金髪ツインテールの女の子
寒くてタイピングする指が凍り付いております。
アンヘルが帰って行ってから翌日。
「んー、今日もいい天気ねぇ。ほら、ぽむ、ぽこも起きて!」
いつまでも毛布にひっついているぽむとぽこを撫でて起こす。
「ぷー」
「ぽー」
イヤイヤと首を振り、毛布に噛み付いている。
何時の間にかどんだけ寝汚くなったのよ、この子達は……。
「いい加減にしなさい! 起きないとごはんあげないよ!」
「ぽぴっ!?」
「ぷぴっ!?」
二匹が飛び起きる。
うん、ちゃんと起きたね。えらいえらい。
気をよくした私は詠唱をし、星の魔力を込めて綿飴状の糸を出す。
うん、今日も綺麗に出来た。
「はい、ご飯だよー」
「ぷ、ぷ!」
「ぽ、ぽ!」
もっちゃもっちゃと食べている二匹を残して私も朝ごはんの準備をする。
昨日アンヘルがアデラおばさんの所からパンを貰ってきていたので、それを焼く。
しばらくしてこんがり焼けたバタートーストを齧りながら、今日は何をしようかと悩む。
まずは掃除して、畑の水遣り……はゴレムスがしてくれているから、掃除してトレントとお話でもしようかな。そして魔術の研究、よし、これで行こう。
そうと決まれば後は行動よね。
お皿を洗い、2階へ箒を持って上がる。
窓を開けて、ベランダへ出て、トレントとゴレムスに挨拶をする。
「トレント、ゴレムス! おはよう!」
「あぁ、おはよう。リン」
「ハニッ!」
まだ少し眠そうなトレントと腕を器用に動かして敬礼をしているゴレムス。
「ハニッ! ハニッ!」
私が箒を持っているのを見咎めたのか、ゴレムスが手を振って、箒で掃くような仕草をしている。
「え? 掃除はゴレムスがやっていてくれたの?」
「ハニッ!」
疑問に思って聞いて見たら全部やってくれていたとの事。
道理で一週間家を空けても埃っぽくなかったのね。
ゴレムスにお礼を言い、箒を片付ける。
「んー……。やる事なくなっちゃったなぁ。とりあえずレインを連れてトレントとお話でもしようかな」
そういえばレインも半ゴーレム化しているって言われたのよね。
だから私の言葉に首を頷いたり考えるような仕草をしていたのね。
とりあえず疑問に思っていた事が解けて、なんとなく安心する。
自立人形とかは良いんだけれど、さすがに髪が伸びるだとか夜中に勝手に動き出す系の某オキクさんのような人形は怖い。
レインを抱いて、1階に降り、トレントの横に座る。
トレントの緑の匂いを胸一杯吸い込む。
「はぁ……。やっぱり落ち着くね。トレントの匂い」
「ほっほっほ。そりゃあ新鮮な空気を出しているからねぇ」
トレントの幹に体を寄せて、レインも座らせる。
「そうだレイン。レインって弟か妹欲しい?」
レインが半ゴーレム化しているというのなら今の状況でも答えられる筈。
人形遣いとしてどこまでできるのかが私の修行の一種の課題でもあるし。
私の問いにレインはコクリと頷いた。
「よし、それじゃあ弟と妹、どちらが欲しい?」
そう聞くと妹の方にコクリと頷いた。
なるほど、妹が欲しいのね。
素材はトレントの枝を貰って、後はノームにお菓子と交換で上質な粘土を貰おうかな。
これからできるレインの妹に想像を馳せ、笑みが浮かぶ。
「っと、その前に剣を直さないとね」
火の魔術はそんなに得意じゃないけれど、まずは折れた部分を溶解して、土の魔術で研磨、かな?
「リン、剣を直すのも良いけれど誰か来るみたいだよ。今空を飛んでいるみたいだ」
まさか敵!?……じゃないよね。害意がある人なら結界に入った時点で鈴が鳴るはずだし……。一応警戒はしとこうかな。
私は詠唱し、レインに魔力を通す。
スックと立ち上がるレインを確認して、トレントが視線を向けている方向を見ると、小さな影が見えた。
青いフードつきのローブを被った箒に乗っている人物。
それは私の上で旋回するとゆっくり降りてきた。
箒から降りて、開口一番。
「おはよーごぜーます。どーも、アンタさんがリンさんですね」
「え、はい。おはようございます。確かに私はリンですが……」
フードを取り、挨拶をしてくれた。
いきなりやってきた妙な人はどうやら私と同じ魔術師見習いのようだ。何故解ったかって?魔術師見習い特有のローブだし、青系統のローブって事は火に弱いか、水魔力を苦手としている筈。
長そうなキラキラした金髪をツインテールで纏め、碧眼の目がハムスターを見つけた猫の様に輝いている。
年も私より一つ二つ上かな?身長は私よりちょっと高いくらい?1,5オルム(150cm)くらいだろうか。
可愛い。紡の体ならば抱きしめて撫でくり回したいくらい可愛い。けれど、リンとしては私の中の何かが警戒をしている。
……ていうか何か私したっけ……?
いや、それよりもこの子誰だろうと思っていると、唐突に自己紹介された。
「アンネローゼ。アンヘルの従兄妹です。どーぞお見知りおきくだせー」
なんとなく力が抜けるような挨拶をされ、戸惑うが、アンヘルがちょっと前に言っていた従兄妹……よね。
そういえばアンヘルの太陽の様な金髪とどこと無く似てる気がする。
「リ、リンです。アンヘルとはいつも仲良くさせていただいてます」
私はなんとか挨拶を返し、この珍妙な来訪者を迎えるのだった。
いつも読んで下さってありがとうございます。ごめんなさい、今回は特に短いです。




