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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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困ったときのセバスちゃん

「できた!」


 レインのドレスアーマーを縫い終わり、新しく着せてあげる。

 今度は黒をモチーフにした色合いで膝下までのロングスカートとなっている。

 その上からハーフプレートメイルをつければ完成だ。

 ほつれた髪も梳いてあげなきゃね……。

 ブラシでレインの髪の毛を梳く。


「今日はおつかれさま、レイン」


 レインを労わるように優しく髪を梳いて、語り掛ける。

 レインも心なしか、嬉しそうな表情を浮かべている。

 いや、人形だから表情なんてないんだけれど。

 光の加減かな?


「ぽ」


「ぷ」


 ぽむとぽこがみょんみょんと跳ねてくる。


「ぽむとぽこも言いつけ守ってちゃんと家の中に居たね。エライエライ、いいこいいこ」


 針を片付け、椅子に飛び乗ってきたぽむとぽこの頭を撫でる。


「ぷー」


「ぽー」


 気持ちよさそうに目をつむり、されるがままになっているぽむとぽこ。

 しばらくもふもふとしているとぐでーんととろけてしまった。


「二匹ともそんなに撫でられるのが好き?」


 ふふと笑って問いかけてみる。


「ぷー……」


「ぽー……」


 ぼーっとした返事が返ってきた。


「明日も忙しくなりそうだし、今日は寝ようか」


 ぽむとぽこに声をかけ、2階にあがるとみょんみょんと付いて来た。

 ネクタルのおかげで魔力は回復したとは言え、体と精神的な疲労まで回復したわけじゃないのだ。

 お風呂入りたかったけれど、明日でいいや……。

 正直それどころじゃない。

 ぽむとぽこのもふもふに包まれ、ベッドに入るといつのまにか泥のような眠りに誘われていった。


***


 小鳥が鳴き始め、朝の訪れをつげてくれる。

 さて、今日は朝一でやることがある。まずはお風呂だ。

 セバスチャンさんが来る前にお風呂は入っておきたい。

 ベランダに出て、ゴレムスに声をかける。


「ゴレムス、お風呂に水張ってくれないかな?」


「ハニッ!」


 承知したという風に返事をして、井戸からズゴゴゴゴゴと水をくみ上げる。

 ……いつも思うけれど、あの中身どうなってるんだろ。


「ハニホー!」


 あ、ゴレムスが呼んでる。お風呂に水を入れてくれたみたいね。

 階下に下り、ゴレムスにお礼を言う。


「ありがとうね、ゴレムス」


「ハニッ!」


 火の魔石を取り出し、風呂釜に入れ詠唱する。

 そろそろ魔石に魔力補充しなくちゃいけないかなぁ。

 まだ二、三回は使えるだろうけれど。

 パジャマを脱ぎ、髪と体を洗い、沸いたお風呂に髪をあげて入る。


「はふぅ……。朝のお風呂って幸せ……」


 まるで老人みたいな事を言ってるなと可笑しくなってしまい、クスリと笑う。

 少々ぬるめのお湯なのでこのまま寝てしまいたい欲望がムクムクと沸き立ってくるがそういうわけにもいかない。

 セバスチャンさんが来るのだ。たぶん10時くらいだろう。

 その前には髪を乾かしておかなきゃならない。

 長いとこういうとき不便なのよね……。

 ママに綺麗な髪だからと伸ばすように言われたので未だにそれを守っている。

 まぁいまさら切るつもりもないけれどね!

 温風扇とタオルでわしゃわしゃと乾かし、人心地つく。


「ふぅ……。良いお湯でした」

 

 水を入れてくれたゴレムスに感謝しないとね。

 ローブを着て、トレントに挨拶をする。


「トレント、おはよう!」


「やぁ、おはようリン。今日も良い天気になりそうだよ」


 う、良い天気ということは日光が……。

 そうだ!ウンディーネに教えてもらった魔術があるっけ。

 さっそく詠唱してみる。

 ふわりとなにかに包まれる感触の後、体に薄い膜がはったような感じを覚える。

 ウンディーネ直伝の日除けの魔術だ。


「おや、リンは太陽が苦手なのかい?」


 トレントが意外そうな声をあげる。


「うん、あまり長く当たってると肌が赤くなっちゃうの」


「そうかぁ、それは辛いねぇ。日光の中で日向ぼっこができないというのは」


「うん、でもウンディーネに教えてもらった魔術があるから今はできるよ!」


 嬉しそうにくるくると回る私をトレントは眩しそうに見つめる。


「それなら今度、私と日向ぼっこでもしようか。なに、魔術を使わなくても日除けくらいにはなるよ」


「うん、そのうちね!」


 トレントと日向ぼっこの約束をし、空を見上げると遠くに四角いものが見えた。

 もしかしてセバスチャンさんかな?

 しばらく見つめているとどんどん大きくなる。案の定スレイプニルを連れたセバスチャンさんだった。


「おはようございます、リンお嬢様。金斬虫(かなきりむし)を討伐なさったとかで。流石でございます」


 スタッと音が鳴るような動作で目の前に降り立ち、お辞儀をする。


「あ、おはようございます。あ、でも討伐したのは私じゃなくアルカードさんで……」


「どちらでも同じことではありませんか。さ、リンお嬢様。金斬虫(かなきりむし)の死骸は……?」


「あ、セバスチャンさん。お嬢様とつけるのはやめていただけませんか。私は普通の庶民の子供ですし、それにまた勘違いで攫われるのも嫌ですから……」


 ふむ、と顎に手を当てて考えるセバスチャンさん。


「それもそうですな、ではこれからリン様と御呼び致しましょう」


 ……正直様付けも過ぎるような気がするけれど、まぁお嬢様よりましかな。

 そう考えて、セバスチャンさんとスレイプニルが牽く荷馬車を金斬虫(かなきりむし)が倒れている場所に案内するのだった。


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