属性判定の巻!
その後は特に何事も無く、いよいよパーティーのメインイベント、属性判定の時間になった。そもそもこのパーティーは、俺の属性をお披露目するために開かれたといっても過言ではない。
属性判定とは、使える魔法の属性を判定するのではなく、それぞれの魔法の才能の有無を調べるものらしい。
何故なら、この世界の人間はすべての属性を使うことができるからだ。
これだけ聞くとチートが過多すぎる全員無双状態な世界。
しかし実際は、水を指先から滴らせたり、木材に小さな火種をつけたりするのがやっとという、魔法というのもおこがましい位のショボさでしか使うことの出来ない人間が大半を占めている。
才能があれば、元日本人の俺が想像するような魔法も難なく使えるらしいが。
さて、魔法の属性は、火、水、風、土、光、闇の全部で六種類。
ゲームでよくある設定の、属性が上位変換された雷やら氷はない。
全て六種類の中に含まれる。
家庭教師替わりの万能筆頭執事、セバミに教えてもらったことだが忌み嫌われている属性はないらしい。
だから安心して判定に挑める、なんてうまい話があるはずもなく。
魔法使いとして有能だということはつまり、将来有望なエリートになれる可能性が高いということだ。力のある魔法使いの需要は高い。平民出身だとしても、場合によっては並みの貴族よりも出世が望める。
そう。問題はここにある。
考えてもみて欲しい。
平民が場合によっては貴族よりも偉くなるのだ。ということはつまり、逆に言えば貴族が場合によっては平民よりも地位が下になる可能性があるということである。
これは不味い。
貴族には体面というものがある。魔法の才能が出身において重要、つまり有能さの分かりやすい指針となる中、貴族の家の子供が才能無しと判断されたらその家は‘出来損ない’を輩出したとされるのだ。
俺にはあんまりな話だと思えるのだが、これは残念なことにこの世界の貴族にとって一般常識。
これからの判定一つで人生がだいたいだが決まる。
貴族の子供は、大抵何らかの属性の才能を持っているらしく俺も心配ないとセバミを含む使用人さん一同と両親に励まされたがやはり不安なものは不安だ。
俺は会場の中央にある、最初に挨拶した舞台の上に立ち、目の前に置かれた水晶を見た。
父様の合図で俺は判定を開始する予定になっている。
判定の仕方は至って簡単。
水晶を上に掲げ、変化した内側の色を見て才能がある属性を判別するだけだ。
ちなみに、才能の強さは水晶の煌めきで判定するらしい。案外、適当じゃないか…。
大人達は違いがわかるらしいがな。
「では、我が息子ディレット・デュッセルドルフよ。水晶を上に掲げなさい」
父様の呼び掛けを聞き、俺はゆっくりと水晶に手を伸ばした。