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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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ギルドの存在

「レイミーさんは私の事を本当に良く考えてくれています。正直に言ってレイミーさんほど私の事を理解してくれるメイドさんは居ないと思います」


 街の喧騒が聞こえてくる中でも私の子供特有の高めな声はよく響く。


「ほう、リン様は襲われそうになっても、囲い込まれようとしても、許す、と?」


 セバスチャンさんの絶対零度の視線が今度は此方に向けられる。

 正直足が竦みそうになるけれど、私はセバスチャンさんから何とか視線を外し、足元に落ちたエプロンドレスを拾う。


「私を大切にしてくれる。ただ、それだけで良いんです。レイミーさんの場合はそれがちょっと行き過ぎちゃっただけで咎められる事は無いと思います。……私の星の魔力もありますしレイミーさんとは相性が良すぎるくらいなんです」


「リン様……」


 レイミーさんの長い睫毛に涙の粒がくっついている。

 エプロンドレスをレイミーさんに手渡すと、セバスチャンさんとレイミーさんの間に割り込んだ。


「だから、レイミーさんじゃないと嫌なんです! 私にとって初めて出来た『お姉ちゃん』を取り上げないで下さい!」


 あくまでもレイミーさんは姉として、強調する。恋人?ダメ、絶対!私、ノーマルなんだから!

 じぃとセバスチャンさんの目を見つめる。

 正直この視線は怖い。

 でもレイミーさんはいつも私を気遣ってくれたし、優しくもしてくれた。

だからできるだけ守りたい!


「……主人とは従者に守られるだけの存在であってはならない……」


「へ?」


 いきなり言われたセバスチャンさんの言葉に目が点になる。


「アルカード様の言葉ですよ。主人が従者を守り、従者が主人を守る。リン様はレイミーを守るために勇気を出して私の前に立った。それで充分でございます。リン様は私どもの主人となられる器をお持ちでいらっしゃいますよ」


「へ?」

 

 先ほどと同じ疑問の声が私の口から漏れる。

 なんだか都合が良い様に解釈されているような?


「レイミー。リン様の御慈悲によって今回の件は不問とします。しかし二度目は無いですよ?」


「は、はい! ありがとうございます!」


 レイミーさんがガバとセバスチャンさんに礼を取る。


「お礼を言う相手が違うでしょう、レイミー。それからリン様。リン様はお優しいですが、その優しさが時には貴女を害するモノへと変わることも多々あります。重々お気をつけ下さい」


 ホッホッホと、いつもの様子に戻るセバスチャンさん。

 良かった。色々あったけれどセバスチャンさんはどうやら許してくれたみたいだ。

 ……でもなんだろう、優しさが害するって。

 レイミーさんにお礼を言われ、手を繋ぎ、再び街の喧騒の中に戻る。

 レイミーさんの手はさっき握った時よりもずっと優しく、温かさに包まれるような繋ぎ方だった。


「さて、馬車は露店街の入り口に待機させてありますが、リン様は乗っていかれますかな? それとも歩いていかれますかな?」


 セバスチャンさんから声がかけられる。


「歩いて行きたいです」


 正直露店も見て回りたい。

 私が魔道具を作ったときとか、お菓子を作った時売れそうな場所を見繕っておきたい。


「畏まりました。では行きましょうか」


 そう言われ、色んな屋台風に改造された荷馬車や露店を見て回る。


「露店を出すには商人ギルドへの登録が必要です。登録と言っても露店を出すときの税を支払うだけですけれども。それさえ守れば露店街と呼ばれている場所であればどこで店を出そうとも自由です」


 セバスチャンさんが説明してくれる。へぇ、ギルドとかあるんだ。村に居る時は外に出ないから知らなかったな。

 ママやパパもそんな話してくれなかったし。


「魔術ギルドも冒険者ギルドもありますよ。もしリン様が魔道具をお作りになられるのでしたら、魔術ギルドの方が高い値で引き取ってくれると思います」


 歩きながら淡々と説明してくれるセバスチャンさん。

 すごいなこの人。私が疑問に思った事を口に出す前に言い当ててくる。

 まるでトレントみたい。


「ホッホッホ。リン様はお顔に出やすいですから」


 ……笑われてしまった。うぅ、恥ずかしい。

 露店街を抜け、しばらく歩くと工房街へ出る。

 鉄の焼ける匂いや、陶器を焼く匂いが雑多に交じり合う、そんな場所。


「もうすぐこの間のアクセサリー屋さんですよ、リン様」


 レイミーさんが楽しくてしょうがないと言った様子で浮かれている。


「レイミー、あまりはしゃぎ過ぎないように」


 ホラ、セバスチャンさんに釘を刺された。


「で、でもリン様が輝く為の装飾品なんです。セバスチャン様も嬉しくありませんか?」


 レイミーさんの言葉にふむと呟いて顎を撫でるセバスチャンさん。


「まぁ、確かに。リン様がこれ以上輝くと夜会は大騒ぎでしょうな」


「そうですよね! 楽しみなんです!」


「ア……アハハ……」


 セバスチャンさんとレイミーさんの期待を込めた微笑みに私は苦笑するしかできなかった。

 そんなに大した造詣じゃないと思うんだけれどな。

 確かに紡時代よりは可愛いと思うけれど比較対象がママとか、後は村の同年代ってあまり居なかったし……。

 そもそも私日光に当たるとすぐ赤くなって痛くなるから引きこもりだったしなぁ……。

 あ、今はウンディーネの水の魔術で日焼け止めしているけれど。


「その前にリン様は星の魔力を完全に抑える努力をしないといけませんな。今のままではダンスを誘われた時に相手とずっと触れ合っていたら恐ろしい事になるでしょうから」


 セバスチャンさんが物思いに耽っていた私に釘を刺す。


「はい、そこは頑張ります。完全に抑えないとレイミーさんと離れ離れになっちゃうので」


 私の言葉に繋いだレイミーさんの手に力が入るのが判る。

 ……精神耐性(レジストレーション)を常にかけさせててごめんなさい。

 ちゃんと星の魔力を抑えられるようになるからね、レイミーさん。

 そう新たに決心すると、セバスチャンさんから声がかけられた。


「リン様、アクセサリー屋の工房が見えてまいりましたよ」


 ……うん、がんばらなくちゃね。アルカードさんやレイミーさん、セバスチャンさんが私に期待しているんだから!

読んで頂いてありがとうございます。

誤字・脱字・文法の誤りなどありましたらお知らせくださいませ、勉強させていただきます。

感想などもお待ちしております。

ブクマ・お気に入り等もありがとうございます。

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