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ぽむぽこりん -異世界で魔術師見習いやってます!-  作者: 春川ミナ
第一章:ソルデュオルナの魔術師見習い
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ハニーなハニワ

「ん……ふぁ……」


 鳥の鳴き声と陽の光がカーテンの隙間からこぼれている。

 大きなあくびをついて伸びをした。

 両脇のぽむとぽこも目が覚めたようで、くぁと大きな欠伸をしていた。

 一瞬、その大きな口に指を入れてみたい衝動に駆られたが止めておいた。

 ……誰だって寝起きにそんなことをされたら怒るものね。


「おはよう! ぽむぽこ」


「ぽ!」


「ぷ!」


 二匹のご飯になる魔力の糸、ストックはまだあるので、今日は冷蔵庫とゴーレムを作れそう。

 体調も悪くはない……と思う。

 ローブに着替え、一階に下りるとウンディーネは居なかった。


「あれ、ウンディーネ?」


 声をかけても返事がない。

 見るとテーブルの上に書置きがあった。


“湖に居を構える事にしましたの。良ければいつでもいらっしゃい”


 流れる様な文体と青みが濃いインクで書かれていた。


「いつの間に……」


 おそらく私が寝た後だろうけれど……。

 でもウンディーネの家かぁ。少し、いやかなり興味がある。やる事をやったらお邪魔してみよう。


「おはよう、トレント!」


「あぁおはようリン。今日は元気だね。昨日の魔力の流れがウソのように消えている」


 トレントが目を細め、太陽の光が眩しいのか私の方向に目をやる。

 悪いと思ったので光がきつくなさそうな位置に移動した。


「アルカードさんやぽむとぽこが治してくれたんだよ。まぁいろいろとゴタゴタしちゃったんだけれどね」


 吸血鬼嫌いのトレントに少しだけアルカードさんの株を上げておく事にした。


「そうか、あの吸血鬼がねぇ……。それはそうと種ができているよ。魔力を込めやすいようにと思ったら少し大きくなってしまったけれどねぇ」


「わ!? 本当!? ありがとうトレント!」


 昨日言っていたゴーレムの核となるものだ。

 できるだけ自然に還しやすいウッドゴーレムを作ろうと思ってトレントにお願いしたのだ。


「これだけどねぇ……」


 トレントが舌をベロと出して来る。

 その先にあったのは私が両腕で抱えられるのがやっとと言った大きさの種だった……。


「う……。大きい……」


 明らかに落ち込んでしまった私の様子に気づいたのか、トレントが申し訳なさそうな声を出す。


「これじゃいけなかったかい? リンが魔力をこめやすくするにはこれくらい必要だと思ったんだが……」


 トレントの言葉が私の薄い胸にザクリと刺さる。

 えーそうですよ、どうせ魔力の少ないヘッポコ魔術師見習いですとも……。

 地面にのの字を書こうかとしゃがもうとして、ふと良いことを思いついた。

 そういえば昨日ぽむぽこが作ってくれたアクアマリンがあったよね……で、トレントが作ってくれた種を氷冷箱にすれば……!


「いや、トレント! ありがとう! それでちょうど良いかも!」


 コロコロと変わる私の表情にトレントが目を回している。


「そ、そうかい? ならこれはこのままあげよう。また何かあればいつでも言っておいで」


 苔の匂いのする舌の上から大きな種を受け取る。 

 あ、案外軽い。

 見た目はドングリを大きくした感じでヘタの部分がちょうど取れて中身が空洞になっている。

 このおかげで見た目よりは軽かったのね。あくまで見た目よりは、の話だけど。

 土台みたいなもので固定すれば氷冷箱としては十分使えそう。

 在るものを工夫して使用するって日本人の美徳よね。

 ……元、がつくのが悲しいところだけれど。

 それにこれはこれで良かったかも知れない。

 普通、氷冷箱を作るときには土に魔術をかけて形を作るけれど、ぽむとぽこが手助けしてくれたら、今度は土の精霊なんて呼び出しかねない。

 そうと決まったら種を家に置いて、ゴーレムを作らなきゃ。

 種をキッチンに運び込み、二階に置いてあった黒真珠をローブのポケットに入れ、庭に戻る。


「ぽむ、ぽこ、今からゴーレム作るから手を出さないでね」


 ぽむぽこにそう声をかける。


「ぷ!」


「ぽ!」


 と元気の良い返事が返ってきた。

 ……大丈夫かしら。

 ま、まぁとりあえず心配してても仕方が無いので黒真珠を土の上に乗せて詠唱を始める。


「土塊よ、伝え、槌打てる響きと共に集え!」


 詠唱が終わると魔力がゴッソリ抜け出ていくのが分かる。

 土の上に置いた黒真珠の周りに光の円が描かれ、土がそれを囲むようにゴーレムのシルエットがムクムクと大きくなり、映る。

 なんだろう、ここまで大仰なゴーレムになるとは思って無かったけれど、もしかしてぽこの宝石のせい!?

 シルエットだけでも分かるロボットのような姿のかっこよさに見惚れていると突然その光がぐにゃりと歪んだ。


「え、ちょっ……!」


 驚きの声が自分の口から漏れる。

 さっきまで鋭角をもった光と影が溶けて行く。

 それはどんどんと丸みを持ち、まるで砂漠にそびえるサボテンのような形状になった。

 慌てて追加の魔力をこめようとしたけれど、すでに魔力が枯渇してしまってぐんにょりと地面にへたりこむ。

 光が収まった時、そこにはずんぐりとしたゴーレムが居た。

 なんだろう、まるで社会の授業で習ったような……。


「はにほー!」


 節穴のような目と口を開けてゴーレムが叫んだ。


「ハニワだコレー!」


 私の叫びも辺りに響き渡った……。


更新が遅れがちで申し訳ありません。

読んで頂いてありがとうございます。

誤字・脱字・文法の誤りなどありましたらお知らせくださいませ、勉強させていただきます。

ご意見、ご感想などもお待ちしております。

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