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第一章 冒険者 2


 「〜〜♪〜〜♪」

 「ゴキゲンだな、エル」

 「当たり前だろ?! やっとハルトがあたしのことを認めてくれたんだ。機嫌も良くなるってもんさ!」


 辺りはもう既に夜だ。

 村から半日ほどの距離の場所で、野営の準備を済ませていた。拡張袋から厚布と支柱を取り出して組み立てただけの簡素な寝床だが、一晩過ごすだけなら十分だろう。

 あの後、騒ぎを聞きつけた村の住人による祝福の嵐に巻き込まれてしまった。そりゃあれだけ騒げば見つかるよな。

 散々二人してからかわれ続け、漸く出発できたのはもうすっかりと日が昇ってからだった。

 もう少し距離を稼いでおきたかったのだか、終始俺に纏わりついてくるエルのせいで、目標の半分ほどになってしまった。


 可愛いから許す。


 鼻歌交じりに熾した火にかけた鍋目掛けて、ポイポイと乱雑に調味料を放りこむ姿に不安を感じるが、エルはこう見えて料理の腕は高い。


 「ほら、できたぜ。愛情特盛りだ」

 「なんだそれ……言ってて恥ずかしくないの」

 「ぜんぜん! むしろ滾ってくるな!」


 エルが差し出した木の器を受け取り、愛情特盛りスープを一口いただく。

 ……うん!


 「いつものエルの料理だな」

 「どれだけ毎日愛を込めていたか、ハルトが理解してくれて嬉しいよ!」


 朽木に腰を掛け、ニコニコと俺の食べる姿を観察するエル。

 今の調子を維持したままだと、後になって恥ずかしくなると思うんだけど、大丈夫か? まあ、いい。俺も大抵なことは言っている。






∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼




 

 食事も終わり、見張りはエルが先、俺が後と交互にやると決めた。

 寝床に入って寝ようとしたが、エルからの物凄い視線を感じて、エルの横で毛布を敷き詰めて寝ることに。寝床を作った意味が……いい機会だから、これからのことを話し合っておこうか。



 「『自己表記(ステータス)』」


 身体の中心から、波紋のように何かが広がるイメージ。

 やがてそれが収まると、目の前に半透明の板が現れた。縦20cm横50cmくらいか。


 「お、ハルトが大好きな『自己表記』じゃねーか。少しはましになったのかよ?」




∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼



 ハルト 21才 男


生命力:150

魔力:60

力:4

守:3

素早さ:5

運:7


スキル:【軽戦闘】3 【付与魔法】3 【体術】1



【軽戦闘】……片手剣、短弓、拳闘などの軽武装での戦闘、習熟に補正


【付与魔法】……自身の能力を魔力にて強化する


【体術】……身体能力に弱補正





∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼∼




 そう簡単に増減するものじゃないって分かっていても、毎日見てしまうんだよな。

 【アルルメイア神の加護】といえば、迷宮で産出されるアイテムとこの『自己表記』だ。人が魔物に立ち向かい、さらに研鑽することを忘れないために大昔に与えられたものらしい。

 人種だけではなく、獣人、エルフ、ドワーフ、その他の亜人種にも与えられているが、アルル教は触れていない。


 「うん。変わらないな。けど、少なくとも駆け出しの冒険者よりは上だと思うよ」

 

 成人男性の平均は、だいたい生命力と魔力が110前後で、他の能力やスキルは3を超えれば優秀だと言われている。上限は文献で記されている限りでは過去の英雄王と呼ばれた人物で守35の値を記録していたという。

 そこまで辿り着く者は、まず存在しない。


 「そういや、エルはどうなってんだ? 言うからには成長してるんだよな?」

 

 『自己表記』を終了させて、エルの方に向き合うと、少しむっとした表情で


 「内緒だよ。てか、お前あまり人に簡単に『自己表記』の内容について聞くなよな。失礼だぞ」

 

 ま、ハルトならいいんだけどね

 などと言いながら目の前に板を浮かばせる。


 「さすがに見ず知らずの人間には聞かないって。そのくらいの常識は持ってるよ」

「本当かぁ……? 鍛錬し始めたころにいきなりあたしに『エルの『自己表記』教えてよ!』って詰め寄ってきたのは誰だっけ」

 「ぐっ、そ、それは忘れろって」

 「思えばあの時初めてハルトのこと意識し始めたんだよな〜」


 世間一般では、「あなたの『自己表記』が知りたい」とか「あなたの『自己表記』を見せてくれ」というのは、求愛の台詞だというのを、昔の何も知らなかった俺はエルに長時間懇切丁寧に注意説明されたことがある。

 そんなこと知らなかったんだよ……片親だから……



 「と、とりあえずだな。戦闘技術に変わりがないようだったら俺が前衛で、エルは……」

 「しっ……っ! …………獣か? 足音だ」

 「魔物か?!」



 話に夢中で気付かないなんて、俺も浮かれていたのか?

 確かに耳を澄ませると、近くの森から草が擦れる音と、小枝を踏む音が微かに聞こえてきた。



 さて……旅に出てからの初戦闘か。気を引き締めないとな!






 エリューシカ 21才 女


 生命力90

 魔力130

 力3

 守3

 素早さ7

 運1


スキル 【短剣】3 【生活魔法】4 【治癒魔法】1 【体術】3



【短剣】……短剣の戦闘、習熟に補正

【生活魔法】……生活に役立つ簡易な魔法

【治癒魔法】……魔力で身体を活性化させ、治癒させる

【体術】……身体能力に弱補正



エルの方がつry

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