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第38輪

―――side Momiji―――


「なんで元に戻ってるの!?」

「起きたらこうなってたわ。理由は知らない」


 ユズの疑問はもっともな物だが、分からない物は答えようがないのできっぱりと知らないと言っておく。


「で、どうしてここに来たんだ?」

「最初にここについたときはボスの行動を阻止するように攻撃してたんだけど、繰り返しているうちに挙動が怪しくなって、それで攻撃を止めたら魔物を放出したから襲われてたら手助けしようと思って。案の定囲まれてたからここに来たのよ」


 ユズはともかく、ユージは驚きもほどほどにと言った様子で質問をしてきたので起きてここについた後の事を大雑把に話す。


「それで、大きくなったと言うよりかは、元に戻った理由は分からないんだな?」

「ええ」


 万能薬の製作も後は放っておけば出来る段階まで進んだところで仮眠を取ったのはいいものの、目が覚めた時に身長が元に戻っていた時は流石に驚きを隠せなかった。


「ああ、そういえば」

「なんだ?」

「起きた時に明らかに様子のおかしい魔物に囲まれてて焦ったわよ。試しに万能薬振り撒いたら元に戻って、そのあと勝手に懐かれたと言うか、服従したと言うか」


 起きて、万能薬を瓶に詰めてテントの外に出たらキャンプによるセーフティエリアとの境界線を囲うように真っ黒な瘴気のようなものを漂わせ、目を光らせながら魔物が居た時は思わず引いたものだ。流石にあんな光景を寝起き十数分後に見せられれば仕方が無いものだと思ってほしい。


 それで、様子がおかしいのを見て状態異常の情報を思い出し、魔物にも回復系のアイテムは効くのか、この状態異常を万能薬で治すことが可能か、万能薬はちゃんと完成しているか、の3つを確かめる為に《飛行》を使って飛び上がり、万能薬を周囲に撒いた。


 すると、瘴気が消え去り、不気味に光っていた目も普通に戻った。その直後に私の事を見ると動物系の魔物は伏せをしながら、人型は土下座のような体勢をとりながら後ろに1歩下がったのだ。


「…その話だとボスに向かって行った魔物達もお前の仕業っぽいな」

「一応ボスに攻撃しろとは言ってみたけれど」

「やっぱりか…」

「従うとは思わなかったわね」


 起きてからは色々と予想外の事が続いて戸惑うことも多いが、それはそれで楽しいと思うようにしたので不満とかは特にない。


「大きくなったモミっちも有りねっ!」

「そろそろその口を縫い合わせてしまおうかしら」

「それは非常に迷うわね…」

「はぁ…」


 途中でくだらないことを言うカリナを軽く脅して見るものの、特に効果は無いようで思わずため息が漏れる。


「それで、気になったのですが」

「何が?」


 頭を抱えて悩んでいるカリナに呆れているとセリカが質問をしてくる。


「さっき熊を倒した攻撃は何なんですか?」

「ああ、あれね。あれはステータスが確かなら《魔導・闇》のスキルね」

「魔導!?」


 私の言葉に反応したのはユカ。魔術師の彼女からすれば気になって当然の事だろう。


「ステータスを確認したらそれが欄の中に有ったのよ。正しくは《一時解放・魔導・闇LV5》だったわね」

「一時解放、ですか。そうなると暫くしたら使えなくなる可能性もあるんですね」

「そうなるわね。大体予想はついているけれど」


 使えなくなるとしたらイベント終了と同時だろう。それを察してくれているのかセリカからはそのあとの質問は来なかった。


「他にも色々と聞きたいことはあるけどな、今はボス退治と行こうぜ!」

「そうね、残りの質問は後にして頂戴。それと、私は1人で動かさせてもらうわね。巻き込みそうだし」

「行ってらっしゃーい」


 セリカの質問を最後に少し間が開いたところでセイヤが言葉をはさむ。これ以上時間を取るのももったいないし、特に反対する理由もないので適当に会話を打ち切り翼を広げ《飛行》を発動する。最後にユズの気の抜けた声が聞こえたが、まあ大丈夫だろう。


 そのまま空を飛びボスとの距離を詰める。いつの間にか袋のような形から巨大な人の形になっているけれど特に問題は無いだろう。


「《クロススラッシュ》!」


 ボスに突っ込むままの勢いでアーツを放ちそのまま飛び去ることで硬直時間を無効化する。さっき行動を阻害するように攻撃をするときも同じ手段をとっていた。


 放たれたアーツによる斬撃はボスの体に傷を刻むが、10秒としないうちに何も無かったかのように元通りになる。とは言ってもさっき行動を阻害出来たことからダメージが入っていないわけではないだろう。


「《シャドウ・ソルジャー》、《リベリオン》」


 闇魔導の一時解放によって使用可能になっている魔道を使う。《シャドウ・ソルジャー》は自分の分身のような形をした兵士を作り出し、《リベリオン》は攻撃を受けると与ダメージをアップさせるエンチャントを魔導で生み出した兵士達に付与する。耐久力に乏しいためあまり意味はなさそうだが、無いよりはマシになってくれるだろう。


 さっきユージ達を助けた時と、それから今回も、ユージ達に話しはしなかったがこれも限定解放されている《多重発動》の効果で複数の影の兵士を作る。数は一応5体にしているが現在の底なしとも言えるMPではこれの10倍くらいはやれるだろう。しかし、余りやり過ぎても他のプレイヤーの邪魔になったりしそうなので少なめにしている。


 正規の方法で《魔導・闇》スキルを解放するには《魔術・闇》スキルを最大LVまで上げる必要があるが、一時的とは言え《魔導・闇》を解放されている現在でも《魔術・闇》で使用可能になる全ての魔術が使えると言う訳ではないようだ。


「さあ、行きなさい」


 私の指示とともに近くで待機状態だった兵士たちが飛んでいく。その兵士たちの後ろについていくようにして私もボスに向かっていく。


「《ハイスラッシュ》!」


 一文字の強烈な攻撃を放ち、動作が終わるのと同時に高度を上げる。ボスの全体がみえる高さまで来たら、今度は錐揉み回転と共に落下する。ステータスのおかげか目が回らないからこそできる行動だ。そして、その落下と回転の勢いのままボスへと突っ込む。


「《グラビドン・クラッシュ》!!」


 落下と回転のエネルギー、アーツの威力、それから武器の重さがボスを襲い、強制的に膝をつかせる。見た限り折れた膝に巻き込まれたプレイヤーはいないようだ。それどころかチャンスとばかりに群がり始めている。他のプレイヤーが多いと攻撃に巻き込みそうなので、私は一旦高度を上げ、距離を取る。


 アーツの当たった場所は大きく欠損しており、再生もする様子が無い。大きなダメージをあたえることに成功したのだろう。


 ちなみに、ボスが初めに居た湖は袋の状態の時は残っていたが、人型になってからは水が枯れている。恐らく力の源か何かにでもなっていたのを取り込んだのだろう。


 いつの間にか兵士たちが消えているが、まだ魔導の再発動はしない。群がったプレイヤー達が離れるのを待って、暫く戦況を観察する。


 足にさっきのアーツくらいのダメージを一撃で与えられれば機動力を奪うこともできそうだが、それはなかなか難しそうだ。


「直接攻撃が難しいなら魔術を使えばいいかしらね」


 物理攻撃と違って魔術はそこまで威力が出ない気がするが、何もしないよりはましだろうとその考えを実行する。


「《ダークボール・サークル》!」


 《多重発動》の効果で《魔術・結界》の恩賜を得た闇魔術を20ほど放つ。《ダークボール》そのものは単発の魔術だったが、《サークル》の効果で10秒ほど魔法陣から闇色の球が連射される。


 面白いことに同時発動した20の魔法陣は私の背後で環状に並び高速回転しながら魔術を放っている。さて、次は何をして見ようかな。

やっとメイン主人公が戻ってきました。久しぶりにモミジさん書いたので楽しかったです。現実だったら、いくら強くても夜だけって結構不便な気がします。

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