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第76輪

「あぁ~……」

「よかったわね、9月1日が日曜日で」


 昼時、昼食を済ませたので私は午後のティータイムとしゃれこんでいるわけだけれど、リビングで大量の白紙の冊子を広げながら柚子が唸っている。9月1日、かつ日曜日。言わずもがな明日は2学期の始業式である。


 そう、明日は始業式なのだ。それなのに唸っていると言うことはお約束とも言うべきアレである。


「お姉ちゃーん……、宿題手伝ってぇ……」

「自業自得よ、良いじゃない。今日はWWOが夜までメンテナンスでしょ。思う存分宿題に集中しなさいな」


 やはり柚子の問題ないは全然ダメと同意義だったらしい。まあ何度も宿題に関しての注意はしたのだから放っておくに限るだろう。


 それから、月が変わったのが要因か、WWOが大型アップデートで長時間のメンテナンスに入っている。実は昨日の夜8時頃からなのでメンテナンス時間が24時間を超える可能性もある。


 一部のユーザーが不満を漏らしそう、というかさっき桜姉ぇから愚痴の電話を30分程されたのだけれど……、私にとっては大した問題ではない。


 まあ今回の大型アップデートに幾つか不満が無いこともない。まあアップデートで仕様が大きく変更されるものが多いので当然と言えば当然だろう。


 とりあえず、全プレイヤーに影響を及ぼすのは、ステータスが明確な数値化されることが1番だろう。これまでHP、MPはパーセントで表示されていた。それが数字として表示されるなら管理も恐らく簡単になるだろう。なお、パーセント表示、数字表示は切り替えられるし両方表示することもできるようにするとのこと。自分がやりやすいようにするのが良いだろう。


 後はプレイヤーの強さ目安となるプレイヤーレベルを設定するとのこと。全スキルのレベルの合計がイコールでプレイヤーレベルとして表示されるそうなので、あくまで目安だ。スキルが多ければそれだけレベルも大きくなるし。


 次に、主に生産に関係するものだが、全てのアイテムの評価を10段階に分け、その10段階の基準となるものをこちらには公開されない形で設定し、効果によって品質を分けるとのこと。同じアイテム、同じ評価でも効果が異なることが良くありトラブルが幾つか報告されていたらしい。


 そして、私個人として大きく影響するものがある。それが《魔術・結界》は《魔術エンチャント》に変更されるというもの。魔術に追加効果を付与する魔術、と言えば分かりやすいか。《魔術・結界》のレベルがそのまま《魔術エンチャント》に置きかえられるので確認は必要だ。また、《魔術・結界》は上位の《魔法》の系統に変更されて全くの別スキルになるとのこと。


 後はNPCの行動の解放とか武器の副カテゴリの設定など詳しいことが書かれてないのが2つほど。残りで注目するものと言えば、第三陣プレイヤーの参入である。同時に、第四陣参加以降は常時開放状態にすると発表された。サーバーが安定するのが確認されたらしい。


 その他としては、公式からクエストとグランドクエストの違いが提示されたことと、一応ストーリークエストなるものが実装予定とのこと。


 クエストはNPCからの頼まれごと、グランドクエストは全プレイヤーで対応する、今後実装予定のストーリークエストに関係することのある街を探す事のようだ。


 ストーリークエストはWWO世界に触れる内容にするそうだ。これを進めると色々と出来るようになるらしい。


「今回のアップデートは運営も大胆に出たわよね」

「そうだねー……」


 ギャグマンガか何かだったら確実に口から魂がはみ出てる状態の柚子が投げやり気味に呟く。


「どうせメンテナンス終わったら飛び付くんでしょ。早く終わらせちゃいなさい」

「……がんばる」


 宿題が終わらずにこんな状況とは言っても一応多少はやっていたようで、まあ夕食前には終わるでしょう。


 夕食後、午後8時。柚子はなんとか宿題を終わらせてリビングのテーブルでダウンしている。今は母さんが柚子のためにお茶か何かを用意しているところだ。口から魂がはみ出してはいないので割と早く復活すると思われる。


「ん、メンテナンス終わってるわね……、明日は学校だし、うっかり寝坊でもしたら嫌だからログインは明日にしようかしら」


 それにメンテナンスが終わった直後は接続が遅いとか何とか桜姉ぇが言っていたし。


「え?メンテ終わってるの!?」

「ゲームをするのもいいけど、明日学校なんだから早く寝なさいね」


 私の呟きに反応した柚子を母さんが軽く窘める。父さんは今は風呂に入っているのでこの場には居ないが、仮に居たならまた何か甘いことを言っているのだろう。基本父さんは甘い人だし。


「お風呂空いたぞー」

「はーい」


 柚子が階段を駆け上がって行ったとほぼ同時に父さんがリビングに入ってくる。


「さっき柚子が駆けあがって行ったが何かあったのか?」

「オンラインゲームのメンテナンスが終わったから早く遊びたいんですって」

「ははは。柚子は桜と同じでゲームが好きだなぁ」


 父さんはこんな感じで咎めるようなことはしないので、家族全員から甘いと思われている。まあしっかり者ではあるけれど。


「私はお風呂入ったら寝るわね」

「そうなの?」

「明日遅刻したら嫌だし」

「紅葉は心配性だな」

「柚子がやりたいことを優先しすぎて先のことを考えていないだけでしょ。おやすみ」

「おやすみ」










 次の日、朝7時。基本的に家でごろごろしていたいと考えると学校があることに気分が沈むけれど、子供の仕事とも義務とも言えるので仕方が無し。


「おはよう、紅葉。柚子は起きてないのかい?」

「ここに居ないならそうだと思うわよ。やれやれ」

「朝ごはんまでもう少しかかるから柚子のこと起こしてきて」

「はいはい」


 今降りて来たばかりの階段を上る。階段の往復だけで結構足に来るものがある。WWOと同じくらいの身体能力が欲しいと最近本気で思うようになってきた。


「柚子、今日から学校でしょう。そろそろ起きなさ……なんで貴女床で寝てるのよ」

「んー……?あ、お姉ちゃん。おはよー……」


 ノックしても返事のない柚子の部屋のドアを開けると、柚子が床にうつ伏せで寝息を立てていたので軽く体を叩いて起こす。


「昨日ねー、寝ようと思ったらね……、…………」

「ニ度寝出来るような時間はもう過ぎたわよ。ほら、顔洗って来なさい」

「うーぅ……」


 起こしたと思ったら再び寝息を立て始めた柚子の両脇に腕を通して立ち上がらせると、階段の方へ引っ張りながら立ち上がらせる。


 階段を降りるときは危なっかしかったので1段ずつゆっくりと降りさせる。桜姉ぇが居たころにもそれなりの頻度でこういうことは有ったので一応手慣れては居るのだ。柚子が私より大きくなった辺りから少々厳しくなってきては居るけれど。


 とまあ、そんなことはどうでもいい。とりあえず、柚子もそうだが学校に遅刻することはなさそうで安心した。


「行ってきます」

「行ってらっしゃーい」


 学校までは徒歩だけれど、柚子の中学よりも遠いので早めに出る。幸い、信号は少なく、踏切を挟んだりもしないので普通に出れば普通に間に合う。


「おいーす」

「……」


 玄関前に雄二がいた。


「ちょっとまて、人の顔を見て踵を返すな。玄関しかないぞ」

「いや、何か反射的に」

「そうですか。まあいいや、学校行こうぜ!」

「朝から元気な貴方が羨ましいわ」


 新学期だからかとも思ったけれど、雄二のテンションはいつもこんな感じなので、1カ月ほど経っても良く遊ぶゲームが出来た以外は日常に変化が無いな、とか思ってみる。


「なあなあ、今度WWOでPVPしようぜ」

「昨日のアップデート有ってからまだログインしてないから暫くは無理よ」

「ああ、そう言えばそうだったな。俺もまだログインしてねえわ」

「柚子は床で寝るほどやってたみたいだけれど」

「桜さんが大学に行く前までは夏休みは泊まりで徹夜ゲーム大会とかやってたな」

「ああ、有ったわねそういうの」


 暫くいままでの夏休みの思い出について話しながら歩く。気がつけば学校が見える場所まで来ていた。今までにない夏休みを過ごして暫くぶりの学校だと言うのに特に久しぶりだと言うような感覚は無い。


「じゃあなー」

「はいはい」


 この後、始業式を午前で終えた私は寄り道等をせず真っ直ぐ家に帰るのだった。

約1カ月ぶりの投稿となりますが、今回の話はゲームをしていません。

と言いますのも、ほぼ無理矢理ではありますが新章のようなものを始めようとしたせいです。

構想を練っていたらあっという間に時間が……。


今回の話は新章のための導入と思っていただければ幸いです。




追伸

250万PVを突破しました。

遅くなりましたが、ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

これからも細々と続けて行く予定ですので、楽しんで頂ければ幸いです。

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