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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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アルカードの申し出

「ふぅ、サッパリした」


 お風呂からあがり、寝巻きに着替える。

 ちなみにこの世界のお風呂はどうやって沸かすのかと言うと、火の魔力を込めた石を風呂釜に入れて詠唱するだけ。

 もちろん魔法が使えない時のために薪で沸かす事もできるけれど、大抵は魔力石だ。

 ぽむとぽこも洗ってあげようかと思ったけれど、イヤイヤと首を横に振られた。

 水に濡れるのはいいけれど、お湯は怖いらしい。なんだかなぁ……。

 まぁ二匹で毛繕いをし合ってるから割と綺麗好きなのかもしれない。

 ……毛玉とか大丈夫なのかしら。あ、もしかして毛玉が宝石になるとか?……そんなわけないよね。

 食器を片付けたテーブルに着き、髪を荒めに編んだタオルで拭いていると、唐突にノックの音が飛び込んだ。


「はーい」


 ぽむとぽこも警戒していないし、たぶんアルカードさん辺りかな?

 何も考えずにドアを開けるとやはりアルカードさんだった。アンヘルを送り届けたからもう一度寄ってくれたのかな?


「……リン……もう少し君は自分の魅力に気付いた方がいいな……」


 鼻を押さえ、目をあらぬ方向へやるアルカードさん。


「どうかしましたか?」


 小首を傾げ、目線の方向へと移動してみる。


「その……だな、上気した頬と濡れ髪は卑怯というものだ……」


 ワシワシとタオルで顔ごと隠され、拭かれる


「あわ、あ。何するんですか全くもう!」


「それはこちらの台詞だ……」


 私でなければ襲い掛かられても文句は言えないぞ、と付け加えられて。

 こんなちんちくりんを相手にするのはそれこそ変態ぐらいなものだと思うけれど……。


「それで、何の御用ですか? あ、アンヘルを送っていただいてありがとうございます」


「あぁ。そんなことくらいなら問題は無い。ここに寄ったのはな、実は提案があってきたのだ」


「提案……ですか?」


「簡潔に言おう、リン。街へ行ってみる気はないか?」


「街ですか、確かに行ってみたいですけれど。アルカードさん、昼は外に出れないんじゃ……」


 確かに魅力的な提案だ。街への交通路、食物や研究成果の販売路、それらを考えると街へ出るのは最も効率がいい。

 しかし……太陽に当たると灰になってしまう吸血鬼であるアルカードさんは夜しか歩けない。

 そんな事を考えていると、頭を撫でられた。


「……私が夜しか歩けないのを心配しているのか?……優しいのだな、悔しいがそのとおりだ。今は街の別荘に人間の執事がいるので明日、迎えにこさせよう」


 私、そんな心配そうな顔をしていたのかな。表情が顔に出やすいってちょっと気をつけないとかなぁ。

 そんな事を考えているとまた頭をポンポンと撫でられた。

 しかもアルカードさんは膝を折り、視線を合わせてくる。


「魔眼持ちだと言っただろう? トレントほどではないが人がどのような感情のオーラを出しているか分かるのだ。最もリンは一度血を吸ってしまった為に強制の魔眼は効き難くなっているがな。その点は安心して良い」


 ルビーにも似た紅い瞳をまっすぐに向けられ耳まで熱くなる。


「ははは、リンは感情が表に出やすいな。魔眼でなくとも分かるぞ」


 うぅ……男性に免疫がないだけなんですー!アルカードさんに笑われ、さらに顔が熱くなる。

 ……こうなったらウンディーネに言いつけてやろうかしらなどと考えているとアルカードさんの大きな手が頭から離れていった。


「というわけでだ、明日の予定は空けておいてくれると嬉しい」


「あ、は、はい! こちらこそよろしくおねがいします! ちなみに執事さんのお名前はなんと仰るのでしょうか?」


「セバスチャンだ」


 なんだか執事然とした名前だなぁと思ってしまった。


「では明日、な」


「あ、ちょっと待ってください! お礼の前払いというわけではないですけれど焼きリンゴをそのセバスチャンさんに届けてもらえますか?」


 アルカードさんが持ってきたバスケットに子鍋に入れた焼きリンゴをいくつか入れ、蓋をする。


「あぁ、セバスチャンは甘いものが好きなんだ。喜ぶと思う。ありがとう、リン」


 ニコリと微笑むアルカードさんに照れながらバスケットを手渡すと夜闇に溶け込むように消えていった。


「街かぁ……。どんなところなんだろ? あ、お金とか移動手段どうするのか聞いてなかった……」


 慌てて外に出るが、すでにアルカードさんは見えなくなっており、一陣の風が吹いただけだった。


「ま、いっか。なんとかなるでしょう! うん!」


 自分に自信を入れる為に楽観的に考えて、活を入れる。

 そうと決まれば明日の準備をしないとね!


「ぽむ、ぽこ、明日はお留守番お願いね! 魔力糸は多目に出しておくけれど一気に全部食べちゃ駄目よ?」


 モフモフとした手触りのぽむとぽこを撫でて言い聞かせる。


「ぽ!」


「ぷ!」


 分かったといいたげに返事をするぽむとぽこ。

 街に行くならレインも連れて行きたいなぁ……。なんていったって私の護衛だしね。

 でもどうやってここへ来るんだろう。馬車ならアンヘルの村を通るのかな?森の中は無理だろうし……。そういえばアンヘルの村は招かれていない人は入れないんじゃなかったっけ……。

 ベッドに入り、魔力糸を少し多目に出しておく。

 これならぽむとぽこのご飯は十分なほど賄える筈だ。

 それにいざとなったらトレントのリンゴもある。心配は無いといえばうそになるけれど、大丈夫だろうと信じる。

 心地よい疲労感とぽむとぽこの温かさに、私の体は眠りに包まれていった……。


読んで頂いてありがとうございます。

誤字・脱字・文法の誤りなどありましたらお知らせくださいませ、勉強させていただきます。

ご意見、ご感想などもお待ちしております。

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