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ラストチャンス  作者: 花染
プロポーズから始まる恋愛も良いかもね
3/9

2

次の日私は、昨日と同じようにパン屋へ向かった。扉を開けた途端に数人の人が私を囲う。


え?何?これ?なんか恐い。てか、なんかキモいだけど


「ハナさん、昨日の話をしたら会いたいって来てくれたのよ」


っとマリーさんは、微笑みながら言った。私に会いたいだと!?なんてこった。そんな珍しいことが、あるだなんて凄すぎる。


男女5人っか


「ハナさん、想像したよりかも可愛い人!」

「ファンになりました!今度からハナさんの売るパンを買いますね!」


ファンだと!?こんな私にファンだと!?これは夢?


っと頬っぺたをつまむ。


「痛い…」

「どうしたの?ハナさん」

「夢じゃあなかった」


強い女性は、何時も嫌われる。私は、そう暴力女。私を受け入れる人がここにいる。マリーさん本当に天使だよ。


「さぁ!お客様を待たせたらダメだよ。バスケットを持って、ほら」


っとサブレットおばさんは、バスケットを私に渡す。


“笑顔で、パンを渡す”私が出来ないのは、心から幸せを感じてないから

だから、幸せを分ける事が出来ない。


「パンを下さい」

「はい!どうぞ」


だから、私は“幸せを分ける”ではなくてこの仕事を“楽しむ”事にした。

そうすれば、自然と微笑むからね。


そして、その5人から貰ったお金は…


「1200円」


昨日の倍以上。思わず笑みが浮かぶ。


「また明日も買うからね」


っと5人は立ち去った。嬉しいよりも驚きが大きい。


「今日からマリーとハナさんはペアとしてパンを売って貰うからね」

「今日からって昨日は?」

「本当は、売り子か仕込みかって悩んでいたんだよ。でも、マリーがハナさんを気に入ってね。


マリハナとして、一緒に頑張りたいだって」


良かった。仕込みって、作る人だよね?私、料理をすると、何故か爆発するんだよね。


「ありがとう、マリーさん」

「うんん。そんなことないよ。私、ハナさんと一緒にパンを売りたかったから」


っと微笑む。マリーさんの笑顔は、天使のようにキラキラしている。可愛いな!うん、うんこんな子と働けるだなんて、幸せをだよ。


「私、マリーを悪い人から守るから!」

「ありがとう」

「でも、本業を忘れるじゃあないよ」

「解っています」


っと私とマリーさんはお店を後にした。

二日目の売り子。

微笑む、微笑む微笑む微笑む微笑む。出来ねーよ!!


仕事を楽しんでいるのに、何故か私を見るなり走って逃げる人が多いとなると心が折れる。


私はベンチに座り考えることにした。


「パンを下さい」

「はい。パンね。どうぞ」


っと少年にパンをあげる。お金を受け取り、少年は隣に座りパンを食べる。


「お姉さんって、笑うの下手でしょ?」

「まーそうだね。下手だよ。下手で結構だよ」

「やっぱり」


っと笑いながら言った。なんとまー失礼なガキだ。


「ありがとう、また買うよ」


っと微笑んで少年は、立ち去った。パンは全部売れて、昨日より早く終わった。家に帰るより私は少しだけアルトに会って行こうか。


アルトに渡された地図をたよりにアルトがいるギルドへ向かうことにした。


歩いて30分。やっとアルトがいるギルドにつきゆっくりと扉を開ける。


「依頼かい?」


っと綺麗な女性が私を見る。

強そうな人が多い。見とれているとガシッと頭を捕まれる。


「なにやってるんだ」

「アルトの知り合い?」

「ああ。

俺の………妻になる奴だ」


………………………………

…………


ん?妻???

今、アルトは、妻って言ったよね?聞き間違いかな?


「へー妻ねぇ」

「強い女性だぞ」


っと私を抱き締め頭を撫でる。

恥ずかしさがMAXになった私はアルトをグーで殴った。


「ひ、人前で恥ずかしことするな!」

「ほらな?」


集まるギルドの人。妻って何?え?どいうこと?アルトの嘘だよね?


記憶喪失で、アルトが助けたって設定だもんね。妻になるって設定はないよね?


アルト何処かで頭を打ったのかな?


「私、帰る」


まだ、ドキドキが止まらない。だって告白もないのに、いきなりプロポーズはない。


「ハナ」

「何よ」

「今日は、カレーだ。家で待っていろ」


私は犬か。まー良いや。

カレーか。アルトの料理は本当に美味しい。けど、あの顔。何か悪巧みをしているあのアルトの顔はムカつくから


「アルト、私が“美味しいカレーを作って待っているから”」


っと微笑む。

すると、アルトは驚いた顔をした後優しく微笑み


「ああ。楽しみにしている」


っと言った。

フフフフ。私の料理は本当に不味い。目から血が出るほど、不味い。


さぁ、アルト楽しみに帰って来てね。


私は家に帰ってカレーを作る。そして、出来たのはカレーではなくよく解らない物体ができた。


私にも解らない。さてはて、どっからどう間違えたのか理解が出来ない。


「ただいま」

「お帰り、アルト」


とカレーという物体をアルトに見せた。アルトは変な顔をして


「…………

貴様は何を作ったんだ?」

「カレーだよ、たぶん」

「うむ。カレーか、貴様にはカレーに見えるのか?俺には未知の食べ物にか、いや食べ物すら思えんがな」


っと一口食べ真剣な顔で


「そして不味い」


だろうね。うん、うん解っていた結果だよ。私は、物体を片付けようとする手をアルトは握る。


「俺が食べている最中だというのに片付けるのか?」

「食べるの?」

「ああ。食えない事もないからな」


っと残さず食べた。うん。明日、アルトのお腹が心配だから薬ぐらいは置いておこう。


「っで、妻って何?」

「妻は妻だ。貴様はそんなことも解らないのか?」

「いや、解るけど…」


どう意味なの?


アルトは、私を突然抱き締めて顎を持つ。アルトの目と私の目が合うように


こうしてみるとアルトって格好いい。絶対にファンもいるだろうなぁー


って、思っている場合ではない。


「異世界人だろうが、夫婦となれば、貴様は死なないからな」


話を聞くと夫婦となれば、異世界人はこの世界の人になるらしい。私は、帰りたい。でも、心のそこでは違ったかもしれない。


「私のために?」

「ああ。俺の人生まるごと貴様にやる」


私を守るために、アルトは全てを捨てた。そこまでしなくていいのに、バかだよね。


「断る」

「は?」

「告白も無しでいきなりプロポーズ?

あり得ない」


好きとか嫌いとかの問題よりも順番が気に入らなかった。


「それに私は、あんたが好きじゃあないし、嫌いでもない。会って3日で妻だなんて、ハッキリ言って引く!」

「ッフ、残念ながら俺も好きでも嫌いではない。だが、これから好きになる自信はある」


っと自信を満ちた顔でアルトは言った。うん、うんその自信をわけてくれ。それよりも離して欲しい。そろそろ心臓がヤバイ。


「ハナ」

「何よ」

「いったいあのカレーに何を入れたんだ?」


っと言って走ってトイレに向かった。うん。やっぱりお腹を壊したか。


「アルト」

「………何だ?」

「私もアルトを好きになるように頑張ってみる」


ムカつく奴だけど良いところがあるからね。うん、そしてトイレの前で言うのはあれだけど、一先ず私は、アルトを好きになる努力はしてみることにした。

「…………って言っても人を好きになるってどうやったら良いの?」


私は、人を好きになった事はない。一度はあるはずの初恋なんて、16年ないのも可笑しいけど、本当にない。


好きになるってどうやったら良いのかな?

トキメキ?


トキメキって何?美味しいの?


アルトがトイレから出てきて私を見る。


「貴様はやっぱりバカだな。考えも無しで、俺を好きになるって言ったのか?」

「あんたが、私を好きになるなら私もあんたを好きになるのが当たり前でしょ?」

「だったら、貴様が作った料理で俺はこの様だ。責任とってくれるか?」


うん。あんたが勝手に食べたんだろうが



「薬を飲め」


っとコップに入った水と薬をアルトに渡す。アルトは、黙って薬を飲み一つしかないベッドに向かって寝た。


私の料理ってこんなにもダメなのだろうか?不味さを越えて殺人料理になってしまったのだろうか?


一口食べる。


「っ~~~~!!!」


不味い!ゲボ不味い!物凄く不味い!!不味すぎる!!!

これをアルトは、食べたって!?顔色一つ変えず食べる。アルトって


「バーカ、残せば良いものを」


本気で、バカだね。よし、私は、ソファーで寝ようか。っと何時もアルトが寝る大きなソファーベッドに向かった。


考えて見ると、アルトに出会って3日。やっと名前で呼ばれた気がする。


私、アルトを信じてアルトを好きになって、自分の世界に帰るとき悲しいのかな?


泣いてしまうのかな?


私はアルトを、この世界を忘れてしまうのかな?


アルトは、どう?私を好きになって私が自分の世界に帰った時悲しい?辛い?


それとも嬉しい?


アルトは、私を忘れる?


私は、アルトを好きになっても良いの?アルトは、私を好きになって良いの?


悲しいだけだと解っているのに、私たちにはこの選択しかない気がした。





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