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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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柔らかな時間

「リン様は悪くありません!」


 そう言われてレイミーさんに抱き寄せられる


「わぷっ!」


 胸の膨らみに顔を押し付けられる。

 あの、ちょっと苦しいんですけれど……。


「レイミー、貴女は星の魔力の影響を受けているだけではありませんか?」


 セバスチャンさんが冷静な声で問いかける。


「違います! ……その、さきほどまでは確かにそうでしたけれど……」


 レイミーさんは少しオドオドしてたけれど、私の瞳を見るとハッキリ言ってくれた。


「私はリン様を信じます! お側に居たのは少しだけですけれど、それでもこの子が悪事に加担するような人間には見えません!」


「……精神耐性(レジストレーション)の効果も切れていないですしね……。良いでしょう、信じましょう。ただアルカード様には報告せねばなりません。よろしいですね?リン様、レイミー」


「「……はい」」


 私とレイミーさんの声が重なる。


「では私はアルカード様に報告して参ります。……っと、その前に魔術鳩が帰って参りましたな」


 え!?もう!?……どんだけ速いのよ、セバスチャンさんの魔術隼。

 光輝く鳩……いや、隼が窓ガラスをすりぬけテーブルに乗ると一通の手紙になった。


「どうぞ、リン様」


 セバスチャンさんが近づき、手紙を渡してくれる。

 おそるおそるその手紙を受け取ると、レイミーさんがどこからかペーパーナイフを取り出して手に乗せてくれた。


「ありがとうございます」


 礼を言い、受け取った木製のペーパーナイフで手紙の封を破る。

 あぁ、久しぶりのママの文字だ。ママの匂いだ……。

 なんだか懐かしさで涙が出てくる。


「リン様……」


 そっとレイミーさんが膝に手を置いてくれた。

 頷くと折りたたまれた手紙を開く。


『星の魔力に目覚めたこと、まずはおめでとう、と言っていいのかしら。星の魔力を抑える方法は限界まで星の魔力を使った呪文で魔力を空にするの。続けていけば自然と抑えられるようになるわ。これから苦労するかも知れないけれど頑張ってね。愛しているわ、私の可愛いリン』


 手紙を読み終え、愛されている事に涙が出てくる。


「リン様……」


 見るとレイミーさんも貰い泣きしたのか目の端の涙が浮いている。


「ひっく……えぐ……ママから、星の魔力を抑える方法を教えてもらいました。……これで、御迷惑をかけずに……すむかと思います……」


 言葉に出したらしゃくりあげてしまい、嗚咽が出てしまった。


「ふむ。では問題はありませんな。私共も常時、精神耐性(レジストレーション)を張るわけにもいきませんし助かりました」


 セバスチャンさんがニコリと微笑む。

 少しだけ救われた気がして、膝に置かれたレイミーさんの手を握った。


「リン様、良かったですね」


 レイミーさんもいつものふわりとした笑みを浮かべてくれる。

 手紙を片手で胸に抱き、ポスンとその胸に飛び込んで見た。


「やれやれ……。すっかり懐かれてしまったみたいですな。レイミー、リン様は貴女にお任せします。私はアルカード様に報告に行って参りますので。夕食まで時間があります、その間レイミーはリン様について星の魔力を抑える訓練に付き合ってあげて下さい」


「畏まりました」


 テーブルの上の髪結い紐を取り、私の毛先で結んでくれる。


「あ、ありがとうございます。すみません、御迷惑おかけして」


「良いのですよ。それに……もし私に妹が居たらこんな感じじゃないかしらと思いまして」


 ふふと花が咲くような笑顔を浮かべたレイミーさんは本当に可愛いと思ってしまった。

 うーん……。私そっちの気は無い……!と信じたい。たぶん、きっと、おそらく。


「さ、早速訓練を始めましょうか。精神耐性(レジストレーション)も効果はまだ大丈夫ですし、このレイミー何でもお手伝いしますよ」


 フンムと両手を前で合わせお任せ下さいといったポーズを取る。

 そうね、時間も惜しいし頑張らなくちゃ!


「じゃあ限界まで魔力の糸を出します。あ、もし星の魔術を込める星石なんかがあればお手伝いしますけれど」


「あぁ、大丈夫ですよ。この館はアルカード様の魔力で灯りを全て補ってますので」


 そっか、それならぽむとぽこのご飯にもなるし、大丈夫かな。

 そう考えて、詠唱をし、さきほどの綿飴状になるように星の魔力を込めた糸を紡ぐ。


「ぽ!」


「ぷ!」


 ぽむとぽこが嬉しそうな声を出す。

 どうしよう、私のせいでぷにぷにのぽよぽよお腹にならないか心配だ。


「ぽむ、ぽこ、食べ過ぎて太ったりしないでね? 肥満は万病の元なんだから」


「ぷぷー!」


「ぽぽー!」


 フルフルと首を振る二匹。

 え?いくら食べても大丈夫って感じの返事だ。

 なんだろう、冬眠前の熊みたいなものかしら。


「……綺麗ですねぇ……」


 レイミーさんのうっとりとした声が響く。

 今私の前には銀色の綿飴が二つ。それをもっちゃもっちゃと食む二匹。


「レイミーさん、もし星の魔力を抑えられるようになったら髪結い紐編んであげましょうか? あ、それともホワイトプリムの方が良いでしょうか」


「本当ですか!? それは是非お願いしたいんです! リン様から……手作り……」


 ものすごくデレーっとした表情になってるけど精神耐性(レジストレーション)効いてるよね!?まさか魔力濃度違いすぎて効果が無くなってるとかないよね!?

 その後、魔力が尽き、糸の一本も出せなくなると猛烈な眠気が襲ってきた。


「大丈夫ですよ、ゆっくりお休み下さい。お食事の前には起こして差し上げますから」


 ベッドに寝かされ、布団を優しくかけられる。


「うん……。ありがとうレイミーさん。……私に、お姉ちゃんがいたらこんな感じなのかな。大好き……お姉ちゃん……」


 ニコリと微笑み、魔力切れ特有の意識の回らない思考で何を言ったかも定かじゃないけれど、その後すぐにレイミーさんが『天使の妹が出来た!』と館中に言いふらすのはまた別のお話……。

 あれ、私またやらかした……?


読んで頂いてありがとうございます。

誤字・脱字・文法の誤りなどありましたらお知らせくださいませ、勉強させていただきます。

感想などもお待ちしております。

ブクマ・お気に入り等もありがとうございます。

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