表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

第6話 相談役として、厄介ムーブをかます。

 足立さんと雲雀の関係はそつなく上手く続いていた。丁度一週間前に交際一ヶ月を突破したようだ。

 もしかしたら別れるかもしれない、嫌われるかもしれない。そんな足立さんの不安は杞憂に終わった。変に拗れたり喧嘩があったりといういざこざはなく、言葉通り良い感じらしい。

 そんなこんなで最近は平和ボケした日常を過ごしている。

 今は昼休み。中庭のベンチに雲雀・足立さんカップル、プラス俺という構図だ。


 足立さんは弁当箱、俺と雲雀は惣菜パンを手に昼食をとる。俺は雲雀を挟んで向かい側にいる足立さんを見る。


「足立さん、こうやって話すのは久しぶりだね」


「うん、雲雀くんと付き合ってることを話したぶりかな」


「あぁ……じゃあ、一ヶ月ぶりか……」


「だね」


 口だけで軽く笑みを作る足立さん。相変わらず雲雀の前では猫を被っているようだ。

 お淑やかな彼女モードと言うべきか。俺には煽ったり冗談を吐くわりに、雲雀の前では随分しおらしい。


「雲雀とは順調?」


「ぼちぼちだよ。ぼちぼち」


「デートとかした?」


「うんと、まあね」


 にやけを隠せていない。順調過ぎて、口角が自然に上がってしまうほどらしい。

 

「雲雀はどうだ? やっぱり彼女ができるといろいろ変わったりするか?」


「ぼちぼちだな」


「おいおいそんな隠すなって、俺と雲雀の仲だろ? 今更隠し事とかいらねーってばよっ」


 肘で脇腹を軽くつつく厄介ムーブをかます。

 雲雀は自分から話さない奴だから、こっちから聞く方が良い。仏頂面は変わらないが、ノリ良く話し始めるのだ。


「確かに。ま、どっか出掛けたりとかは増えたな」


「ほう……どこ行った?」


「ショッピングモール。あとは近くのスタバ」


「おぉ……ちゃんと彼氏してるんだな……!」


「そりゃな」


「やっぱりお前は俺の自慢の親友だよ」


 無論俺は全部知っている。足立さんとの作戦会議で惚気られるせいで、嫌でも頭に残っている。スタバで雲雀がフラペチーノを頼んだのも知っているぞ俺は。

 作戦会議について雲雀は知らない。そこだけ申し訳ないが、俺は二人の邪魔をする気概は全くない。

 あくまで彼氏の友達。有力な相談役として努めるだけだ。


「最近付き合い悪くてすまねぇ。大会も近くなってきて意外と時間が取れなくてな」


 雲雀は惣菜パンを飲み込んで、軽く咳払いする。

 野球部は今、大会シーズンだ。うちの高校は前評判を裏切り、順調に勝ち進み、優勝に向けて駒を進めている。


「気にすんな、この時期はずっとそうだっただろ。俺のこと考えるのは大会が終わった後でも遅くねぇって。次は準々決勝だっけ?」


「そうだな。去年準優勝したところと当たる」


「格上か……。頑張れよ、応援してる」


「雲雀くん。私も応援してるよ」


「あぁ、サンキューな」


 可愛らしく雲雀を見上げる足立さん。雲雀もクールな調子で答えている。


「それで、今週末に決勝まで一気に試合が行われるんだ。渡、来てくれねぇか?」


 雲雀は空になった包みをクシャッと握り、俺に向き直る。


「もちろん。足立さんもどう?」


「私も行きたい。いいかな、雲雀くん」


 雲雀はすぐに頷く。足立さんの顔色はほのかに明るくなる。

 

「場所は市内の球場だ。またラインで送っとく」




 夕方。自宅で夕食の時間を待っていると、インターホンが鳴る。画面を点けるとユニフォーム姿の雲雀がいた。

 俺はすぐに玄関に向かい、ドアを開ける。


「雲雀、どうした?」


「今時間あるか」


「あるぞ。夜飯までまだ時間かかるらしいからな」


「なら、キャッチボールしようぜ。久しぶりにな」


「おぉ! グラブ取ってくるからちょっと待っててくれ」


 俺は部屋に戻り、以前雲雀に貰ったグラブを手にする。

 中学時代に余ったからと、雲雀に譲ってもらったグラブ。全く使っていなかったが、たまにこうして使える時が来るととても嬉しい。

 あの時から時間は経って高校生になったが、俺と雲雀の仲は変わらない。


 玄関に戻ると、雲雀が硬式球をグラブに投げつけていた。野球部の癖だろうか。


「雲雀、バッグ置いていけよ。あとバットも」


「そうするわ」


「おう。それじゃあいこーぜ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ