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第16.5輪

「ごちそうさまでした」


 多少人数に対して量の多かった食事を完食をという形で終え、片付けに入る。流石に9人分となると少し食器が多いわね。私が片付けているその後ろで他の皆は武器の手入れをしているようだけれど、誰か《鍛冶》を取っている人なんて居たかしら。そんな疑問を打ち消すように皆の会話が聞こえてくる。


「ユージさん、剣の手入れ終わった」

「ん、サンキュ」

「ユミさん、私の短剣もお願いできますか?」

「問題ない」


 なるほど、ユミが《鍛冶》を持ってたのね。前はそんな感じしなかったけれど、いつ取ったのかしら。あとで聞いてみようかしら。多分全くいじっていない私よりもレベル高いわよね。何したらレベルが上がるのか少し聞いてみようかしらね。


「セリカ、終わった」

「ありがとうございます」

「んー…」


 やることが無くなったのか周りに何かないだろうかと視線を巡らせているユミ。そして、その視線は私のところで止まった。…目があって気がついたけれど全然片付け進んでないわね。


「モミジさんは、手入れ…要らない?」

「え?あ、お願いするわ」


 突然言われたので少し素頓狂な反応をしてしまったけれど、それはどうでもいい。こういう場所で武器の手入れができると言うなら頼むのが一番いいだろう。武器が無くては戦うことができない。


「じゃあ、頼むわね」


 と、大剣を鞄から出してから片付けに入る。まあ現実的にいうならやることと言えば刃についた油をぬぐって研ぐくらいだろうか。ここはゲームだから他にも何かしらの工程が入るかもしれないけれど。


「それにしても少し時間がかかるわね…」

「姉さん、手伝いましょうか?」

「ユカ?」


 声を聞こえたほうを振り向くと小首を傾げたユカの姿があった。


「まあ本音を言えばレベルが上がればいいな、と言うところなんやけど」

「そうでしょうね、まあ人間本当に何も利益が出ないことをするのは少数だからそれを悪いことと言うつもりはないわ」

「ありがとう」

「別にお礼を言われるようなことは言っていないのだけれどね」


 まあそれでも何かしらの謝罪かお礼を言うのが人と言うものなのだろうか。それと、ユカを見て思い出したことがあるので少しばかり質問してみる。


「そういえば、スイーツの研究のほうは進んでいるのかしら?」

「まあ、ぼちぼちといったとこやなあ…」

「そう、何か足りない物があればイベントが終わった後にでも私の出来る範囲で取ってくるわ」

「いや、そんなことせんでもいいです」

「私が早く食べてみたいからするのよ。それに、そっちもレベルが上がると思うし、良いんじゃないかしら?」

「あー…、じゃあお願いします」


 苦笑しながら了承するユカに少し本音を言い過ぎたかと思ったが、まあ大丈夫だと思いたいところである。…現実だとお金がかかるケーキとかをこっちだとゲーム内で簡単に手に入るような通貨で食べることができるのだ。研究を手伝わないという選択肢はないだろう。それに、手伝う過程で何か面白いものも手に入るかもしれないし、基本的な作り方は私も知っているので出来たものを出しあうと言うのもありだろう。簡潔に言うととても楽しみなのである。


「それにしても、やっぱり姉さんの料理には敵わんなぁ…」

「時間をかけて練習と失敗を繰り返せばいいのよ。最初から何でもできるような人間なんてこの世にはいないし、仮にそんなのが居たら私は人間のカテゴリーに入れたくないわよ」

「随分ときつく言うなぁ…」

「きつく言えるほどそんな人間は存在しないと言っているようなものよ」

「さよか、まあスイーツは姉さんと協力してやっていきたいと思うとるんですが、大丈夫ですか?」

「問題ないわ」

「じゃあ、宜しくお願いします」


 普段の関西弁キャラが結構崩れていることに気がつかない様子で、妙に畏まっているユカ。そんなに畏まらなくても、と思ったけれど、彼女なりに何か色々考えがあるのだろうと敢えて何も言わないでおく。まあ素が出ているんだったら貴重な一面を知ることができ後でも思っておきましょう。


「大剣の手入れ終わった」

「ありがとう、じゃあその辺に置いておいてくれるかしら、後で仕舞うから」

「了解」

「…ユズちゃんから姉さんはコミュニケーション能力は無いって聞いてたんやけど、そんなこと無さそうやな」

「へぇ、ユズは私のことをそんな風に見ていたのね…」

「ちょ、ユカちゃんそれは言わない約束「ユズ、イベント後にアレやるから覚悟して起きなさい」うぅ…」

「まあ、人は実際に接してみないとどんな性格してるかわからんもんやしな」

「そうね、今ワイワイ雑談しているユージだって学校だと意外と静かに過ごしているくらいだもの」

「なんか結構ひどいことを言われた気がする」

「気のせいよ」


 その後も暫くユカと雑談しながら食器の片付けをしていた。終わるころには日が昇り切っていたが、まあいいだろう。自分の大剣を鞄に仕舞ってから雑談の輪に入る。


「ん、終わったか。じゃあそろそろ情報交換でもするか」

「そんなことの為に私を待ってたの?」

「そんなことって、結構重要なことだと思うぞ」

「そうだよ、お姉ちゃん。他の人から聞いた情報を回してもらうより情報を持っている人が近くに居るんだから直接聞いた方がいいって」

「そこまで言うなら、まぁ…」


 さて、情報交換で整理した情報を以下のとおりである。まずは私たちの方から。

 最初にセイヤを除いて入った森をしばらく進むと湖があってその中に謎の石像があった。これはユージがスクリーンショットを取っていたので全員で確認した。


 次に、セイヤと合流した時に話していた内容で、ある方向にいったプレイヤーが帰って来ない、もしくはボロボロの状態で戻ってきたというもの。これはダンジョンのような物があるとみてよさそうだ。


 最後私たちの言った側の森のボスはセイヤが狩って来た猪でよさそうだ。向こう側にこれ以上の脅威はいないと見ていいかもしれない。


 次にユズ側。

 謎の地震について今も調べているけれど何も情報がつかめていない、とのこと。まあ当然ね、原因は私だし、仮にそんな攻撃を繰り出すような魔物がいるならこのイベントの難易度を間違えているんじゃないか、と騒ぎになるだろうし。


 次、ユズが何かしらの夢を見たと話していた。ゲーム内の睡眠でみる夢は何かのイベントだと踏んでいいかもしれない。今は何が起きるのかわからないため保留とするがこのイベントに関する重要な手掛かりではないだろうか。


 次にユズがいた方面のボスは〈オーク〉ではないかと話が出ている。私は協力して倒したあの熊がボスなのではないかと思ったがあの強さは森に居るにしては不自然に強いと言うことでボスとはまた別のカテゴリーに入る魔物ではないかという話でまとまった。


 最後、あの熊について。不確定情報が多く、確実なことは言えないが、このイベント内の最大級の魔物ではないだろうか、ドロップアイテムも良いものが多かったし、余裕があるなら倒したいところではある。でも日が出ているうちに戦うのは勘弁したい。HPを一定以上減らした時に攻撃したものがターゲットになるのは実際戦って分かった。それと、あの状態では防御力、攻撃力共に上昇し倒すのが困難なため、あの状態にさせずに倒すのが一番いい方法だろう。それと、木をへし折りながらこちらに突進してきたが、どうやら木にぶつかるたびに微量だが体力を消耗していたようだ。ユージ達が攻撃をやめてもこっちを追いかけてきた際、私が攻撃をしていないのにもかかわらずHPが減っていたことから推測できる。ちなみにあの熊が倒した木は全て回収済みである。


 そして共通の情報として、このイベントに出てくる魔物の大半が野営をするにあたっての便利アイテムを落としてくれるというものだった。


 ここまで纏めては見たもののこれと言って気になる点は無い。いや、実際にはあるがどのように調べればいいのかが分からないため何もできないと言ったところだろうか。


「さて、こんなものかしらね」

「そうね、やっぱりイベントの半分も過ぎていないからこれと言って大きな出来事とか無いものね」

「とりあえず楽しむのが一番だと思います」

「賛成」


 それぞれの情報を出し合ってみたが脅威になるような存在は無く、普通に楽しんでいられる範囲の難易度だと言うことなので結局楽しむのが一番という結論に至った。色々と間違っている気がするけれど、皆がいいと言っているので良いのだ。


 さて、これからの方針をどうしようかしら…

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