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ハーブパンは、全部売れた。私、笑えた。心から笑えた。
作り笑顔ではなく、本当の笑顔でパンを渡された。
不幸じゃないって思っただけで、こんなに幸せになるなんて思ってもなかった。
誰かにこの気持ちを伝えたい
「アルト!私、笑えたよ!」
「貴様は、バカか。貴様は、何時もニコニコしているだろ?」
「確かにそうだけど…私、気づいたの…不幸じゃない。いま生きている事が幸せなんだって思ったらパンが売れて…」
「売り子が、幸せが大きいほどパンは売れるんだよ。何せ幸せを分けるだからね」
だから、パンが売れなかったんだね。私は、ずっと不幸だと思っていたんだ。怖かった。幸せになったら帰れないって思ったら
死にたくない。逃げ出してもよかった。だって、私を殺すことが出来るのは、アルトだけ
でも、私を守るって言ってくれた。私に居場所をくれた。
今、私の居場所は、アルトだけ
生きている事が幸せならそれで良い。アルトに殺されるなら幸せだよ?だって、これから好きになる人に殺してくれるなら幸せだと思う。
「と言う訳で…アルト、ありがとう」
っと微笑んで、抱き締めた。
好きだよ、って言いたい。
この気持ちが偽りだとしても私は、アルトを好きになっていくのが、解る。
好きだと思って、好きになって、好きだと言える。けど、偽りなのかな?
人を好きになったことは、ないからトキメキとか解らないけど、私は、思った。きっとこの気持ちは、もう二度とないだと
「ハナ、苦しいからやめろ」
「あ、ごめんね」
っとアルトから離れて、みんなを見る。んん?何で、皆にやけてるの?
…………
「っは!私、人前で何てことを…!!!」
なんてこった。私は、この大勢の目の前で、アルトを抱き締めてしまった。
わわわわアルトは、平然なのに、なのに
「ハナ」
「はい!」
声が裏返った。
「………今日は、ミネストローネだ」
「う、うん」
っと立ち去った。
何で、あいつは動じない!?神経質が可笑しいよ!なんだよ。バカ!もう!何で、私、一人で動じてるだよ。
皆の視線が痛い!痛すぎる。ちくしょうアルトのやつ逃げやがって
帰ったら噛みつこう