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第8輪

「ごちそうさま」

「ごちそうさまー!!」

「柚子、皿は台所に置いておきなさい」

「はーい」


 足音を煩く鳴らしながら柚子が廊下を走って行くと同じくらいに食器の片付けを始める。家で走ると埃がたつので後で柚子に注意しておくべきね。皿を洗い終わり、テーブルを拭いてから自室に戻りWWOにログイン。それにしても私がこんなにゲームやるのは初めてね。まぁ暇つぶしくらいにはなるのだけど、余りこっちばかりやっているとアニメの録画がたまってしまう。近いうちに時間をとるべきね。


 自室に入り、VRギアをかぶりベッドに横になってからログイン。さっきログアウトしたところと同じ第二の街からスタート。それにしても自分の体が小さくなっているのに違和感を覚えないあたり良くできてるわね、このゲーム。体に対して髪が長いのが動きづらいけれど、髪を切ることはできないようなので諦めるしかないわね。便利なアイテムができればいいのだけど。


「あら、2人とも早いのね」

「私は5分前を心がけてるだけだよ」

「食器の片付けが早めに終わったから来ていただけよ」

「そう。で、モミジの武器だっけ?」

「そうね。できれば使いやすいのが良いのだけど、初期装備と同じくらいの重量の大剣って売ってるのかしら」

「見ないと分からないわね、早速行くわよ」


 と、ずんずん進んでいくサクラ姉ぇに慌ててついていく。進むたびに活気のある方から遠ざかっているような気がするが気のせいであってほしい。


―――数十分後


「完全に住宅街だよね、ここ」

「そ、そうかしら、多分このさきに店が」

「あるわけないでしょう。いい加減街をぶらつくのにも飽きたわ」

「とりあえず、戻る?」

「そうね、そうしてみるわ」

「こちらとしては街のマップ埋まったからいいけれどね」

「街のマップなんか埋めてどうするの?」

「いつか役に立つと思っただけよ」

「じゃあ戻りましょう、ユズ、モミジ行くわよ」

「また迷ったりしないわよね…」

「こ、今度はマップ見るから大丈夫よ」


 いまいち信用できないことを言うサクラ姉ぇについて言って最初の入り口辺りまで戻ってくる。やはり入口から続いている大通りのほうが店が並んでると思うのよね。そもそも住宅街にあるような店って大体大したもの売ってないでしょう。まぁサクラ姉ぇの勘が当たらないことが証明されたところで大通りを歩く。


「あ、向こうに防具屋」

「こっちは道具屋ね」

「やっぱりどの街も売り物変わらないのね」

「そうだね、なんか面白みに欠けるよね」

「運営は何を考えてこんな作りにしたのかしら」


 ここまで強い武器をNPCに販売させていると言うことはそのうちここにあるものじゃ全く歯が立たないような敵が出てくると言うことなのだろうか。少なくとも現状ではそんなことはないと言えるだろう。それでも引っかかることは引っかかる。…今悩んでも仕方ないわね。先に武器を買ってもらわないと。


「で、ここが武器屋なわけだけれど、今のレベルだとどれ買ったらいいのかしら」

「んー、今のモミジの戦闘能力を考えると下から4番目位かしらね。重量も初期と大して変わらないし」

「ならそれで良いわ」

「ああ、私の8000Gが…」

「ユズ、大した金額じゃないから気にしない気にしない」

「そういえば、二人は今どのくらい持っているの?」

「私は12万くらいね」

「えーっと、8万Gくらい」

「ものすごい差が開いてるわね…」

「モミジはどのくらい持ってるの?」

「…2000Gくらい」

「少なっ!」

「いや、二人は魔物の素材とか売ってるから良いかもしれないけれど、私は生産活動とかで使っちゃうから余り稼げないのよ。それにいくら効果が高くてもNPCに売ると同じ値段だから売ってないし…」

「うん、まあ、仕方ないわね」

「生産職は後から強いのよ、後から」

「そうだね、がんばれ」

「で、その二人で8000Gずつ出して買う武器って何?」

「鋼製の大剣」

「なんか重そうなのだけれど?」

「大丈夫だよ、NPCの腕がいいからちゃんと軽くなってる」

「じゃあ買ってくるわね」


 そう言って店の奥に入っていくサクラ姉ぇ。1、2分すると戻ってきて、


「モミジ、鞄開いておきなさい」

「分かったわ」


 恐らく開けた鞄の中に直接大剣を突っ込むのだろう。入れそこなったら結構ひどいことになるけれど、その心配はしなくてよさそうね。サクラ姉ぇはこういうところはしっかりしているのだし。


「じゃあ入れるわよ、ほいっと」

「ん」


 サクラ姉ぇがメニューから大剣を落とし、その下に構えてあった鞄にスルッと入っていく。本当に見た目のとのギャップがすごいわね、この鞄。一応容量は設定されているものの、武器や防具なら1つで1マス、日傘も一応武器扱いらしく1マス消費している。ポーションやマナポーション等の消費アイテムは20個で1マス、魔物の素材、薬草などは99個で1マス。それがメニューで縦6マス横8マスの大容量。正直言って持物に関してはそう簡単には埋まったりしない。山で倒した魔物の素材とか入っていても容量はまだ半分以上空いている。


「さて、武器も手に入ったし、私は戻るわね」

「その前に使わなそうな素材売っていけば?」

「…そうね、蜂の素材が余っているから半分くらい売っていくわ」


 山で倒した蜂の数はものすごく多い。全滅するくらいに倒してしまったため羽が83枚、針が65本、あと、なぜか蜂本体から手に入った蜂蜜が55個。これを半分くらい売ることにする。武器屋だと買い取ってもらえないので、道具屋で買い取ってもらう。すると、蜂の羽が1枚280G、針が1本540G、蜂蜜は1つ800Gだった。売った数は羽43枚、針35本、蜂蜜25個なので、合計50940G。正直、高く買い取りすぎているような気もするけれど、本当はそれだけの価値が出るほど強いのだろう。夜の私のステータスは結構チートじみてるものね。


「よかったね、モミジお姉ちゃん、一気に金持ちだよ!」

「そうでもないわ、生産やっているとすぐに無くなるわよ」

「サクラ姉ぇの言う通りね、生産道具は結構高いのよ。特に鍛冶とか」

「確か鍛冶って溶鉱炉とか必要だったよね、いくらぐらいするの?」

「設置型で一番安いのが設置の手数料込みで48000G、携帯型が75000Gよ」

「随分高いね、借りたりとかはできないの?」

「βやったからやってるなら知ってると思ったのだけど?」

「私たちずっと戦闘と攻略やってたからねぇ…」

「…まあいいわ。でさっきの質問の答えだけど、借りることはできる。ただし、鍛冶屋まで行って弟子にならないといけないから、自由性が失われるわ」

「なるほど、これも生産職が少ない原因かしらね」

「そうなると思うわ」

「そもそもこのゲームの売り文句ってNPCと交流することじゃなかったっけ」

「そういえばそうね」

「てことは、NPCと仲良くすることで色々と優遇してもらえたりとか…」

「ないわよ、多分、今はまだAIが調整中なのかまともに会話できるのが5%にも満ていないのが現状なのだし」

「サクラ姉ぇその辺は調べてあるのね」

「暇があるときは色々しているのよ、これでも」

「てっきり戦闘しかしていないのかと思っていたわ」

「失礼ね、そこまで戦闘狂じゃないわよ」

「それはともかく、私はもう戻るわ」

「わかった、じゃあね」

「気をつけなさいよ」

「言われなくてもわかってるわよ」


 メニューを開き、転移を選択すると、目の前に水色の渦が現れる。これに跳び込めば転移が完了するのだろう。ユズとサクラ姉ぇの視線を背中に感じながら渦へ飛び込む。青い空間の中、飛行をした時と似たような感覚の後、第一の街の風景が見えてきたのでそこにむかって進む。そして転移が完了すると渦は消え、広場に出た。


「さて、夜になるまで薬草とって、夜は夜で魔物でも狩ろうかしら」


 資金集めと、スキルレベルをあげるのと、目的は色々ある。スキルレベルを上の方に上げれば、もしかしたら昼でもそれなりに戦えるようになるかもしれない。資金は自分の身を隠さないと常に色々な意味で危ないので拠点を作るために集めたり、その拠点だけでも街に出る必要が無くなるくらいには発展させたい。飽くまで目標だから今すぐにやる必要はないから、とりあえず街の近くで薬草をちまちまと採集する作業を続けるだけだけれど、それにしても日傘をさしていると少し効率が下がるわね。夜も採集に使おうかしら。


 鼻歌交じりに採集を続けているうちにゲーム内ではもう夕方になっていた。しまったと思い、リアルの時間をみると18時49分。薬草は十分な数集まったから一旦ログアウトして夕飯を用意しないと…


 ログアウトして少し早歩きで台所兼リビングに向かう。扉を開けて中に入ると


「あら、紅葉。そんなに慌ててどうしたの?」

「あ、いや、何でもないわ」

「本当に?」

「お母さんたちがまだ帰ってないと思って夕食用意しないと、と思って少し焦っただけよ」

「そう」


 こちらをみて微笑む母さんを見ながら、何だもう帰ってたのか、と思って焦った自分が少し恥ずかしい。いつもなら普通に8時くらいまで出かけるのに、何かあったのだろうか。いや、それはないわね。二人ともこう見えて結構頭の回転が早く、どんな事態でも冷静で居られると言う正直見ていて気持ち悪い一面をもっているもの。某巨大お化け屋敷で後ろから追ってこられてるのに平然と歩いてどう行けば出口に行けるか、なんて話していたときは何でこんなに冷静で居られるのか理解が追いつかなかったときある。柚子はそういうときは大声で歌を歌いながら雰囲気を壊すのだけれど。


「そろそろ柚子呼んできてくれる?」

「いや、その必要はないさ」

「いやータイミングぴったりだったね」

「そうだな」


 と。父さんと柚子が入ってきた。何があったのか少し気にならなくもないが、あえて何も聞かないでおこう。どうせ扉を開けたら目の前に父さんがいた、とかそんなかんじだろう。


「じゃあ皆でテーブルに夕飯ならべちゃってくれる?」

「はーい」

「わかったわ」

「じゃあ父さんはお茶でも用意するかな」


 それぞれ料理やらお茶やらコップやらを並べて席に着く。今日は野菜が多めね。野菜は炒め物よりもサラダのほうが好きなのだけれど、今日は残念ながら炒め物になってしまっている。まあサラダのほうが好きなだけであってちゃんと食べるけれど。


「じゃあ、いただきます」

「いただきまーす」

「いただきます」

「はい、いただきます」


 なんか久しぶりに両親と一緒に夕食を食べる気がする。2人とも働くの好きだからいっつも帰ってくるのが夜中なのよね。今は夏休みだから帰ってくる時間にまだ起きていることも結構あるけれど。それにしてもまだ母さんの料理の腕にはかなわないわね。何が違うのだろうか、やはり父親、私のおじいちゃんが3ツ星ホテルの料理長やっているからだろうか。そのうち直接教えてもらいに行こうかしら。所詮私のなんて見よう見まねでやっているだけだし。


「柚子、早くゲームしたいからってそんなに急いで食べたらのどにつまるぞ」

「ふぁふぃほうふ!」

「ちゃんと呑みこんでから話しなさい」

「紅葉も最近ゲームやってるみたいだけど、柚子と桜とやってるんでしょう?一緒にやってて楽しい?」

「まあね、結構ひどい目に遭ったりしてるけれど」

「例えばどういう感じに?」

「戦闘中に二人がコントを始めたせいで死にかけた」

「ハハハ、それはまた苦労したな」

「しかもVRだから、制限があるとはいえ痛いものは痛い」

「お母さんだったら気が滅入りそうだわ」

「プレイスタイルは自由だから好きなことすればいいんじゃない?」

「そうなの?」

「ええ、私はゆっくりと街に居たいのだけれど、柚子と桜姉ぇに引っ張られて無理矢理戦闘させられているようなものだもの」

「あらあら、だめよユズ。少しくらい自由にやらせてあげなきゃ」

「だって…………3人で遊べるの久しぶりだったんだもん」

「最後のほう聞き取れなかったんだけどなんて言ったの?」

「ふーん、そういうことか」


 柚子が最後の方だけ声を小さくさせたせいで聞こえなかったのだが、父さんにだけは聞こえたみたいで、私と母さんは何を行ったのか全く分からなかった。後でもう一度聞いてみようかしら、でも柚子が正直答えるのは余りないからダメかしらね。さて、ちょうどお茶碗の中も空になったのだし、私はごちそうさまかしらね。


「ごちそうさま」

「あら、もういいの?」

「私もごちそうさま」

「何だ、柚子ももうごちそうさまか」

「まあ、色々あるのよ」

「私も」

「仲がいいのね」

「まるで父さんたちみたいだな」

「そこまでではないわよ」

「私は先に行ってるね」

「ん」

「紅葉」

「なにかしら」


 父さんが珍しく、割と真剣な顔で呼びとめる。


「柚子があんなに楽しんでるんだ、しばらく付き合ってあげなさい」

「構わないわ、どうせ今のゲーム私も結構楽しんでる訳だし、柚子のあんな笑顔は結構久しぶりにみたもの」

「遊べるうちにしっかり遊んでおくんだぞ、大学とか行ったらそんな時間なんてなかなかとれないんだからな」

「そうね、私は結構飽きっぽいから断言はできないけれど、今のうちに遊んでおくことにするわ」


 そういってリビングからでて自室に行く。慣れた手つきでVRギアをつけてベッドに横になってログイン。ゲーム内は日がほとんど落ちていてもうすぐ夜になるところだ。…今日は徹夜で色々やってみようかしら。その前に持物を確認して何をするか決めるべきね。現在持っているのは、54640G、蛇、灰熊、蜂、女王蜂の素材、生産に必要なものと調理器具、この前破けた時に渡されたワンピースの替えとあとポーションとかの消耗品。こんなものかしらね。とりあえず、日も落ちたことだし、この前行った森のもっと奥まで行ってみようかしら、それとも木を伐採して保存でもしておこうかしら。椅子とか作るのが面白そうね。でもそれなら工具を買う必要があるし、クコラの実も育てると言っておいてまだ何もしていない。困ったわね、やりたいことが多すぎるわ。2時間くらいは狩りの時間に当てるとして、残りはどうしようかしら。…その時に考えればいいわね。


「さて、とりあえずまだ使ったことのないスキルを検証していきましょうかしらね。この辺の敵ならまず負けることはないでしょうし」


 まだ使っていないスキルは《吸血》《魅了》の2つ大体効果は予想がつくけれど例外もあるだろうからボス戦の時とかに賭けで使うようになるよりかはしっかりと検証したほうがいいだろう。


「まずは《魅了》。」


 スキルの発動を宣言すると、MPを微量消費し、警戒マップに赤い光、敵が多数発生し始めた。自分では何かをしていると言う自覚はないけれど、魔物にはわかる何かがあるのだろう。赤い光は10数個あるけれど、夜のステータスなら何の問題もない。近づいてきたのからサクサクと倒し始める。さっき買った大剣は切れ味が初期装備に比べて格段に良く、敵を倒した後の隙も余り発生しない。20分ほど、魅了を使いながら戦ってMPがだいぶ減ってきたので、ここでいったん打ち切ることにする。今の戦闘によって《大剣》が13、《魅了》が4まで上がった。


 尚、ここまでやって気付いたことだが、武器スキルは一定のレベルが上がるとアーツを覚え、魔術などのスキルはレベルが上がると、射程範囲が伸び、新しい魔術を覚える。良くわからないのが警戒などの補助スキルや固有スキルでこれは何か他の法則があるかもしれない。範囲が伸びるだけとか、スタミナやMPの消費が少なくなるとか。実際確かめられるわけではないから何とも言えないのが残念ね。スタミナもHPやMPのように視覚化して分かればいいのだけれど、実際に疲れてくる感覚が来るのでそれでスタミナの減少を察知するしかない。生産スキルはレベルが上がると、効率が良くなったり製作の成功率上昇、上位のものが作成可能になったりする。


「よし、次ね。《吸血》使うなら1対1のほうが良いわねこの時間なら〈ウルフ〉が歩き回ってたはずだけれどどこに居るのかしら」


 個人的には余り使いたくない《吸血》だが、人型の魔物が現時点では〈ゴブリン〉くらいしかいないので仕方が無い。あと詳しく知るためにさっきの《魅了》を使った時もそうだけれど、《器用》をはずして《研究》をメインスキルに入れている。《研究》によって得られた《魅了》の情報は以下の通り。


《魅了》


 自身の魅力を周囲に広げ敵を集める。

 《???》→《魅了》の順に使い、相手が抵抗に失敗した場合、追加効果が発生する。


 1行目の情報はともかく、重要なのは2行目だ。何かのスキルとチェーンを組むことで追加効果が発動するのは大きい。これによっていざというとき戦況が大きく変わる可能性もある。これからは積極的に《研究》を使う必要があるわね。あと《研究》のレベルが2になった。


 《吸血》を使うために〈ウルフ〉を探し始める。〈スネーク〉はたくさんいるが、毒蛇の血を吸おうものならば毒の状態異常を貰ってもおかしくはない。よって却下。〈グレイベア〉は動きが大きいため噛みつくまでの間合いにほとんど接近できない。虫は前と同じ理由で却下。〈コボルト〉はこの時間出現しないので無理。〈ラビットファング〉も同様。よって〈ウルフ〉を探しているのだ。まあ最悪他のプレイヤーにPVP挑んでその時に使えば良いのだけれど。おっと《警戒》に反応があるわね。あれは…


「〈ウルフ〉、見つけたわ」


 赤く光が灯っているということはこちらと戦う気があると言うことだ。実験台になってもらうことにするわ。〈ウルフ〉が近寄ってくるのにこちらも答えるように距離を縮めて行く。そして〈ウルフ〉との距離が約5メートル位になったあたりで〈ウルフ〉が体当たりを仕掛けてくる。もちろんそんなものにあたるはずが無い。半歩横にずれて体当たりを避け、


「《吸血》」


 スキルを宣言する。すると、目の前の〈ウルフ〉に向かって噛みつくように体が勝手に動く。2本の牙を相手の胴体に突き刺し、血を啜る。みるみるうちに〈ウルフ〉が干からびて行き、HPが0になったところで牙をつきたてるのをやめる。《研究》によって情報が開示された。


《吸血》


 相手に噛みつき、血を吸う。この時、相手は抵抗して振りほどかない限り血を吸われ続ける。血を吸った側は相手の減らした分のHP分回復する。

 牙は任意のタイミングで抜くことが可能。

《吸血》→《魅了》の順で使い、《吸血》時に相手のHPを0にしておらず、相手が抵抗に失敗した場合相手はこちらに『服従』する。


『服従』


 この状態異常にかかったものはかけた側の命令を自分の意志とは関係なく実行する。

 『服従』は状態異常をかけたものが死亡した場合のみ解除される。


 …なかなかえげつないような気がするわね。ようするに《吸血》と《魅了》を使った場合仲間、というか奴隷を作れるってことでいいのかしら。どちらにしろやり方によっては逆転の一手になるわね。残りの時間はこの二つのスキルのレベルを上げることにしましょう。





「ああ、疲れたわ。まさかあんなに成功率が低いとは思わなかったわね…」


 夜の芝生に寝転びながらそんなことを呟く。《吸血》→《魅了》のチェーンを何度も試したもののこの約2時間で成功した数は両手の指で足りてしまうくらいだ。それだけ使ったおかげで両方ともスキルレベルが13まで上がったのだけれど。まさか《大剣》に追いつくとは思わなかったわね。ちなみに服従させた魔物には全て自害を命じてみた、が流石にそれは従えないくらい私の力が弱かったのか、自害を命じた瞬間に跳びかかってくるものが多かった。もっとレベルが上がれば何でも聞くようになるのかしら。また、研究もつけっぱなしだったせいかレベルが5まで上がっている。


 残りの時間はポーションでも作ればいいわね。ひたすらすりつぶしては水と混ぜてを火にかけるを繰り返す。火から下ろすタイミングが早いと薬草のHP回復の効果があまり出ず、遅くなるとこれまた効果が薄くなる。当然のようにやっているが結構神経を使うのだ。マナポーションは材料が無いので作ることはできない。何処かで見つけて薬草もマナポーションの素材の霊草も栽培しようかしら。


「ふあぁ…」


 空が白んできたあたりであくびが出る。リアルだともう0時になろうとしている。徹夜しようと思ったのだけれど、鞄のなかにあった薬草も全てポーションに変わってしまったのでログアウトして眠ることにする。明日は第二の街周辺を探索することにしよう。夜の間だけだけど。

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