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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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天使な妹

「リン様、起きて下さい、リン様」


 レイミーさんの声がする。


「んぅ……」


 気だるい体を起こしながら、レイミーさんを見つめる。


「……おはようございます、レイミーさん」


「はい、おはようございます。と、いってももう夜ですけれどね。夕食の準備がもうすぐ整うのでお呼びに参りました」


 ニコリと微笑むレイミーさん。

 うー、私涎とか出てなかったよね?

 寝顔を家族以外の人に見られるのはやっぱり少し恥ずかしいものがある。


「うふふ、心配なされずとも可愛らしい寝顔でした。思わず記憶水晶球に保存したくなるほど……」


 レイミーさんがウットリと手を頬に当てて身を捩らせる。


「やめてくださいね!?」


 必死で叫んで止めておいた。

 うーん……やっぱり精神耐性(レジストレーション)しても星の魔力効いているんじゃないかしら……。

 少し、いや、かなり心配だ。


「さ、お着替えを致しましょう。セバスチャン様からドレスに着替えさせて差し上げる様に、と命じられております」


「え、またあのコルセットですか……?」


「はい、宜しいですね? リン様」


 ニコニコとコルセットを取り出すレイミーさん。

 見るとテーブルの上に淡い桃色のドレスが置かれている。

 それを着て夕食兼マナー指導の場に向かえと言う事なんだろうなぁ。

 ぽむとぽこはプクスープクスーといびきをかいて寝ている。

 ……私が大声出しても起きない辺りよっぽど安心しているのか大物なのか……。

 うん、たぶん両方なんだろうな。

 そっとベッドを抜け出し、ローブを脱ぐ。

 レイミーさんが手伝ってくれた。

 コルセットをはめられ、ぎゅうと締め付けられる。締め付けても私にはくびれなんてでない体型なんですってばぁ!

 必死の抗議はコルセットの苦しさに押さえつけられてしまった。

 ドレスを着せられ、髪を梳かされる。

 あ、気持ちいい……。


「リン様の御髪はとても綺麗ですね。櫛通りも良くてうらやましいです」


 ほぅと細い目をさらに細められたレイミーさんが言葉を漏らす。


「今夜は髪結い紐は外して、代わりにヘッドドレスを着けてみましょうか」


 なんだか完全にレイミーさんの着せ替え人形だ。

 ……まぁ私も自分のドールを着せ替え人形にしたりしているので文句はないけれど。

 髪をストレートで垂らし、頭頂部に淡い桃色のヘッドドレスを着けられる。


「お化粧はいらないですよね……。リン様は水の魔力を纏っておいでですから唇も肌もプルプルですし……」


 あれ?ウンディーネの日除け魔術ってそんな副次効果もあったんだ。

 少し、いやかなり羨ましそうなレイミーさんの言葉に私は日除けの魔術を教える事を約束して部屋を出た。

 レイミーさんに連れられ、食堂へ向かう。


「……あの方がレイミーの天使ですって……」


「まぁ、レイミーが妹が出来たって狂喜乱舞していた?」


 なにやらメイドさんの声が聞こえてくる。


「……あの、レイミーさん?」


「何でもないんです! 何でも!」


 顔を上げてレイミーさんを見上げる。対するレイミーさんは見ても判るくらい頬が真っ赤になっている。


「……リン様がそれだけ大切、と言う事なんです」


「? 何か言いました? レイミーさん」


 ボソリと呟かれる言葉に反応して聞いて見るけれども、「何でもないんです」と更に顔を赤くされ答えられるだけだった。

 食堂に着くとアルカードさんとセバスチャンさんが待っていた。


「おぉ、リン。随分と可愛らしいではないか。……この度の事、聞いている。精神耐性(レジストレーション)は館の皆にかけてあるので安心するが良い」


「ありがとうございます。そしてこの様なお召し物を用意してくださって感謝の言葉も御座いません」


 ドレスの裾をつまみ、礼をする。

 するとレイミーさんからは感嘆の「ほぅ」という溜息が。セバスチャンさんからは感心の「ほぅ」という声が漏れた。


「リン様、どうぞ」


 セバスチャンさんに椅子を引かれ、座る。


「夜会は主に立食形式なのだがな、いつ何時この様な場に呼び出されるとも限らん。そこでリンの行儀作法を見ておきたいと言うわけだ」


 アルカードさんの声が響き、料理が運ばれてくる。


「何、特に形式ばる必要は無い。お前が食べたいと思い、そういう作法をすれば良い。あまりに駄目な様ならセバスチャンが教えてくれる」


 むむ、私だって全寮制の女子校に通っていたんですよーだ。

 テーブルマナーくらいは心得ています!

 前菜から始まり、現代よりは簡略化されたフルコースが出てくると思う。

 あのテーブルマナーの授業はきつかったなぁ……等とふと思い出す。

 えーと、ナイフの刃先を相手に向けずに背を向けるんだっけ。

 料理とはあくまでも出してくれた相手と料理人に対する感謝を忘れてはいけないっていうのが大前提よね。


「では、太陽と月の恵みに感謝を……」


 アルカードさんの声が響き、食事の前の所謂『いただきます』の代わりとなる印を結ぶ。

 そしてアルカードさんとの会話もかねた食事が始まった。


***


 結果?勿論無事に終わりました。

 セバスチャンさんに「リン様は何処でテーブルマナーをお習いに?」と聞かれたけれど、「家の書庫で知識としてだけは知っています」と答えておいた。

 ニコリと微笑みも添えて。

 でも苦しい……。コ、コルセットがなければデザートのシャーベット残さずにすんだのにー!

 ベッドにあがりぽふぽふと枕を叩く。


「ぽー!?」


「ぷー!?」


 起こされたのが不機嫌なのか二匹が抗議の声をあげたのはまた別の機会に語りましょうかね。

読んで頂いてありがとうございます。

誤字・脱字・文法の誤りなどありましたらお知らせくださいませ、勉強させていただきます。

感想などもお待ちしております。

ブクマ・お気に入り等もありがとうございます。

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