表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/85

第4輪

「ごちそうさま」

「ごちそうさまー」


 仕事に行っている親の代わりに昼食を用意し、食べ終わったところで食器を片づけてから自分の部屋に戻る。そして、ベッドに寝転がりVRギアをつけてログイン。まずは戦闘でどのくらいまでスキルレベルが上がったか確認かしら。


 軽い浮遊感と共にログイン、現在はゲーム内時間で昨日ログアウトしたベンチにいる。


「さて、どうなったかしら」


 結果は、《大剣》が12、《蹴り》が4、《身体能力強化》が8、《警戒》《見切り》の二つが6、《投擲》が4、《魔術・闇》が5、それから《暗視》と《魔術適正》が2になったようだ。思ったより伸びていたようで安心した。そして、《大剣》が10を超えたので新アーツの習得とSPが3ポイント手に入った。《警戒》と《見切り》は効果範囲が若干広まり、《魔術・闇》は《ダークネス》が追加された。ひとしきり確認した後、SPを1使って《建築》を習得。スキルはここで一旦とじる。


「さてと、とりあえず街を回りましょうか」


 今日の本命は戦闘ではなく、町を観光することだ。もしかしたら意外なところに良い店があったりするかもしれないし、街のマップも埋めておきたい。街のマップは埋めることで建物の場所も記録されるので行きたいところの場所がすぐに見れる便利機能があったりする。


「街の北側はユズ達に連れられて見たからもう埋まってるし、今日は西側にいってみようかしら」


 街の北側には冒険に必要な消費アイテム、生産者に必要な生産器具が売っているのでこの辺はもう見ている。南側は人が多いから近寄りたくないし、東は酒場などが多く煩いので西側に行くことにした。西側はこれと言って目立つような物は無いらしいが、行ってみたプレイヤーの話によると趣味的な物を楽しむなら行ってみるといい、と掲示板に書き込みがあったのも一つの理由だ。


 西側に足を向けて進むこと暫く、少しずつ日用品のようなものが売りだし始める場所に来た。何とも芸の細かいことに、皿や箸、フォークはもちろん、洗面器、櫛、歯ブラシなどもある。主にそれらを買っているのはNPCだったりするが。


「…なんか益々現実感があるわね。そのうち間違えそうで怖いわ」


 そんなことを考えつつ歩いていくと、また違った店が目に入った。その店の棚にはタイトルだけが見えるように複数の物が並んでいる。本屋だ。ゲームの世界であるが故に、文字を読むことはできないがどうせ言語習得のスキルもあるでしょうね。本屋を素通りして、次の店に目を止める。食材が売っている。このゲームには満腹度と言う概念は今のところないが、味を感じることができるのは泉で溺れかけた時に呑みこんでしまった水で確認済みだ。せっかく料理スキルもあるのだからそのうち利用することになるだろう。


「結構色々あるのね」


 その後、おもちゃ屋、喫茶店、屋台などを眺めながら進んでいると、今度は色とりどりの花がある店が目にとまった。


「あ、クコラの実のことを忘れていたわ…。でも植木鉢で植えるには少し小さいのよね。どうしようかしら…」


 植木鉢が小さいなら、畑でやればいいかもしないが、この街に畑があると言う話は聞いていない。それに、人目につかないところにそのうち拠点を立てるつもりなのに街に何か作ってしまっては色々と面倒なことになる。いや、何でもかんでも面倒って言ってる私が悪いかもしれないけれど。ここはクコラの実を育てるのは保留にして、まだ使ったことのない生産スキルのレベリングをするべきね。そうと決まれば、早速何からやるか考えないと。


 《薬師》は昨日ポーションを作ったのでスルー。《細工師》は金属や骨などを装飾品に加工するスキルだが、素材が無いので無理。《鍛冶》は設備が無いのでダメ。《建築》は建てる為の木材と、土地が無いのでこれもダメ、《木工》は弓や杖を作る他に家具も作れたりするけれど、家がないので用なしだ。《栽培》もさっき言った通り施設が無いので無理。残るは《裁縫》《研究》《料理》だが、この辺は道具が少し戻ったところ、日用品がそろっているところにあったのでそこで買うことにする。こう見ると現段階で使えるスキルって少ないわね。


 鍋や包丁、裁縫道具を買った後、北側の道具屋により、ユズとサクラ姉ぇと狩った魔物の素材を皮や肉などを残して売却。現在の所持金は初期の3000Gから先の買い物の金額を引いたものに加えて2390Gを受け取ったので4230Gだ。さらに、素材入手の為のつるはしと斧も買っておく。この時点ですでに3200G。結構使ってしまった。あとは人目につかなそうな中心の広場から離れて、町の外れの空き地で作業をする。


 まずは《裁縫》からだ。今回は多くのプレイヤーに不評のウルフの皮の装備を作ってみようとおもう。ウルフの皮は丈夫で、そのままでは使っても防御力は確かにあるかもしれないが、そのまま使えば硬くなってしまい動きに制限が出てしまうだろう。NPCの店で売っているものは皮を鞣す作業を取らなかったために硬くなり、結果動きづらくなっていた。それがプレイヤーの不評を買ったのだ。


 そのため、今回はウルフの皮を加工してから作ってみることにする。方法は色々あるが、それらを試すには少し物資が足りないので、煙を起こしていぶすことにした。辺りに煙が広がってしまうが人はほとんどいないので問題はない。少し放置してから皮の具合を確かめる。《裁縫》のレベルは2に上がっていた。この作業だけでレベルが上がっていいのか疑問だが、上がってくれたのだからそのまま作業を続ける。裁縫道具を取り出し、簡単な上着を紙に書き出す。私には大きいが、普通のプレイヤーからしたらちょうどいいだろう。


 作りは簡単でリアルでも良く売っているハーフコートのような形だ。おおざっぱに皮を裁ち縫い合わせる。糸は脆いが縫い目を内側に入れることで少しでもほつれにくくする。大体の形が出来上がると、細かいところ、着心地等を確かめ、着たときの違和感を無くしてゆく。作り終わった後に暫く置いておいて硬くならないことを確認してから完成。製作評価は4。プレイヤースキルもあったためか、それなりに高く出来た。NPCの売っているものは基本、評価が2なのでこの評価は自信を持っていいだろう。すでに《裁縫》スキルは5まで上がっている。ちょろいわね。ついでに裂けたままだったワンピースも鞄から取り出し直しておく。


 ワンピースを着てなかったときは何を着ていたかだって?昨日の夜にそのままじゃだめだと言われて、二人に新しい服渡されたわよ。


 さて、次は《料理》をしよう、と思った時に調味料を買っていないことに気づく。しまったと思いつつ広場から結構近い場所で調味料を購入。さっきの場所に戻るのも面倒なので店から少し離れた場所で調理器具を取り出す。鍋、フライパン、包丁、まな板などはもちろん、組み立て式の作業台のようなものまで付いているので買った値段を考えると安い。作業台は自分には大きいので踏み台を別料金で買ったが。


 まずは兎、ラビットファングの肉から。これはユズに連れられて狩りをしたときに手に入れたものだ。と言うか調理に使う予定の大半のものはさっきの狩りで手に入れたものだ。


 最初はシンプルに焼いてみる。少し小さめに切って油を引き、熱したフライパンの上に乗せると、ジュウジュウと良い音を立たせて焼けて行く。塩と胡椒を振り、両面を焼いて出来栄えを確認。製作評価は2。NPCの物となんら変わりがない。そして試食。…正直言って食えなくはないが、大しておいしいものでもない。獣の肉特有の臭みが抜けておらず、それでいて硬い。筋張った硬さではなく、焼けて固まってしまったような感じだ。これは煮込み料理やシチューに使った方がいいだろう。


「うん、今回はシチューに決めた」


 最近シチューを食べていないことを思い出し、少しシチューを作るのに凝ってみることにした。やはりまずはクリームシチューを作るべきだろう。そうと決まれば野菜を買ってくるべきだろう。頭の隅からクリームシチューのレシピを引っ張り出す。そして買うものを1つずつ書き出していく。基本的にこのゲームの運営は冒険面ではなく生活面に凝っていることはさっき西を見てきたときに分かっているのでどうせ何でもそろうだろう。用意するものは人参、じゃが芋、玉ねぎ、それと個人的な好みでブロッコリー。それから、鶏肉の代わりにラビットファングの肉を使う。他にはコンソメスープの素、牛乳、バター等を買い込む。広場に戻り調理開始だ。


 まずは寸胴鍋にバター少し多めにをひき、熱する。その間に野菜を一口サイズに切っていく。包丁の扱いはリアルの料理で慣れているので怪我をすることはない。野菜を切り終わってから肉から順に鍋に入れて炒めて行く。ブロッコリーは炒めると味が悪くなってしまうのでまだ入れない。


玉ねぎがやわらかくなってきたら薄力粉を入れる。この時に焦げないように気をつける。薄力粉がなじんできたら牛乳を入れ、コンソメスープの元も入れる。焦げないように鍋の底から混ぜる。単純な作業だが、これを怠ると味も見た目も悪くなってしまう。1回、調理実習の時にカレーを焦がしたのを見たことがあるが、とても鼻をつままずにはいられない匂いがしていたのを覚えている。おっと、脱線してしまったわ。


ころ合いを見てブロッコリーを入れる。余り長い時間やるとブロッコリーはバラバラになってしまうので余り長い時間をかけないのが私のやり方だ。そして多少とろみがつくまで沸騰させ、ふたをかぶせて少し放置。10分から20分ほど置いたら完成だ。私はどちらかと言うとサラサラしている方が好きなので沸騰させる時間も短めにしてある。ふたを開け、鍋に入ったシチューから懐かしいにおいが漂っている。結構多めに作ったのでユズとサクラ姉ぇにも後で分けに行こう。周りにプレイヤーが集まっているがそこまで量を作ったわけではないので諦めてもらう。


 早速、深めのさらによそって試食。久々に作ったにしてはなかなかの出来だ。焼いたときは硬くなってしまったラビットファングの肉がちゃんと柔らかくなっており、食べやすい。シチューからはバターの風味もしている。多めに入れたのが良かったのだろう。ブロッコリーはバラバラにならずちゃんと形を残している。やわらかさも食べやすくなっていておいしい。人参とじゃが芋も味がしっかりとしていてえぐみ等もなく食べやすい。玉ねぎは溶けてなくなってしまったが。


 今回は1杯だけ食べて残りは食器に移してメニューからインベントリに移動。後は鍋やら食器やらを片付けて鞄にしまい、退散。捕まると面倒なので《飛行》を使って屋根の上に登り、アクション映画みたいに屋根をかけて行って広場から離れる。ゲームとはいえ、最近体をものすごく動かしているような気がする。去り際に屋根の下を見るとプレイヤーは残念そうな顔でこちらを見上げていた。中には死に物狂いで昇ってこようとしているものもいたが。…あとで確認したが、製作評価は5、《料理》のレベルは6になっていた。プレイヤースキルが高いと一定のレベルまでは上がりやすいのかもしれない。


 ゲームの時間的にはちょうど昼の時間帯にはいるところだ。ここでユズにフレンドで呼びかける。


「ユズ?」

「あ、モミジお姉ちゃん、どうしたの?」

「《料理》スキル使って1つ試しに作ってみたからその味見を頼みたいのだけど」

「んー、ちょっと待って。サクラお姉ちゃんと相談するから。」

「分かったわ」


 待つこと3分。


「モミジお姉ちゃん?」

「ん、決まった?」

「うん。今広場に居るんだけど、来れる?」

「広場?なんで?」

「サクラお姉ちゃんが今広場に居るんだって」

「それで広場にってわけね」

「うん。私も今広場に向かって歩きながら通信してるから、早めに来てね」

「了解」


 …結局広場に行くことになるのね。今は余り近づきたくないのだけど…いや、自分でまいた種だし、自業自得と言えばそうなのだけどそれでも、あれだけの人がいた後だと…


「しかたないわね…」


 一度来た道を戻り、もちろん屋根の上からユズとサクラ姉ぇを探す。暫く周りを見渡していると、見覚えのある、短髪の男が目に入った。その男の前に跳び下りて声をかける。


「昨日ぶりね、何をしているのかしら?」

「おぉう!?…なんだ、モミジか」

「何だ、とは随分と失礼ね。ユージ」


 昨日もそうだったが、相変わらず遠慮のない発言である。それにしても私より背が高いのが気に入らない。幼馴染に限らず、私は見下されたりするのが結構嫌いだ。


「で、何の用だ?」

「別に?見かけたから声をかけてみただけよ?」

「そうか、ところでお前はこの辺で料理してるやつ見なかったか?なんかシチュー作ってたらしくてな、自分が食べ終わると残りは仕舞ってどっか行ったらしいんだよ」

「え、いや、見てないわ…」


 何でもう話が広まってるのよ…。そんなに食べたいなら《料理》を自分で取ればいいじゃない…。


「ん、そうか。となるともうどっか遠くに行ったのかなー」

「何でそんなにシチューを作ってた人を探しているのかしら?」

「いや、実はな…」


 ユージの話をまとめると、β時代から《料理》スキルは存在していたらしいが、現在もそうであるように満腹度のようなシステムが無いが故に、食事をする必要が無かったらしい。《料理》スキルを取った人は居たには居たらしいのだが、どれだけレベルが上がっても製作評価が上がらず不味い料理しか作れなかったらしい。それを食べた人の話が伝わったせいでゴミのような扱いを受けていたそうな。その人の作った料理と比べるとまだ自分で作った少し焦げたくらいのホットケーキのほうがおいしい、と言うレベルでひどかったため、この正式サービスでもゴミ扱いだった、《料理》スキルで美味しそうな物を作っている、という話が広がったようだ。…見つかったら逃げるしかないわね。


「なるほどね、私の考えではそういうスキルはプレイヤーの腕も関係しているのではないかと考えているのだけど」

「そ、そうか…ん?ならお前何かいいもん作れんじゃねえのか?調理実習の時も結構手際良かったし」

「ゲームと現実だと結構勝手が違うのよ」

「そんなもんなのか」

「そんなもんよ」


 よし、何とか誤魔化せたわ。ユージが単純で良かったと思ったのは何回目かしら。


「で、お前は何のために広場に来たんだ?」

「ユズとサクラ姉ぇと待ち合わせよ。…あら」


 嘘は言っていないのでだましてはいない。まだ来ないのかと少しあたりを見渡すと、見覚えのあるポニーテルが目に入った。その人物がこちらに目を向けると近づいてくる。


「あ、居た居た。ユズ、こっちに居たわよ」

「本当だ。ユージさんも一緒なんだね」

「ああ、少し話をしててな」

「サクラ姉ぇ、広場に居たって聞いたけど」

「もうユージ君は話したのかしら。謎の料理人の話」

「ええ、話しておきましたよ」

「で、モミジ」

「な、何かしら」


 サクラ姉ぇが身をかがめてこちらを覗きこむように顔を近づける。こっちでは私の方が断然小さいので妙なプレッシャーを感じ、一歩後ろに下がったところでサクラ姉ぇが口を開いた。


「シチュー作ってた料理人ってあなたでしょう?」

「な、何のことかしら?」


 拙いわ、色々と。このサクラ姉ぇの目は確実に確信を持って言っている目だわ。


「ユズが言ってたわ。モミジお姉ちゃんが《料理》スキルで試作品を作ったから味見をしてほしいって」

「それだけで私を犯人に決めつけるのは早くないかしら?」

「あれだけ使えないって言ってた《料理》を取ってるのはあなたくらいよ、モミジ」

「いつ私が《料理》を持ってるなんて言ったかしら」

「最初の時、大剣の重みでジタバタした後」

「覚えてないわね」

「へえ、とりあえず試作品とやらを出してもらおうかしら」

「う、…あーもう分かったわよ。はい、これが試しに作ったシチュー」


 諦めてサクラ姉ぇに差し出す。もうどうにでもなればいいわ。面倒になったら別の場所に逃げるだけよ。


「ん、素直でよろしい。それにしてもいいにおいね、これ」

「何だ、やっぱり作ったのお前じゃないか」

「悪かったわね、面倒事になるのは嫌いなのよ。作った時も大勢集まっちゃったし」

「あー、いいなーシチュー。私にも頂戴」

「分かったから服を引っ張らない。ちゃんとユズの分もあるから」

「ありがとう、お姉ちゃん。…懐かしいなー、シチュー。あちち…」


 2人とも頬を緩ませてシチューの味に満足しているようだ。その様子を見ている私に視線を向ける男が一人。


「…何よ」

「俺にもくれないかなー…なんて」

「嫌よ」

「そんな即答しなくてもいいじゃないか…」

「嫌なことははっきりと断るのが吉なのよ」

「…どうしてもか?」

「ええ」

「なあ…」

「しつこいわよ」

「くそ、こうなったら料理人がここに居ると大声で叫んで…」

「それだけは勘弁して頂戴」

「じゃあ、くれよ」

「…仕方ないわね、交換条件でどうかしら」

「交換条件?」

「そう、私があなたにシチューを渡す代わりにあなたは私の言うものを買い取ってもらうわ」

「買い取るって、あんまり変なもんよこすなよ?」

「《ウルフの皮》で作ったハーフコートよ」

「なんだよ、NPCも売ってるようなもんじゃねえか」

「じゃあシチューは無しね」

「ああ、わかった、分かったから!早く出せよ」

「はい、これ」


 人間、食べ物が絡むと結構弱くなる。とりあえず了承した様子のユージに自作のウルフ素材のハーフコートを渡す。ちなみにこのコート加算される防御力は15と初期の服の3に比べると結構高いようだが、私に似合いそうにないので売ることにしたのだ。


 そして渡されたハーフコートをまじまじと見つめ、少し眉をひそめるとその表情のままユージが口を開く。


「なあ、こんなもん本当に売る気なのか?」

「そのつもりだけど、やはり質が悪かったかしら」

「その逆だ、むしろ良い」

「そうなの?」


 その言葉に反応したユズとサクラ姉ぇがすでにシチューのなくなった皿を持ってこちらに来る。そして2人とも同じような反応をした後に、


「確かにウルフの素材にしては色々とおかしいわね」

「そもそも売ってる物についてる《AGI低下》が無いのが…」

「そうだろ、一体何したんだ?お前」

「特に変わったことはしてないわ。普通に作っただけよ」

「で、これは売ってくれるのか?」

「あなたがそれを買わないとシチューをあげないって言ったことは変えないわ」

「そうか…1800Gで買おう」

「ユージ、NPCで売ってるのっていくらするの?」

「400Gだ」

「それを考えると高すぎないかしら」

「いや、それだけだす価値がある。NPCで売ってるものはさっきユズちゃんが言った《AGI低下》が付いてるし、上昇する防御力も5だ。それに対して防御力が15、安い胸当てくらいあるし、その胸当てにも《AGI低下》がついている。それにこういう皮素材はだれでも装備出来たりするしな」

「へえ…」

「今更売らないなんて言うなよ」

「言わないわ。それだけの金額がもらえるならありがたいところだし、自分の装備もそろそろいじりたいし」

「そうか、ならありがたく買わせて貰う」

「モミジお姉ちゃん、これが見られたら結構拙い事になりそうだけど…」

「そうね、もちろん周りにも言わないわよね、ユージ?」


 と少し黒い笑みを浮かべてユージのほうを向く。それに対して、


「当たり前だ。これがばれれば俺も色々面倒だからな」

「なら平気ね。じゃあ、残りの時間は…」

「まてまて、シチューくれよ」

「ああ、忘れるところだったわ、はいこれ」


 ユージから渡された1800Gをしまいながらインベントリに入っているシチューを取り出す。インベントリ内は時間が経たないのか、出来たときと同じで熱い。それを受け取るとユージは少しシチューを見てから私の顔を見て、サンキュ、とだけ言うと食べ始めた。食べ終わると生きてて良かった、みたいな顔を浮かべていたが、そこまで作るのに苦労はしてないのだけど。大げさな反応をするユージを視界の隅に追いやり余った時間で何をしようかと考え始める。


 結局、夕食の時間になるまで私はポーションを作り続けることにしたのだった。



 一方掲示板では、【無双美少女】【幼女料理人】【幼女観察日記】などのスレがたてられ、桜が約4時間かけて掲示板の住民をしつけていたのだが、それはまた別の話。

皆さん、シチューやスープは何が好きですか?

私はポタージュが好きです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ