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第20輪

「2人とも、あれの動き止められるかしら?」

「お、復活?」


 戦闘から一時離脱してから5分ほど経過。〈ゴーレム〉の頭上になら飛んで行けそうなくらいの魔力を回復したのを確認してから、休んでいる私の方に〈ゴーレム〉が来ないよう引き付けてくれていた2人に確認をとる。返答からして結構余裕を持っていそうね。


「止められないことも無いけど、多分それでMP無くなるかな」

「モミっち、MP回復出来るアイテムは持ってないの?」

「さっきの時間で2つだけ試作したわ」


 鞄から休憩中に作ったMP回復ポーションを取り出す。ちまちまと採っていた草の中に霊草が混ざっていたから作ってみたのだ。


「おー、じゃあ早速…、ッ!?」

「予想通りの反応をありがとう」


 ミオが腰に手を付き、マナポーションの瓶を傾けた直後、ミオの口から噴水のようにマナポーションが吹き出される。


「モミっち、何したの?」

「マナポーション渡しただけよ?」


 カリナが咳き込んでいるミオを横眼で見ながら質問をしてくるが、特に変わったことはしていない。ただ1つ言うなら、マナポーションの味の改良なんかしていないのだから当然の反応だと言うことくらいだろう。私も同じような目に遭ったし、どちらかと言うとミオのほうがまだましだろうけど。それは別として、ほとんど飲みこめていないように見えたけれど、MPは回復出来たのかしら。


「マズい!何これ!?」

「マナポーション」

「それはわかってるけど、何でこんなに不味いの!?」

「開発者に文句を言いなさい」

「モミジさんもこれ飲んだの?」

「当たり前じゃない。私だって使った時は酷い目に遭ったわよ?」

「あの反応を見たら私は飲みたくなくなったわ~…」

「私は一応回復出来たから1人で何とかするよ…」

「じゃあミオ、頼んだわよ」

「うぅ…気持ち悪い…」

「頑張ってね~」


 口に手を当てながら俯くミオに足止めを任せ、〈ゴーレム〉に隙が出来るのを待ちながら観察を続ける。ダメージは多少なりとも蓄積しているようだが、行動、攻撃力等に変化はなさそうだ。相手のHPが高いのか、こちらの攻撃が弱いのかは分からないが、恐らく次の手で何とかなるだろう。


「モミジさん、準備は?」

「問題ないわ」

「よし、《ライトニングレーザー》!」

「《飛行》、捕まえたわ」


 ミオの魔術がゴーレムの両足を貫く。痛覚があるのかどうかはわからないけれど、動きが止まったので、その隙を利用して〈ゴーレム〉の頭に刺さっている私の大剣まで飛び、振り落とされないように大剣の柄を左手でしっかり握る。右手にはつるはしを構え大剣が刺さっている場所のすぐ横、わずかにあいている隙間を狙い、振り下ろす。


「良い調子ね」


 脆くなっている場所を攻撃された〈ゴーレム〉の頭の一部は音を立てて崩れていく。素材の山が手に入ると考えるとつるはしを振り下ろす手が止まらない。この魔物もそのうち通常のダンジョンにも出てきてくれると考えると素材が採り放題ね。


「うわあ…」

「楽しそうにしているモミっちもいいのだけど、あそこまで野性的な目つきと笑い方していると流石に抱きしめづらいわ~…」


 1回つるはしを振り下ろす度、〈ゴーレム〉は確実に体を崩壊させていく。そのたびに魔物からアイテムと化した鉄が地面へと落ちていく。もちろん〈ゴーレム〉も抵抗はしているが私が大剣に隠れるように移動すれば、大きすぎるその手は私に当たることはない。〈ゴーレム〉が私を攻撃し、大剣に阻まれ私が隙を見てつるはしを振り下ろす。それが続いて10分くらい経っただろうか、一際大きなひび割れを叩いた瞬間〈ゴーレム〉の体全体が音を立てて崩れ始めた。


「これで倒したのかしら?」

「随分楽しそうに倒したわね~」

「あのモミジさんは怖かったよ、私」

「…えっと、そんなに?」

「うん、具体的にはカリナさんが近づくのを躊躇うくらい」


 完全にやってしまった。日頃は気を付けているつもりなのだけれど、ユージ曰く私がはしゃいでいるといつの間にか他人から見て危ない行動をしているらしい。一番多いのが奇声を発する、だったかしら。どうやってこの場を凌ごうかしら…。


「まあ私は楽しそうなモミっちを見れたからあまり気にしてないわ~」

「うん。確かにびっくりしたけど、モミジさんの面白い一面見れたから私も気にしてないよ」

「本当に?」

「あんまり気にしてると、抱きしめちゃおうかしら、うふふ」

「…それは勘弁してもらいたいわね」


 どうやら、余り気にしていないらしい。勝手に焦っていた私が馬鹿らしいわね。いつまでも引きずっているとカリナにまた運ばれるからもう考えないことにしよう。


「それにしても結構あるよ、この鉱石?みたいなの」

「鞄には飽きがあるから全部持っていけるわ」

「じゃあ、とりあえずモミっちの鞄の中に入れれば良いかしら?」

「それでいいわ」

「了解」


 私が周りに散らばっている〈ゴーレム〉の残骸に目をやると、何をしようとしたのか察したのかミオとカリナが鉱石を集め始める。切り替えが早い人はいい人ね。やるときはやれて遊ぶ時はしっかり遊べるような人って結構少ないのよね。


「一応まだ先があるようだけれど、戦闘で時間が取られたから回収が終わったら一旦戻るわよ」

「はーい」

「了解したわ~」







―――side Yu-ji―――


「あべぶぶ!」


 しまった、向こうの動きが速いせいで声に出してしまった。水の中だからまともな発音なんて出来る訳なく大量の空気を吐きだしたようなもんだけどな。それよりも、いくら水に潜るために軽装になっているプレイヤーとは言え、まさか一撃で倒されるとは思わなかったな。倒された側も何が起きたのか分からなかっただろう。俺に見えたのは鮫をなんかゴツくした感じの良くわからない魚だったが、水の中で戦うとなると流石に分が悪い。光源のほうはユミが《ライト》を使って確保してくれているが、それだけでは敵の姿を見ることは出来ても動きを見切るには不十分だ。ここはひとつ賭けに出るか。


 空気袋で十分に空気を吸った後、ユミに1つアイコンタクトを取って俺は1人で少しずつ湖を潜っていく。そして、ある程度潜った瞬間にさっき見た、鮫のような魔物がこちらに襲いかかって来た。しかし今回は狙いが俺1人だからか、たまたま居た場所がそうだったのか、俺の位置の真下、つまり湖の深い方から一直線に向かってくる。直線的な動きをしている物を避けるのは容易いことだ。また、ユミには事前に俺からある程度離れているように指示を出しておいたので魔物の攻撃を喰らうことは無いだろう。攻撃を外した魔物は方向転換して俺の方へと向かってくるが、俺と魔物との距離が開いていないからかまともな加速が出来ておらずさっきの一撃と比べると格段に遅い。この程度、更に言えば真正面から向かってくる相手なんて良い的だ。俺にぶつかる手前で剣を突き出し、そのまま魔物は速さを緩める間もなく串刺しになる。対処法はこれで大丈夫だろう。上の方にいるユミに合図を出して再び深い方へと向かう。


 時間の感覚が無くなり始めている上、水中で光源を出す魔術を使っているせいでどのくらい経過したのかわからないが、結構な時間水中に居ると思う時間を見るとなんだかんだで1時間ほど経過しているらしい。あれから魚型の魔物が何匹か出てきたが、まっすぐ突っ込んでくるばかりだったのでダメージらしいダメージは貰っていない。一本道にした運営のミスだろうか。まあ側面に魔物専用の道があってもサービス開始して余り時間の経っていない今じゃ対処出来る人が少なすぎてゲームとして成り立たないかもしれないから、それを考えてのことかもしれないが。それよりも今の問題はこの湖があとどれくらいの深さを残しているのかが問題だけどな。場合によっては地上に上がる前に窒息してHPが0になる可能性も無いわけじゃ無いし、そろそろ戻ることも視野に入れて行かないとまずい。暫く考えながらまっすぐ潜っていたが、何かに気付いたのか、ユミが俺の服を引っ張ってくる。ユミのほうを向くとある一点を指差したので、そちらに目を向けると、横穴が意味深に存在していた。生き物がいる気配も無く、何かが通ったような形跡も無くただぽっかりと、そこに穴はあった。下に潜るのは終わりが見えそうにないので、仕方が無くそちらの横穴へ入ることにした。






「久々に地に足を着けてる気がする」

「まさか横穴の先が洞窟になってるとは思わなかったな。でもなぁ、結構まずい状況だな」

「何で?」

「ああ。まず、ボスに出会ったら火力不足だな。俺1人で何とか出来ないことは無いが、時間がかかるから効率が良くない」

「なら、私も攻撃にまわる」

「それだと回復が出来ないから困る」


 横穴に入ってから数分泳いでいると何とも意味ありげな洞窟につながったので、周りの安全を確認してから、現在の状況から浮上した問題点と一応の対処法は話し合って出した。しかし、それでも不安は尽きない。戻るにしても空気袋が持つかどうかといった状況だ。まあ何もしないよりかは前に進んでいった方が良いだろう。モミジじゃ無いが、時間の無駄な浪費は避けたいからな。ボスが居た時の為に役割分担などをしながら歩を進めて行く。


「ボスの情報は皆無だから攻略がどうとかは何も言えないが、一応の作戦としては俺が攻撃、ユミが回復、MPに余裕があったら攻撃を入れても良いが、やり過ぎないように。基本はヒットアンドアウェイのつもりだし、何かあったとしても一応の最終手段はある。いざとなったらそれを使えば良いが、期待はしない方がいいな」

「わかった」


 話がひと段落付いたところでどうやらもう話すような時間は無いことに気がつく。前を見れば不思議な威圧感を放つ、石か何かでできている扉が立ちふさがっているからだ。俺としてはタイミングが良いな、俊か思わなかったんだがな。こんな奥にあるってことはこの奥にボス、ボスじゃなくても何かしら厄介なのがあると考えても良いか。


「扉の前で未来を考えても仕方が無いな。開けるぞ」

「了解」


 扉は重々しい音を立てて、するすると開き始める。見た目とのギャップに軽く驚いたが問題はこの先だろう。ここからは余裕なんてないだろう。何があっても良いように武器を構えて待機する。しかし、扉が開ききった時、俺達は驚きを隠せなかった。

話の切り方が下手になった気がするウェイターです。次の更新は再来週までに出来たらいいな。


感想、愚痴、不満などありましたら遠慮なくどうぞ。私の答えられる範囲で返答致します。

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