回収日
掲載日:2026/03/23
離婚して、会社も辞めた。
三十六歳。ワンルームで一人。
久しぶりに、部屋を掃除する気になった。
床に散らばったゴミをまとめていく。
空き缶、弁当の容器、コンビニ袋。
その中に、見覚えのないスマホがあった。
電源は入る。
ロックもかかっていない。
写真フォルダを開く。
最初は、部屋の写真ばかりだった。
このワンルーム。今と同じ配置。
だが、次の一枚で手が止まる。
ゴミ袋が写っている。
パンパンに膨らんだ袋。
そして、その隙間から——人の指が見えていた。
思わず、今まとめているゴミ袋を見る。
同じだ。
ありえない。
写真の日付を見る。
“明日”になっていた。
喉が渇く。
次の写真。
玄関の前に、黒い服の男。
帽子を深くかぶっている。
これも“明日”。
さらに次。
その男が、部屋の中にいる。
視点は低い。床に近い。
最後の写真。
ゴミ袋の内側から、こちらを見上げる構図。
男が、袋を縛っているところだった。
スマホを落とす。
そのとき、玄関の外で音がした。
ガサッ。
誰かが、ゴミを触っている音。
ゆっくりと、ドアノブが回る。
――今日は、まだ回収日じゃないのに。




