絡みつく蜘蛛糸
(チョイ百合回です)
どういう状況?これ
ベッドに押し倒され、私の上には息を荒げるレイミーさん。
えーっと……。ウンディーネもそうだけれど私はそっちの気は無いんですけれど……。
両手を押さえつけられているけれどベッドの上なので痛みは無い。
その手がいつのまにか私の指に絡み、所謂恋人繋ぎの様な状態になる
レイミーさんの手は熱く、熱に浮かされたように力が篭っている。
ぽむ、ぽこは!?
かろうじて回る首をグリグリと動かして視線を下に向けると夢中でもっちゃもっちゃと銀色の綿飴を食べる二匹がいた。
……これは駄目そうね。
「レイミーさん……? あの、離してください」
「お断り致します」
即答だよ!?即答で答えられたよ!?
「あぁ……。その怯えた表情も、不安げに揺れるサファイアの様な瞳も、ベッドに拡がる銀の髪も全て素敵で御座います。私はこの銀の髪……。いえ、銀の蜘蛛糸に絡まった蝶で御座います。リン様、どうぞお好きになさって下さい……」
いやどう見ても獲物にのしかかる蜘蛛って感じのレイミーさんだから!私が必死にもがく蝶だから!お好きになされる状況だから!
首筋をペロリと舐めあげられ、体中にぞわりとした感触が走る。そこはアルカードさんに血を吸われた場所……!
もしかしてレイミーさんも吸血鬼!?いやまさか。日中に出歩いてたし……。
「御労しい……。アルカード様に血を吸われたのですね……。私が癒してさしあげます」
いや、鼻息荒く言われてももう治ってますから!
いやー!たすけてー!おかーさーんー!
「精神抵抗!」
私の祈りが通じたのか力強い響きの声が聞こえた。
「あら……? 私は何を……? リン様?」
レイミーさんが呆けたように私を見下ろす。
良かった……。正気に戻ってくれたみたい。
じゃあ先ほどの声の主は?
と思って扉の方を見るとセバスチャンさんが立っていた。
どうやらレイミーさんを正気に戻す魔術をかけたのはこの人らしい。
「さて、リン様、レイミー。何故この様な事になっているのですかな?」
怖い!怖いよ、セバスチャンさん。
底冷えのする声がベッドに押し倒された私とレイミーさんにかけられる。
ぽむとぽこは……。あ、もう食べ終わったのか満足したように舌なめずりしてる。
「も、申し訳ありません! 何故かリン様を見た瞬間、私だけのものにしたくなって……! 私はなんという事を……!」
フルフルと微かに震えているレイミーさん。その細い目の端には涙が浮いている。
そりゃ当然だよね。主人の客を感情のままに押し倒して手篭めにしようとしたんだから。
その手篭めという事実と想像をしてしまい、ボフンと私の顔も赤くなってしまった。
でもいつまでもこのままというわけにもいかない。
「あの……。レイミーさん、私の上から退いて頂けませんか? 全てお話致しますので」
「あ、は! はい! 申し訳ありません!」
飛び退る様にガバと跳ね起き、腰を90度曲げて詫びる。
私も体を起こし、ベッドの上に腰掛ける。
さて、何から話そうか……。
その考えに私は首を振る。
「ここは実際に見てもらった方が良いですね。お二人とも精神耐性の魔術を自分にかけておいて下さい」
二人とも頷いて、精神耐性の魔法を自分にかけるのを確認してから、詠唱をし、星の魔力が込められた銀糸を指から出す。
その様子に二人とも驚いている様子だったけれど、精神耐性のおかげか先ほどのレイミーさんみたく理性を飛ばすことは無かった。
「ぽ!」
「ぷ!」
私が出した糸に早速ぽむとぽこが飛びつくのはこの際気にしない。
「見ての通りです。私は魔力を無から形に残せる体質の持ち主です。そしてこの使い魔達は私の魔力か高純度の魔力が無いと生きていけません。先ほどのレイミーさんは私が星の魔力を形に残して糸にした場面を偶然見られてしまい、理性が飛んでしまったのだと思います……」
ここまで一息に言い、セバスチャンさんとレイミーさんの様子を見るとどちらもが驚愕していた。
「……ここまでの高純度の星の魔力は初めて見ました……」
「……これは……悪用すれば傾国も自由自在になるでしょうな……恐ろしい」
一歩退かれ、奇異の視線が向けられるのを感じる。
その視線に耐え切れず、私は下を向いた。
しばらくの沈黙の後、その静寂を破ったのはセバスチャンさんだった。
「……それではリン様。アルカード様を星の魔力で魅了したと言う事ですかな?」
部屋の温度が氷点下になるほどの声が響いた……。
「ッ……! 違います! アルカードさんに会うまでは無の魔力……。つまり高純度の魔力の糸しか出せませんでした! 出せるようになったのは今朝の事です!」
弁明をする為に、髪結い紐を外し、テーブルの上に置く。
「……それが、証拠です。その髪結い紐は私の魔力糸で災厄避けの加護の魔術陣を編みこんでありますが、それ以外は到って平凡な髪結い紐です……」
ふむ、と顎を撫でるセバスチャンさん、
「拝見しても……?」
セバスチャンさんの声にどうぞと答え、下がる。
「記憶感応!」
セバスチャンさんが物質に込められた記憶や記録を引き出す魔術を唱える。
……詠唱破棄して多属性の魔術、しかも高位の魔術を使えるってどんだけ化け物なのよ、と思ったけれど口には出さない。怖いから。
「ふむ……。どうやら本当の様ですね。しかし、どうしましょうか……」
再び静寂が部屋に訪れる。
「あの……。セバスチャン様……」
しかしそれを破ったのはレイミーさんだった……。
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