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教会と聖女

「リン様は流石なんです! 光の精霊まで縁を繋ぐなんて」


 1階にウィスプとアンネと共に降りたらレイミーさんに感動されてしまった。

 ウィスプも崇められるのは満更でも無いようで、片手で頭を掻いている。


「しっかし、どーしてアンタさんと顔形がそっくりなんです?」


 アンネが問いかけてくる。


「あぁ、私の魔力に引きずられたみたい。本来ならどんな姿にもなれるみたいよ」


 私は答えるとウィスプを見た。彼もウンウンと頷いている。


「へぇ、まぁ光っていう物はあってないようなものですからね。目を閉じれば感じられませんし」


 アンネがその答えに納得する。


「さ、お話はそこまでです。簡単ですが昼食を作りましたんです。ヘーゼルさんも居る事ですし、外で食べましょう」


 レイミーさんがニコリと微笑んで、二つのバスケットを持つ。

 あのバスケットの中が昼食ね。何を作ったんだろう。

 とりあえず、私とアンネは外に出る。

 そこにはトレントとシルフと話すヘーゼルさんの姿があった。


「あ、リン、おかえりー。トレントとこのケンタウルスに聞いてたけれど色々と大変だったみたいだね。それからウィスプも久しぶりー。リンの周りに精霊がいっぱい集まってるねー。ウンウン、良い事だよー」


 え、どうして良い事なんだろう?

 私の疑問にウィスプが答えてくれた。


「女神の力は7人以上の精霊が承認する事によって高められるんす。ぽむとぽこやトレントはまだ精霊未満だから数に勘定されないっすけどね。とりあえずお昼ご飯食べたら光の魔力と水の魔力を修復するっすよ」


「あ、うん。ありがとう」


 私はウィスプにお礼を言い、外に作ってあるテーブルに皆と着く。


「今日はサンドイッチを作ったんです。さ、皆さんどうぞお召し上がり下さい」


 そう言うとレイミーさんはテーブルにバスケットを置き、水差しから良い香りのする液体をコップに注いでくれた。

 これはネクタルの果実水ね。


「わぁ、美味しそうだねー。リンが居ない時もご飯食べさせて貰ったけれどすごく美味しかったんだよー」


 シルフが早速サンドイッチを一切れ摘まんで口に入れる。

 レイミーさん、シルフの胃袋を何時の間にか掴んでいたのね。

 私とアンネとレイミーさんの人間組は太陽と月に感謝の印をしてから各々サンドイッチに手を伸ばす。

 レイミーさん、簡単だと言っていたけれどサンドイッチの種類は多く、卵にチーズ、ベーコンレタストマトと彩りもとても綺麗だ。


「ふむ、これは美味いな。レイミー殿、私まで御相伴に預からせて頂いて感謝する」


 ヘーゼルさんがサンドイッチを食べながら少し熱のこもった瞳でレイミーさんを見ている。

 けれどレイミーさんはニコニコとしたいつもの笑顔でその視線を受け流していた。

 気付いているのかな?いや、レイミーさんああ見えて自分の興味がない事には徹底的に目を向けないからなぁ。

 アンネも気付いているようだけれど、何も言わない所を見ると当人同士の問題だと思っているんだろう。


「そう言えばアンネ、ネクタルの実をレドネット商会に持っていったの?」


 私は気になっていた事を口にしてみる。


「いえ、結局あの後御領主様が立て替えて下さったので大丈夫です。そーいえば何本使いました?」


「魔力ポーションを一個だけ。あれってもう少し飲みやすくなったりしない? ものすごく苦かったよ?」


「無理ですねー。元々薬ってものは苦いもんです。ただ、甘ければもっと売れるんでしょーけどね。そんなポーションが作れたら私は有名人になってるでしょーね」


「そういえば私の糸を持っていったよね? 結局溶かす事は出来たの?」

 

 私は気になっていた事を聞く。


「いえ、無理でした。硫酸でも塩酸でも溶けなかったです。最も、そんなものは飲み薬にも使えませんが」


 あれ?でもぽむとぽこは舐めただけで私の糸を溶かせるよね。前にレインの服を縫った糸を溶かしていたし、今現在も私の糸を食べているし。

 あの二匹が特別なのかしら、それとも太陽か月の魔力を通すと溶けるとか?

 私が難しい顔をしているとアンネがポンと肩を叩いてくれた。


「眉間に皺がよってますよー。魔術師は柔軟な発想が出来なければいけません。一つの事に捉われるのは愚の骨頂ですよー」


「うん、そうよね。ありがとうアンネ」


 私はお礼を言ってバスケットのサンドイッチに手を伸ばす。

 玉子サンドの甘味が私の疑問を溶かすように口の中に拡がった。


「いつもありがとう、レイミーさん。レイミーさんの料理を食べて居る時が一番落ち着くかも」


「あらあら、それは嬉しいんです。それならば腕によりをかけて作らなければいけませんね。夕食も楽しみにしていてくださいなんです」


 レイミーさんが両手を合わせてニコニコと笑みを浮べている。

 その様子をヘーゼルさんが微笑ましそうに見つめていると後ろに居たトレントが口を開いた。


「リン、どうやらアンヘルが来るみたいだよ。アンネが使い魔を飛ばしていたからね。リンが帰って来たのを知ったんだろう」


「あれ、そんな事してたの? アンネ」


 トレントの言葉に私はアンネに問いかける。


「えー、そうです。アンタさんに会えなくて寂しいってメソメソ愚痴を言ってたんで何とかしてやってくだせー」


「メソメソってそれはありえないでしょうに」


「えー、冗談ですよ。だけど、アンタさんも久しぶりに会いたいかと思って使い魔を飛ばしました。それに魔力の調子がおかしいんでしょ? ウィスプがさっき修復するとか何とか。そんなアンタさんをこの家から出すわけにもいかねーです」


 少し過保護に感じるけれども、アンネはアンネで私の事心配してくれてるのよね。

 それに、とアンネは続ける。


「アンジェの荷物も少しずつ運ばなければいけませんしねー。この家に住むのなら色々と必要でしょ? 着替えとか。あの子もノスフェラトゥ化してから成長が遅れてしまったのか随分と小さいままですからねー。ま、御領主様が人間に戻してくれればそのうち成長するんでしょーけれど」


 私はアンジェの事を思い出す。そう言えば私より少し背が低かったっけ。 まぁマリアさんの娘だし、成長したらかなりの美人になるよね、きっと。


「ノスフェラトゥの人間化かぁ……。どんな事をするの?」


「私も詳しくはしらねーですが、月の魔力を使う場合、聖水を飲ませながらじっくりと治療していくそーです。教会では太陽の魔力を強引に使って治すそーですけどね。その場合あまりにも強烈過ぎて灰になる人も居るとか。ま、教会はあまり良い噂を聞きませんね」


 教会か……。確かアンヘルが連れて行かれそうになったのも教会よね。奇跡の子として。うん、あまり好きにはなれそうもないな。


「アルカード様は教会と対立に近い関係ですからね。教会関係者に殺されそうになった事も決定的ですが、アンネ様が仰っていた通り、良い噂を聞かないと言うのもあります。何でも太陽の魔力を持つ子供から強引に魔力を搾取しているとか。あくまでも噂ですが、それで何かを封印していると言う話です」


 教会の封印?なんだろう、魔獣でも封印しているのかな?あ、こういう時に何でも知ってる存在が居るじゃない。


「ウィスプは何か知ってる?」


 私はそう思って話を振ってみる。


「うん? あぁ、教会っすかぁ。ごめんっす、あそこの結界はオイラ達精霊の力を封じ込める結界が張ってあって内部までは解んないっす。特に王都の教会は特に厳重っす。聖女でもあり、女神の生まれ変わりでもあるお嬢さんがもし目をつけられたら良くて封印の材料に使われるかもしれないっすね。勿論生きたまま。……お嬢さんは見目も良いし、悪い意味で愛でられるっすね、多分」


 私はその答えにぶるりと震える。教会か、できるだけ近づかないようにしよう。


「ごめんっす。食事時に話す話題でも無かったっすね」


 ウィスプがペコリと頭を下げる。


「ううん、良いの。私が振った話題だったしね。それよりもウィスプは食べないの? すごく美味しいよ?」


 けれど私の言葉に答えたのはシルフだった。


「ウィスプは光の精霊だからねー。在って無いようなものだから普通に力の象徴として実体を持っているボクらと違って食物を摂る習慣が無いんだよー。だから物を口に入れても美味しいとかそういう事を感じられないみたいなんだよね。魂を得ればまた違うのかな?」


「そうっすね、魂があれば人間に近くなって味覚なんかも備わると思うっす。ただ、それには人間の愛を貰わなければいけないっすね。オイラとしてはこの世界に起こされた原因であるお嬢さんに責任とって貰いたいっすけど」


 そう言ってチラリとウィスプは私を見る。


「ふぇっ!? 私っ!?」


 私と言えば驚いて手に持っていたサンドイッチをボトリとテーブルの上に落としてしまった。


「あはは、まぁ冗談っすよ。見た所ウンディーネやシルフが御執心な様子っすからね。オイラはこの心地良い魔力を感じていられるだけで充分っす」


 ウィスプの言葉に私はホッと一息つく。

 アンヘルとアルカードさんだけでも手一杯なのにウンディーネやシルフ、ウィスプまで加わったら私の身体と心がいくつあっても足りないよ。

 そんな私の心を読んだのかウィスプはニコリと儚げな微笑を浮べて言った。


「さて、魔力の修復をするとしようか」


 あれ?少し喋り方が違う?

 私は疑問に思いつつもウィスプから差し出された手を握ったのだった。

閲覧ありがとうございます。

教会の闇が出てきました。

いつか物語りに関わってくるかもしれません。

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