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空だって、飛べる気がする
すみません、戻って来ました…!
ひょろいじいさんはつかつかとあらぶる椅子に歩み寄り、父様の頭に指をめり込ませんとするように鷲掴んだ。
そして、そのままの状態で腕を一気にひきあげる!
…柔らかく父様の惨状を表現すると、某狸じゃないロボットのシークレットな道具で割りとメジャーな方に入る、空飛ぶタケトンボを実際に装着した人間のような有り様だった。
端的に言うのなら、絞められる寸前のニワトリ。
「情けない奴だのう、相も変わらず」
決して狭くはないはずの部屋の内に、エコーが掛かったかのような大きな声が響きわたる。
それは、魅惑のバリトンボイスだった。
いやむしろ、低すぎてどこの地獄からいらっしゃった鬼神様ですかと丁重に伺いたくなる感じではあったが。
機嫌の悪さだけはすこぶる伝わった。
本当に感じ取りましたのでこっち見んな!
非常に緩慢な動きで、首を俺の方に傾けたかと思うと。のっし、のっし、のっし、と。背景に文字が幻視できる迫力でひょろいはずのじいさんが近づいて来る。右手に父様という名の獲物を捕獲したまま。