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第31輪

「お、やってるな」


 最後のポーションを瓶に詰めたところでユージ達が戻ってくる。


「結構戻ってくるのが早かったわね」

「結構鞄の容量も取られてるからな。それに取り過ぎたって判別したり分けたりするのに時間がかかり過ぎるだろう?」

「それもそうね。ユカ」

「なんですか?」

「夕食を作るのを任せても良いかしら?これから皆が採って来たものを使えるものと使えないものに分けないといけないから」

「了解。夕食できたら呼びますんで、ゆっくりやってても大丈夫やで」

「わかったわ」


 良し、これで集中して作業が出来るわね。皆が採って来たものは私の鞄に移してあるけれど、ちらっと見ただけでも相当な数があるのが確認できた。寝るのは何時頃になるかしら、一応本領発揮は夜なのだけれどポーションとかを作るのは昼にやっても夜にやっても結果が同じだから寝れるときは寝たいのよね。そのためにも早く作業を始めましょうか。


「採って来た総数が700個位ってことは目についたものを片っ端から引っこ抜いてきたのかしら…、どれくらいが使えるものなのか怪しいわね。とりあえず調べて行けばいいかしら」


 鞄の中では未鑑定の草という名前で括られているが、実際に取り出して見ると色々な草が混ざっているのがわかる。最初に薬草と霊草だけ分けておくことにする。しかし、数が数なので大分時間がかかる。大体10分ほどかけて700ほどある草の中から薬草と霊草を分けられた。数は薬草が78、霊草が55、少々足りない位ではあるけれど、纏めて作れば薬草1つにつきポーションが複数作れるので良しとする。


 次に600ほど残った草の中から雑草を除いていく。予想はできていたけれど、やはり手に取ると大半が雑草と表示されるのが残念なことこの上ない。より分けているうちに別のアイテムも出てくるけれど今は雑草を分けているので後でゆっくり調べることにする。


「お姉ちゃん、そろそろ出来るってユカちゃんが言ってたよ~」

「ん、わかったわ」


 丁度切りも良かったので、より分けたものをまた混ざらないように分けながら片付ける。今日の夕食はどうやら和食のようで、醤油の香りが食欲をそそる。


「皆好きなところに座って構わんで」

「じゃあ私はモミっちの隣に」

「耳が物理的に目に入るから頬を擦りつけようとするのをやめなさい」

「男どもはそっちに行ってなさい」

「男の扱いには手厳しいな…」

「ツンデレですかな?」

「セイヤは後でレーザーで焼いてあげるわね」

「手伝う」

「それは流石にどうかと…」

「カリナは甘いわね」

「ハハハ、じゃあ皆そろったから、ほな頂きますか」

「頂きます」


 相変わらず皆騒がしいわね。まあ葬式見たいな雰囲気よりはましだけれど。それにしても、スキルの恩賜もあるとは言えどれもおいしいわね。《料理》スキルは伸ばすのは良いけれど出来たものが食べきれないと意味がないから気軽には大量に作れないのよね。売り物として出すには少し粗末かもしれないし…。そんなことを考えていると視界の端に移ったユカがドヤ顔をしていた。あのドヤ顔をそのうち驚愕の色に染め上げてやるわ…。


「ごちそうさま~」

「美味しかったわ、そのうち料理対決でもしようかしら」

「ふっふ~、そう簡単にはそう簡単には負けへんから覚悟しとってくださいね」


 それから2~30分位したところでテーブルに乗っていた料理が空になる。これだけの人数が居れば早めに片付くのも当然だろう。私は少し食休みを挟んだら残っている草の鑑定をしないとね。


「モミジ、さっきはゆっくり話せなかったけど、どのくらい出来てるんだ?」

「ポーションが大体60本、マナポーションが30本。それから実験で作った混合ポーションが1ダース」

「混合ポーション?」

「HPとMPを両方回復してくれるらしいわよ。味はカリナに飲ませてみたけど反応に困るような味がするらしいわ」

「一体どんな味だよ…」

「本人に聞いてみたらいいんじゃないかしら?」


 食器を片づけて軽く一息ついているとユージが話しかけてくる。5日目になるまでにはそれなりの数のポーションが出来上がるとは思うけれど足りるかどうかはわからない。軽く成果について話すと混合ポーションについて聞いてきたが一々説明するのも面倒なので適当にあしらってみる。


「まあいいか、使うのに困るようなものじゃないんだろ?」

「本人が言うにはそうらしいわね」

「なら良いんだ。マナポーションみたいなのは勘弁願いたいからな」

「ユージも被害者?」

「まあ少しな。上位アイテムより酷いことにはならなかったが、あの苦さとかは色々と来るものがある…」

「そう。私は上位アイテムの方飲まされたわね。あの不味さといったらフフフフフフ…」

「黒いオーラが迸ってるから早く思い出すのを止めるんだ」


 ユージの言葉にはっとなって現実に戻ってくる。ゲームだけど。ゲームの製作者は何が目的であんなに不味いものを作ったのか何度考えてもさっぱり分からない。もしかしたら製作評価次第で効果以外にも変化が出るかもしれないから、スキルは早いとこ伸ばしておきたいわね。


「私はそろそろ作業に入るから、緊急時以外は話し掛けるのを控えてくれると助かるわ」

「分かった。作業に精を出すのも良いが、あんまり無茶するなよ?」

「分かってるわよ。残りの草の鑑定を済ませたら寝るわ」


 残りの未鑑定アイテムを取り出し初めた私に軽い口調で注意をしてから皆の居る方向に歩いていくユージ。流石に雑草が多すぎると思うけど文句を言っても仕方が無いから黙って作業に入る。雑草を除いた残りの数は300よりも少ないくらいで結構数が減ってしまったのが残念なところ。


「解毒薬の類は作ったこと無いのだけれど、どうすればいいのかしら…」


 前に1度毒を受けたことがあったけれど、あの時は良くわからないままどうにかなってしまったので参考にならない。さっきから雑草以外のアイテムを鑑定しているけれど痺れ草とか睡眠草とか如何にも毒草の仲間ですよと言わんばかりのネーミングのアイテムしか出てこない。私が作るのは毒薬じゃなくて解毒薬なのだけれど…。


 とりあえず、他にやることも無いので山となっている草を次々と分けていく。ちなみに、鑑定ができるのは《研究》スキルのおかげである。そろそろ《研究》も10レベル位にはしたいところだけれどそう簡単には上がらないのが現実である。片っ端から使っていかないとだめなのか、メインスキルに入れておけば上がるかしら。


「調子はどうですか?モミジさん」

「余り良いとは言えないわね。アイテムの鑑定はできたし、種類別に分けるのもおわったけれど、問題の解毒系の薬の作り方がさっぱりだわ」


 未鑑定アイテムが無くなり、そろそろ寝ようかと思い片付け作業に入るとセリカが話しかけてくる。万能薬の作成を頼んできたのはセリカだし、成果を聞きに来たのだろう。


「そうですか。ところで、どんなものがあったんですか?」

「ほとんどが状態異常を引き起こす毒草の類で、残りは薬草と霊草、後は薬効の無い雑草ね。一応各種類1つずつ毒性を抽出した液を作ってみたけれど、どの程度の毒性があるのかもわからないから実験も出来ないわね」

「毒性はどうやって抽出したんですか?」

「すり潰して不純物を取り除いただけよ。触っただけでは状態異常にはならないようだけれど、触るのはお勧めしないわね」

「分かりました」


 興味深そうに痺れ草のエキスの入った瓶を月明かりに照らして見ているセリカに今日のやったことを話していく。そのまま放っておくと瓶の中身を飲みそうだったので軽く窘めておく。飲んでいたら飲んでいたでどの程度の効果が出るのか知ることが出来ただろうから、別にどうだろうと私は構わないけれど。


「では、お休みなさい。モミジさん」

「ええ、お休み」


 テントの中に入って行くセリカの後ろ姿を眺めながらレイドボスについての考察をする。もちろん、片付けをする手は休めない。とは言っても遺跡から戻ってきた後話した内容で大体やることは決まっているし、ボスについて考えると言っても具体的な情報があるわけではないので判断出来ない部分も多い。


「どちらにせよ、猶予なんて無いようなものね」


 残り猶予は1日。イベントに来る前に比べれば1日が長く感じるので恐らくこっちは24時間設定になっているのかもしれないけれど、それでも時間は足りないくらいである。今日はもう寝ようかしらね。


 片付けも終わったのでテントの方に向かうと1つだけ明かりがついているのがある。一体何をしているのかしら。中から聞こえてくるのはユズとユカとカリナの声ね…、一応気になるので中に入ってみる。


「あ、お姉ちゃん。どうしたの?」

「明かりがついていたから気になって来ただけよ」

「好奇心旺盛なのね~」

「それはまた別のものちゃうか?」


 このままだとコントが始まるわね…。その場のノリで話題を振られるのは苦手だから何とか黙らせないとダメかしら。


「ところで、貴女達は何をしていたのかしら」

「雑談だよ。イベント終わったら何しようかとか、どこに行こうかとかそんな感じの話」

「自分は早いとこスイーツの完成目指して行きたいところやな」

「私はモミっちを堪能していたいわ~」

「なるほどね。カリナはイベント終わったらお話しましょうか」

「あらら、カリナちゃん大丈夫かな」

「ど、どういう意味?」

「まあ、お楽しみってところやろな」


 カリナとはイベント後に少しお話をしないといけないことが決まったので、一応イベント後にやることが決まったとも言えるわね。夜の私と戦うだけの簡単なお仕事だし、特に問題は無いわね。むしろカリナにとったらご褒美かしら。


「お姉ちゃんはイベントの後はどうするの?」

「カリナとお話した後はソロプレイに戻るわね」

「私と何かするのは確定なのね…」

「ご褒美やろ?」

「やっぱりお姉ちゃんはソロかー…、特に引き留めたりはしないけど気をつけてね」

「いざとなったら貴女達やサクラ姉ぇでも呼ばせてもらうわ」

「なら良いけどね」


 ユズが心配しているのは恐らく迷惑行為を働くプレイヤーの事だろう。私は無視するだけだからどうでもいいわね。


「じゃあ、そろそろ寝よっか」

「そうね~」

「姉さんもどうでっか?」

「それじゃあ、失礼するわね」


 明日もやることが多いわね。早く万能薬を完成させないと…。

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