

着痩せするお姉様は水に濡らされたのでその爆乳があらわ。

うらやましい。揉ませてほしいですわ。



「レンブリーグ卿のご子息様、姉に何をなさったの?

このような公衆の面前でか弱い姉に水をかけるなんて理由をうかがってもよろしいですか?」



目の前に居る公爵家ボンボンな三男坊は、ネズミより軽いと思うような脳ミソ持ちの顔だけは極上なバカボンボンなのである。

やつめピッチャーで水をぶっかけやがった。

下着の線が露になるほど濡れるはずである。

ピッチャーを奪われた給仕は青い顔で今にも倒れそうだ。



「この俺が言ったことを聞けないからだ!」



「何を言いましたの?」



王家の外戚じゃなかったら捻り潰したいやつなのである。

もげればいいのに。



「お前みたいな根暗女が婚約者など耐えられない!婚約破棄をしろ!もしくは妹と交換しろと!」



「まぁ!

婚約破棄ですって!?」



「お前がどうしてもと乞うなら婚約者はお前に…」



「お姉様っ!

すごいですわっ!」



バカボンボンは何故か姉の婚約者だったりする。

色々事情がありそなことになったのは置いておいて…



「シ…シリル…何がすごいのかわからないよ…」



「だってお姉様!

知ってまして?今、婚約破棄は流行最前線なのですよ!」



「えっ?」



「男爵令嬢のマリアさんに傾倒した将来有望株達が自分の婚約者たちに次々婚約破棄しているのはご存知ですわね?」



「えっ、知らないわ…」



「もうっ!お姉様ったら!疎いのにも程がありますわ!

マリアさんは凄いのですわよ!足も開かずにたくさんの男を転がし駄目にする凄腕のダメンズホイホイなのですわ!」



「シ…シリル、女子が足を開くとか言っちゃダメよ…」



「今女子の間では、優秀だけど性格や嗜好に問題がありすぎる婚約者をマリアさんに引合せ、巧く婚約破棄に持ち込ませるのが流行ってますの!」



「シ…シリル、意味がわからないわ…それって流行りなの…?

社交界って怖い…」



「王太子の元婚約者の令嬢は帝国の王弟殿下と婚姻を結びましたの!その他の方々も素敵な婚姻を結んだり実力が評価されて役職に就いたり!

お姉様もきっと婚約破棄されたからには幸せが訪れること間違いなしなのですわ!」



「なんかもうジンクスみたいに…っくしゅ!」



「熱弁もいいが彼女が風邪を引く。連れていってもいいか?」



ぱさりとお姉様の肩に騎士科のマントがかけられる。

いつの間にかお姉様の隣にはガッチリとした体格の長身の男…ふつ面の青年がいた。

私達姉妹の年上の幼馴染みだ。

軍部でめきめきと力を付け最近近衛として引き抜かれた彼が学園に居るということは…



「クルム、許可する。行ってきて良いよ。私はまだ学園に用があるから。」



色気たっぷりの声がする。

振り返った先にいたのは…



「おっ…王弟殿下…!!!!」



現国王の年の離れた異母兄弟の我が国の王弟が供を引き連れ立っている。



「シリルーディア…何があったんだね?」



気だるげな色気を持つ王弟殿下は26歳。

私とは10歳が離れた美丈夫かつ次期国王に最近内定した天才的な王族だ。さりげなく腰を抱いてきたのでさらりとかわして逃れてから言った。



「殿下、ちょうどよいところに。

お姉様と婚約破棄したいそうですの。そして代わりに私を婚約者に据えたいそうですわ。」



「ふむ…

残念ながら彼と君の姉君との婚約破棄は決定なんだ。」



「殿下っ!ありがとうございます!次の婚約者は…」



「明日、彼は隣国の女王陛下の伴侶となるために旅立つからね。」




バカボンボンの感謝の言葉をまるっと無視し爆弾発言をかます王弟殿下に食堂は一気に静かになった。


隣国の女王はとてつもない美人で大変優秀であるが大変な色狂いと噂されており愛人は男女問わず多いそうな。

最近国境で揉め事があり、人質兼飾りの夫に王族男子をご所望されたのと噂は本当だったらしい。



「いやぁ、助かったよ。外戚とはいえ継承権を有する君は立派な王族だ。

エアリーア嬢には責任をもって別な婚約者を宛がうから安心して旅立ってほしい。」



暴れるバカボンボンはあっという間に簀巻きにされ運ばれていく。

すかさず王弟殿下は続けて言った。



「さて、皆騒がせて悪かったな。これから緊急の会議があるので午後の授業は取りやめになった。

せめてもの詫びに食堂での飲み食いは全て私がだそう。ここに居ないものにも声をかけ皆で楽しんでいってくれ。」



ワアアアァァと歓声が上がる。

殿下万歳!の声に送られ、殿下と何故か私まで引きずられて食堂を後にするはめになった。






「殿下っ!

私まだ昼食をとってませんの!それにお姉様をみてまいりませんと!」



「シリルーディア?私は名を呼ぶように前に言ったはずだか?」



「…アレックス様…離してくださいな。」



アレックス殿下を睨み付けると何故か抱きしめられた。

何故だ!



「麗しのマリアさんにお会いになったでしょう?

心変わりしたんでしょう?」



「ああ、あの阿婆擦れな。どこがいいんだ?周りに男が溢れかえってるのに私にすり寄ってきたぞ?

あまりにしつこいので投げ飛ばした。」



「は?」



「男たちの方に投げたから怪我はない。気絶はしたがな。

大丈夫、今なら好き放題だな~ついでにこれをやろうと幾つか贈り物をしてきたから。」



「一体ナニを…あっ、なんとなく予想ついたのでいいですわ。言わないでくださいな。」



マリアさん好き放題したんだからしょうがないと切り捨てた。深く考えてはいけませんわ。



「それで?式はいつにしようか?」



ニコニコとアレックス殿下が言う。私は固まった。

実は…実は私はこの方の婚約者候補だったりする。あくまでも候補のはず…なのに。



「姉を助けてくれたらなんでも言うことを聞くって約束したろう?

だから諦めなさい。私のものにおなり。大事にするよ、必ずね。」



問題ありの相手との婚約破棄をいかに巧く果たすかが女子の間で流行していたように、

魅力ある女もしくは逆ハーレム女に心を奪われず婚約者と思いを通わせたり結婚できるかどうか…が男性の間で流行っていたと知るのは自身の初夜での事だった。




流行最前線に乗ったお姉様は近衛に転身した年上の幼馴染みと無事ゴールインできたことを報告しておく。







読んでくださってありがとうございました!


姉妹に幸あれ!



削った話…年上の幼馴染みは姉を最悪かっさらう気で軍部で実力つけていた。

王弟殿下に俺の近衛になれば姉と結婚お膳立てするよーと言われたのでホイホイ職種変えた。

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