第59輪
料理だけで結構時間を使ってしまったけれど、マナポーションは蜂蜜と混ぜるだけなのでそう時間はかからないはず。
一応混ぜる分量は5通りほど考えている。入れる分量は一番多くてマナポーションと半々になる程度だ。蜂蜜はそれ以上にするとポーション自体が飲みづらくなったり、甘味が強すぎて飲むのに向かなくなりそうだからだ。
混ぜる分量を少し具体的にすると、マナポーションを蜂蜜を最初は9対1にする。最終的には5対5まで試すつもりだ。その中で良さそうなものが有れば微調整をしていく。もちろんレシピは全て書きとめるつもりだ。
それぞれの分量を量るのは調理道具の中にある大さじでも問題ないはずだ。とりあえずポーションを作るときにも使う鍋の中にマナポーションを大さじ9と蜂蜜を大さじ1入れて、一応火にかけながら良く混ぜる。多少蒸発して分量が減りそうではあるけれど、ポーション用の瓶に入れるには少し量が多いので大丈夫なはず。
数分後、十分に混ざったと思うので、冷ましている間に別の鍋で8対2の試作改良マナポーションを作り始める。やることは基本的に変わらないので少し退屈に感じるところがあるが、いつもごろごろして潰している時間のこと考えればやることが有る分マシだ。
「製作評価は2、効果は変わらず、不味さが苦さが和らいだ分多少飲みやすくなっただけ、と」
9対1の試作改良マナポーションが飲める温度まで冷めたので瓶に詰め、製作評価などを確認してメモを取ってから飲む。前のようにはならないにしても思わず顔を顰めてしまうような苦さはそのままだ。失敗と言ってよさそうね。
7対3の試作品を作る準備をしながら8対2のマナポーションを火からおろし冷めるのを待つ。
その後、最初に考えた5つの他に結構な時間をかけて色々な分量を試してみた。最初に考えた中では7対3が苦くて少し飲みづらく、6対4が少し甘過ぎるくらいだった。
5対5は蜂蜜が多すぎるせいでマナポーション自体の効力が下がっていた。それから色々と試して見ると6対4ほどだと効果が下がり、7対3くらいなら効果は若干だがあがっていた。
それなら、と。効果が1番高くなるのはどのくらいなのか、試さないわけにはいかないだろう。恐らく、効果が1番高くなる時が1番飲みやすいはずだ。
「マナポーションが744グラム、蜂蜜が256グラム……、効果は134%っと……」
最初の5通りを終わらせてからこれで44回目。今のところマナポーションの効果は上昇を続けている。しかし、液体をグラム単位で扱うのは集中力がいるせいで大分疲れてきた。
「マナポーションが745グラム……、蜂蜜が255グラム……。効果は135%ね」
ちなみに、効果の詳細が分かるのは放置状態になっていた《研究》スキルのおかげだったりする。必要になったりするところが非常に微妙なところではあるけれど、地味なところで役に立つのがなかなか面白い。
「マナポーションが746グラム、蜂蜜が254グラム。効果は……134%。なるほど」
46回目で効果が下がった。つまり、マナポーション745グラム、蜂蜜255グラムの組み合わせが1番良いと言うことだろう。
しかし、これを作るために大量の蜂蜜とマナポーションが必要になってしまい、そのほとんどが無駄とまでは行かないが、使わないとなるとどうにももったいない。それに、足りなくなった分は買い足したり作ったりもしたので結果的に料理よりも時間とお金がかかってしまった。
完成品は量産するとして、それまでに作った試作品たちは捨てずに取っといておく。勿体ないのもそうだが、何かに使えるかもしれない。
完成した改良マナポーションを瓶に詰める。量にして1000グラムだが、瓶に詰めると結構多い。しかし、少し余ってしまうので余りが出ないようになるまで生産量を増やす。結果、32本まで増えてしまった。
「……疲れた」
まだ夜にはなっていないけれど、長時間の作業で疲れてしまった。一旦ログアウトすることにする。そろそろ夕食を用意しないといけない時間でもあるし。
「ん……」
VRギアを外して体を起こす。時計を見ると現在6時のようだ。外は夕日に照らされてオレンジ色に染まっている。少しくらいなら休む時間が有りそうだ。夕食の準備の前に少し寝よう。
「……ちゃん、お姉ちゃん、ご飯だよ」
「……」
体を揺すられ目が覚める。そういえば夕食の準備をする前に少し休もうと思って寝ていたんだったわ。
「あ、やっと目が開いた。もうご飯だよ」
「……え?」
「お母さんがさっき帰ってきてご飯の準備してくれたよ」
「い、今何時?」
「そろそろ7時半」
「……そう。すぐ行くわ」
内心、母親が帰っていると聞いて相当遅い時間かと思って焦ってしまったけれど、そうでもなかったようだ。仕事に行くのは朝早く、家に帰ってくるのは遅かったり早かったりとまちまちだ。
仕事に行く時間が早い時は5時頃で、帰ってくるのが午後9時ごろになるときもあるので、過労で倒れたりしないか心配なところもあるが、今のところは大丈夫らしい。
「お帰り、お母さん。今日は早かったのね」
「あら、ただいま、紅葉。寝ていたのかしら、少し寝癖ができてるわ」
「夕飯済ませたらお風呂入るから大丈夫」
「そう?なら良いけどね」
柚子が私の部屋から出た後、少ししてからリビングに行くと柚子とお母さんが既に夕飯を食べ始めていた。私の寝癖に気がついた母さんは洗面所に櫛でも取りに行こうとしたのか、椅子から立ち上がろうとしたので適当にごまかして私も椅子に座る。
母さんは仕事が週4日程度ではあるけれど、それでも疲れているだろうから自分で何とか出来るものに気を使わせるのも悪い。父さんは……まあ、うん。殴り倒してもピンピンしてそうだから心配しなくても大丈夫だろう。
「それにしても、疲れて寝るほど紅葉がゲームをするのも珍しいわねぇ」
「そうね、確かにそこまで疲れるほどやったことなんてほとんどないし」
「紅葉お姉ちゃんもゲームの面白さが分かってきたんだよ。最初のころは色々言ってたけどなんだかんだで楽しんでるでしょ」
「まあね。もう少しマイペースに楽しみたいところではあるけれど」
今のところ柚子と桜姉ぇに振りまわされたりすることが多いし。勘ではあるけれど、今回のPVPも何か仕組まれてそうだし。普通に考えて桜姉ぇが色々とルールを決められたのもおかしいので、いつものことではあるけれど何か別に目的がありそうだとは思っている。
「柚子。桜にも言っておいてほしいんだけど、紅葉と一緒に遊べるのが楽しいからってあんまり振りまわしちゃダメよ?」
「……うん、桜お姉ちゃんにも言っておくね」
若干間が開いた時に柚子の目が一瞬逸れたのでどうやらもう少し振りまわされそうだ。何か色々と予定を勝手に立てているに違いない。
「ごちそうさまー!」
「お皿は台所に置いておいてね」
「はーい」
いつも通り食べるのが速い柚子が最初に席を立つ。今さっき母さんに言われたことをサクラ姉ぇに伝えると言う目的もあるのだろうけれど、もしかしたら攻略に手間取っていたところのクリアの目処が経ったのかもしれない。
「ごちそうさま」
「紅葉」
「何?お母さん」
「桜達に遠慮しないで、やりたい事とかははっきりと伝えたほうが良いわよ?桜は何でも自分で何とかしようとするし」
……母さんが何を言いたいのかはよく分からないが、桜姉ぇに誘われたからと言って必ずしもそれに付き合う必要はないと言うことだろうか。どちらにせよ、PVPが終わったら暫くは自分のやりたいように進めるつもりなのでその辺りは問題ない。
「……うん」
さて、PVPまでみっちりレベル上げね。




