第二話、思い出
女の娘
「…ありがとっ。」
女の娘は目のすぐ横の涙を手で拭った。 田代(そんなに大切なものなのかな?)
「その下敷きって、どんなやつ?」
田代は耳をほじりながら言った。 女の娘
「…ピンクの、スケルトンの下敷きで、友達の寄せ書きがいっぱい書かれてある。」
田代
「へぇー。」
田代はテキトーにうなずいた。 田代
「どこで落としたの?。」
田代はフツーに聞いた。 女の娘
「…分かんないよ。」
田代
「じゃあ、今日はどこに行った?。」
田代はうつむいたまま言った。 女の娘
「…えっと、この道を通って図書館に行ったの。」
田代
「…じゃあオレはこの道を通って、図書館の方探してくる。」
そう言って田代は図書館への道を歩いていった。
・・・・・ ずいぶん下敷きを探しただろうか、辺りはすっかり暗くなっていた。
そして田代が自分の時計を見てみると、8:53と示していた。
田代(やっべー、渡鬼始まっちゃうよー。
) 田代はそう思い、図書館にきた道を走った。ちなみに田代の家から図書館は、歩いて十分ほどの距離である。 女の娘(…もうこんな時間。あの人まだ探してくれてんのかな?もう二時間は経ってるよ。) 女の娘はまだ下敷きをあきらめ切れず、公園の茂みなどを探している。 田代
「どぉ、見つかんない?。」
女の娘が真剣に探していると、向こうから田代が自分のケツをかきながらこっちへ向かって来た。 女の娘
「うん…。こんな時間までありがとっ。あとは私一人で探すから…。」
そう言って女の娘はまた茂みを探しはじめた。 田代
「…いいじゃん。」
女の娘
「えっ…。」
田代のつぶやきが女の娘の耳に入り、女の娘は少し動きが止まった。 田代
「別にいいじゃん。そんなもん無くたって。必死こいて探すもんじゃねぇだろ?。」
田代はつっけんどんに言った。」
女の娘
「どうして……。」
女の娘は弱々しくつぶやいた。