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碑文の廻廊2

「それじゃ明日、今日の続きから探索始めるので、しっかり休んで体調を整えておこう」

 隼人は食堂で、智輝と伊織に今日の探索の続きは明日にすることを伝える。

 碑文の廻廊から帰還した後、隼人はそのまま明日のダンジョン探索の許可申請を出した。こういう探索直後に明日の探索申請を出す者は結構居るようで、先生方も手慣れた様子で処理していき、隼人達の申請も直ぐに受理されて明日の探索が決まった。

「相変わらず受理までが早いね」

 智輝は感心したように呟く。この一ヶ月、何度もこういう申請からの即受理を体験したが、何度体験しても感心するらしかった。

「まぁ、ダンジョンの外で監督役の先生が待機してるだけだからね。ウチの学校結構先生が在籍してるのはこういう時のためだろうし、空いてる先生が居れば大して問題無いんじゃない?」

 智輝の呟きに、伊織が適当に答えを返す。

「それはそうかも知れないけどさ……」

 伊織の言葉に、智輝は少し拗ねたように呟いた。

「ま、何にせよ明日直ぐに続きから探索出来るのは有り難いよね。明日こそはダンジョンの主まで倒したいところだけど」

「今が地図の終わり近くだっけ?」

「そうだよ、もう少しで地図の部分は終わるね」

「そっか、じゃ明日は頑張って碑文の廻廊を攻略したいね」

 ふんすと気合いを入れる伊織。

「そうだね、そうしたら次は霧のダンジョンかな?」

 智輝と伊織の顔を見渡して、首をかしげる隼人。

「人と同じように攻略していくなら霧のダンジョンだけど、嘘つきの森も霧のダンジョンと難易度はそう違わないと聞いたことがあるけど?」

「そうらしいね、だから次に行くならそのどちらかだと思うよ」

 智輝の言葉に頷き返す伊織。

「そっか、どっちにしよっか?碑文の廻廊が終わったらすぐに次に進めるように、今決めとこうよ」

 隼人のこの提案に、二人は揃って同意するのであった。



「明日、ですか。いよいよですね……」

 女子寮のとある一室で少女は独り言ちた。その瞳はどこか遠くを見詰めていた。

「二人ほど邪魔者は居ますが、襲うならダンジョン内でないと色々面倒なことになりますからね」

 少女は僅かに口角を上げると、自分の指に嵌まる指輪へと視線を移す。

「それか学園内で直接取りに行く、ですが、相手は常に身につけてるうえに、夜は男子寮。この指輪ちからを使うにも準備が少々厄介ですね……」

 はぁ、と少女は悩ましげにため息を吐く。

「明日は上手くいけばよいのですが、さすがに関係ない人を巻き込むのは少々気が引けますね、何か他に方法は……う~ん」

 「困りました」と、頬に掌を当てる少女のその姿はどこか儚げで、それでいて妙に艶っぽかった。



「それじゃ、マーカー起動するからどこかに触れていて」

 碑文の廻廊の入り口で隼人は二人にそう呼び掛ける。

 一般的なマーカーは起動する際、起動させた本人と、そのマーカーを起動させた人物が触れた、或いはマーカーを起動させた人物に触れている複数人をもう片方のマーカーへと転移させる。しかし転移可能人数は無限ではなく、上限はマーカーの質によって異なる。他にも、起動させたマーカーを中心に、一定の範囲内に転移の効果が及ぶマーカーもあるにはあるが、こちらは前者のマーカーよりも高価で、今回隼人が用意したのは、使用人数も三人と少ないので、比較的安価な接触型のマーカーの方であった。

「分かった」

「これでいいのかな?」

 智輝と伊織が隼人の肩に手を置くと、隼人はマーカーを起動した。すると、一瞬で昨日マーカーの片方を設置した場所へと移動が完了した。

「おお!」

「スゴい、本当に一瞬だ!」

 智輝と伊織は驚きから興奮した声を出す。

「先へ進むよー」

 隼人はそんな二人を微笑ましく思いながらも、先へ進むために声を掛けて歩き出した。

 三人が暫く進むと、先頭を歩いていた隼人が立ち止まり、腰から短剣を引き抜く。智輝と伊織も戦闘態勢をとった。

 ガチャガチャと音を立てて三人の前に現れたのは、重要な部分だけ保護している簡易的な鎧を身に付け、錆びた剣を携えた骸骨のモンスターだった。

「一、二、三、四、五、六っと、ちょっと多いな」

 隼人は指差しながらモンスターを数えると、その数の多さに嘆息する。

「先手必勝!我が敵の頭上に落ちよ太陽――『落日らくじつ!』ドッカーン!」

 骸骨のモンスターの頭上に巨大な火球が出現すると、そのままモンスターの集団目掛けて巨大な火球が落下していき、ぼわっと広がった炎の波が、モンスターの集団を一瞬で呑み込んだ。

「凄いな……」

 隼人は炎の熱さに僅かに顔を背ける。その圧倒的なまでの熱量を目の当たりにして、隼人は自分との魔力量の差を改めて思い知らされたが、落ち込むどころか素直に感嘆の声を漏らした。あまりにも離れすぎていたこともあったが、隼人は自分と他人を比べる愚を既にやめていた。

「どんなもんよ!」

 まさに鎧袖一触、一撃で骸骨のモンスターの集団を焼き払った伊織は、得意気に胸を張る。

「さすが伊織さんだね」

 そんな伊織へ拍手と賞賛を送る隼人。

「いやー、照れるね」

 伊織はへへへ、と、笑うと、嬉しいけど恥ずかしいというように頭を掻いた。

「今の火球スゴかったね」

 智輝も驚きの声を出しながら戻ってくる。

 三人が揃ったところで、隼人達はダンジョンの主を目指して歩みを再開した。

「ここまでが地図に書いてあって、ここから先が地図にない道だよ」

 碑文の廻廊の道を歩いていると、隼人は振り返って二人にそう説明した。

「おお、ならダンジョンの主までもう少しだね」

 おー!と、拳を突き上げる伊織に釣られて、隼人と智輝も拳を突き上げる。

「残りあと少し、張り切って行こう!」

 隼人達は元気よく地図にない道へと踏み出した。



 あれから幾度かの戦闘が有りはしたが、難なくそれを退けると、隼人逹は遂に碑文の廻廊のダンジョンの主が居る最奥の部屋へと到達する。

「ここも大きな門だなー」

 智輝ははじまりのダンジョンの時と同様に、ダンジョンの主の部屋の前に設置されていた巨大な門を、ぽかんと口を開けて見上げた。

「ほら、行くよー」

 そんな智輝を置いて、隼人と伊織はダンジョンの主の部屋へと足を踏み入れる。

「あっ、待って!」

 そんな二人に、智輝は慌てて後を追いかけた。

 碑文の廻廊のダンジョンの主の部屋は、奥に巨大な碑文が在り、左右には道端に在った碑文と同じような大きさの石が並んでいたが、他には大木が点々と立っているだけだった。

「あれ?ダンジョンの主は?見当たらないけど、誰か先行してたのかな?」

 キョロキョロと部屋を見渡しながら不思議そうな声を出す智輝。

「そうなら復活するまで少し待たなきゃいけないけど……」

 困ったように呟く伊織。

「…………んー………?」

 隼人は部屋を見渡しながら違和感のような引っ掛かりを感じるが、それが何なのか理解出来ずに眉を寄せる。

「どうかした?隼人君」

 そんな隼人の様子に、伊織は首をかしげて問いかける。

「んー、この部屋何か変な感じがするんだよね」

 隼人はもやもやする気持ちに顔をしかめながらも、何が気になっているのか、その正体を探るために注意深く部屋中に視線を巡らす。

「それにしてもこの部屋、碑文と木しかないな、はじまりのダンジョンでは台所だったけど、この部屋は何の部屋なんだろう?」

 智輝は部屋を見回すことに夢中で、隼人の様子には気がついていないようだった。

「………何の部屋、ねぇ……」

 智輝の言葉を呟きながら、隼人は天井へと視線を向ける。

「なんだ、あれは?」

 隼人は目を細めると、警戒するように呟いた。そこには天井ではなく、今隼人達が立っている地面をそのまま反転してくっつけたような世界が広がっていた。

「うわ、どうなってるのこれ!?」

 隼人の声に釣られて上を見た伊織が、驚愕の声をだした。智輝も天井を見上げて「おぉぉ」と驚いていた。

「………なるほど、ということはおそらく、ふむ……」

 隼人はそう言ったきり目を閉じて黙考する。そんな隼人の様子を、緊張した面持ちで伊織はじっと見詰めていた。

「早くここから脱出しましょうか、どうやらここは異空間のようですから」

 隼人は目を開けると、奥にある巨大な碑文へと歩み寄る。

「異空間?」

 隼人の隣に並びながら、伊織は気になった言葉を質問する。

「どうやらこの部屋に入ったと同時に、こっちの世界に飛ばされたようですね」

 隼人の答えに、伊織は意味が分からないというように首をかしげた。

「創られた世界、この場合は創られた部屋へと転移させられたみたいだね。分かりづらかったら幻覚を見せられている、とでも解釈してくれればあながち間違ってはないと思うよ」

 隼人はそう話ながらも、何かを探すように巨大な碑文を見上げる。

「うーん、なんとなく分かった気がする」

「それで上出来だよ」

 伊織の言葉に満足げに頷く隼人。

「えっと………あ、あった」

 隼人は巨大な碑文の高い位置に彫られている文字に触れようと手を伸ばすが、高過ぎて触れられず、諦めて魔法で浮遊することにした。

「この文字に触れれば……」

 隼人の手が碑文に彫られた一文へと触れた瞬間、

「うわっ」

 グラグラと部屋が揺れ出したかと思うと、ぐにゃりと世界が歪み、急に隼人達はふらふらとしだして足下がおぼつかなくなり、そのまま意識が遠退いていった。




「ハッ!!」

 ダンジョンの主の部屋の入口で眠っていた隼人達は一斉に目を覚ました。

「………ここは……?」

 辺りを見回した隼人が、状況が理解出来ていない呆けた声を出した時、

「おはよう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 目を覚ました隼人達三人へと、前方から可愛らしい少女の声が掛けられる。

「え?」

 その声で意識がはっきりした三人は、勢いよく起き上がると、三人から少し離れた場所に、声色通りの可愛らしい少女が微笑を浮かべてたたずんでいた。ただそれだけなら、場所を除けば普通の可愛らしい少女だと思ったかも知れないが、その少女が半透明なうえに左腕の肉が無く骨だけでは、さすがに警戒せざるを得なかった。

 隼人はその少女へと慎重に声を掛ける。

「君は……誰だい?」

 隼人の問いに少女は楽しそうな顔をすると、

「お兄ちゃんには何に見える?」

 そう質問で返してきた。

「それは……」

 隼人は少女の問いに言葉を詰まらせる。明らかに普通の少女ではないが、かといって今まで戦ってきたような異形のモンスターとは違った見た目と、はじめてのこうして意志疎通が可能な敵であることが混乱を助長した。それでも、異空間から帰ってきて場所が変わっていないのであれば、その答えに辿り着くのはそう難しくはなかったが。

「………君は、ここのダンジョンの主、かい?」

 窺うように答えた隼人に、少女は変わらず楽しそうな顔で頷いた。

「正解だよ、お兄ちゃん!それで、お兄ちゃんたちはワタシを殺しに来たの?」

 少女は楽しそうな顔の中に、僅かに試すような微笑を加える。

「……あ、ああ。僕達は君を倒して、攻略の証を手に入れないといけないからね」

 見た目が少女だからか、それとも直接的に「殺すのか?」と、問われたからか、隼人は苦しそうにそう答えた。“倒して”の部分に変に力が入ってしまったのも、その辺りが原因かもしれない。

「そっか、お兄ちゃんたちはあのお姉ちゃんと違ってワタシを殺しに来たのか。悲しいな、せっかく遊んでもらえると思ったのに」

 少女は見る者にぞくりと寒気を感じさせるほどの、見た目に合わない冷笑を浮かべると、芝居がかった仕草と悲しげな声音で、わざとらしくそう呟いた。

「……あのお姉ちゃん?」

 しかし隼人はそんな少女のわざとらしい仕草よりも、少女の言葉の方が気になっていた。

「フフフフフフ」

 少女は大人っぽい艶のある笑い声をあげると、何もない空間から少女の身の丈以上の長さがある一本の禍々しい雰囲気漂う大鎌を取り出した。

「でもいいよ、お兄ちゃんたちがそのつもりなら、私も同じことしちゃうもん」

 今度は見た目通りの可愛らしい声で物騒な事を言うと、少女は腰を落として鎌を構える。

「それじゃあ、いっくよー」

 隼人達が急いで戦闘態勢をとると、少女は可愛らしい掛け声と共に地を蹴った。

 少女は一瞬のうちに距離を詰めると、一番近くにいた隼人の真横に現れる。

「ッ!!」

 隼人は反射的に身を低くすると、先ほどまで隼人の首があった場所に、ぶおんという風切り音と共に少女の大鎌が通る。

「はや―――」

 隼人は少女の速さに驚愕するも、少女は振り抜いた大鎌を身体を捻って引き戻すと、その勢いのまま斜めに円を描くように、しゃがんでいる隼人の頭を目掛けて大鎌を降り下ろした。

 隼人はそれを一の字に近いくの字になって後方へと全力で飛び退くと、転がりながらも辛うじてその追撃を回避した。

「わぁ、お兄ちゃんすごいね!」

 そんな隼人に、少女は歓声を送る。

「二つ目のダンジョンでいきなり強くなりすぎでしょ」

 隼人は頬を引きつらせながら文句を言うも、すぐに立ち上がって態勢を整える。

「我が敵の武器を凍らせ砕け――『氷砕ひょうさい!』」

 伊織の詠唱が終わると、少女の持つ大鎌が瞬時に凍りつく。しかし、砕けることはなかった。

「へぇー、お姉ちゃんもすごいんだね」

 少女は凍りついた自分の武器を見上げて感嘆の声をあげる。

「でも、これじゃ足りないよ」

 少女がそう言うと、少女の手にする大鎌が僅かに振動して氷が砕け散る。

「ね?」

 少女は誇らしげな笑顔を伊織に向ける。

「ッ」

 そんな得意気な少女の顔に、伊織は悔しそうに下唇を噛んだ。

 少女の意識が完全に伊織の方へと向いている隙に、隼人は密かに短剣の先から炎の刃を伸ばすと、槍のように少女の胸を貫かんとするが、カキンという硬質な音を響かせて、何かにそれを阻まれる。

「危ない、危ない。念のために魔法障壁を張っていてよかったよ。それにしても、急所を無詠唱で死角から突くとか、お兄ちゃんは暗殺が上手いね。もしかして戦い慣れてる?」

 少女は隼人へと顔を向けると、可愛らしく小首をかしげる。

「………生憎と魔力量に恵まれなかったのでね、相手と渡り合えるようになるためには、色々と小細工をろうさないといけないのでね」

 対して隼人は短剣を構え直すと、自嘲するような笑みを浮かべた。

「敵の悉くを切り裂け――『鎌鼬かまいたち!』」

 智輝が静かに詠唱を終えると、少女の全身に風の刃が襲う。

「わぁー!おもしろーい!」

 無数の風の刃を受けて、少女は無傷のままきゃっきゃっと独り騒ぐ。

「なん、だと……!」

 今回はなんとか逃げずに戦闘に加わった智輝は、無数の風の刃を受けて平然としている少女の姿に愕然とする。

「そっちのお兄ちゃんも中々やるね!」

 少女はひとしきりはしゃぐと、智輝へ向けて笑い掛ける。

「それじゃあ、私も頑張っちゃうよ!」

 少女は可愛らしく気合いを入れると、大鎌を構えたままその場でくるくると大鎌とダンスをするように回転する。

「せーの、くらえ!『死の暴風』!」

 少女は言葉と共に、大鎌で伊織を指し示すように回転を止める。すると、大鎌の先から竜巻のような暴風が伊織目掛けて襲いかかる。

「なっ!」

 伊織は咄嗟に障壁を張るも、暴風に破られ後方へと勢いよく飛ばされる。

「伊織ちゃん!」

 智輝が振り返って伊織の名前を叫ぶと、「うぅぅ」と小さく呻く声とともに、緩慢に身体が動いた。

「………その大鎌、本当に君のかい?」

 伊織の障壁を軽々と破った少女の魔法の威力に、目を細めて少女が持つ禍々しい雰囲気を漂わせている大鎌を注視する隼人。

「そうだよー、いいでしょう?黒のおじちゃんに強くしてもらったんだ」

 宝物を見せつけるように大鎌をつきだす少女に、隼人は眉根を寄せる。

「黒のおじちゃん……ね」

 隼人の脳裏に、はじまりのダンジョンで遭遇した黒い人の姿が過る。

「確証はないけど……、とりあえず今の状況は絶体絶命かな、このままだとよくて強制帰還ってところか」

 隼人は少女を警戒しながらも、吹き飛ばされたことで少し距離はあるが、後方に居る智輝と伊織に叫ぶように話し掛ける。

「智輝!伊織さんは無事か?」

「ああ、なんとか自力で立てるぐらいにはな」

「なら二人とも、一旦撤退するよ!帰還魔法を発動させて!」

「わかった」

 隼人の言葉に即答する智輝。

「ふふふ、お兄ちゃんたち帰っちゃうの?」

 可愛らしい声で少女は隼人達へと問いかけるが、その表情は「無事に帰れると思っているの?」と、言わんばかりに挑発的な微笑を浮かべていた。

「ああ、また会いに来るさ」

 少女が大鎌を構えるより少し早く、隼人達は急いで帰還魔法を唱えるが、少女が手近な隼人目掛けて地を蹴った。

 少女は一足飛びで隼人との距離を縮めると、振り上げていた大鎌を隼人目掛けて勢いよく降り下ろす。

「ッ!」

 その相変わらずの少女の速さに、瞬間隼人は覚悟を決めるが、少女の大鎌が隼人の身体を真っ二つにするより一瞬早く帰還魔法が発動する。

「ぶー、間に合わなかった!つまんなーい!」

 降り下ろされた大鎌が空振りすると、少女は頬を膨らませて、誰も居ない部屋で不満を叫んだ。



「お帰りなさい」

 隼人達が危機一髪で帰還すると、ダンジョンの外で待機していた河野先生が静かに出迎えた。

 隼人達は周りを見回して無事に帰還出来たことを確認すると、ホッと安堵の息を吐いた。

「どうかしましたか?」

 河野先生の問いかけに、隼人達は先ほど体験したことを話した。

「なるほど、それは看過できない事態ですね」

 河野先生は理解したと言うようにひとつ頷く。

「怪我はしていますか?」

 河野先生は隼人達の顔を順番に見回す。

「伊織さんが怪我を……」

 隼人のその言葉に、河野先生は伊織の傍に寄ると、伊織の怪我の様子を確認した。

「伊織さんも問題なく動けているようですし、これならなんとか大丈夫そうですね。では、早急に学園へと戻りましょう。幸い今回の探索はあなた達だけですから」

 そう言って、自分と隼人達の足に風の魔法を纏わせると、

「では、走りますよ。遅れないように!」

 学園へ向けて走り出したのだった。

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