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第4話 親友はなんでも動ける

 数日後の高校。今は体育の授業。

 俺のクラスは男女ともにバスケだ。体育館内のコート二つをそれぞれ男子と女子が一つずつ使う。

 男子は分かれた四チームをローテーションする形だ。

 今は俺の親友がプレー中。クール系イケメンの雲雀は野球だけじゃなく、スポーツ全般が得意だ。


「いけー雲雀!」


「リバウンドから速攻仕掛けろ!」


 相手のシュートミスにより反撃のチャンス。雲雀は味方からボールを受け取り、猛スピードで相手ゴール目掛けて走る。

 バスケ部並みのドリブルと身のこなしで一人抜き、一気にゴール前まで。もう一人のディフェンスには横から体をねじ込ませ、器用にゴール側へ。

 そして、見事にレイアップシュートを決める。経験者のような無駄のない動きだ。


「ナイス雲雀! これで同点だ!」


「すげーな雲雀……。野球だけじゃなくてバスケもできるのかよ……」


「あの顔で運動もできるってやべーな。凄すぎて嫉妬もできねー」


 近くで談笑している男子がそんなことをぼやく。

 雲雀は身長も170半ばある。高校生にして『クール系イケメン』『運動得意』『高身長』というパラメータは出来過ぎだろう。まさにゲームのキャラのようだ。

 

 女子コートからも雲雀を噂する声が聞こえてくる。


「紫咲くんってクール系だけど、スポーツできるのギャップだよね」


「分かる! 野球部なのも意外だし、結構かっこいいよね」


 クール系なのに運動ができる。これは割と最強よりのギャップだ。

 体育の授業をサボるイタい系ではなく、ちゃんと取り組んでちゃんと上手い。いい意味で期待を裏切る存在が雲雀だ。

 雲雀としては運動が第一印象だと思っているだろうが、世間は顔や性格だ。つまり、モテるキャラのクール系イケメン。運動できるという個性がギャップになっている。

 

 だから、とにかくかっこいい。嫉妬しようにも、思わず呆れてしまうくらい。


 試合が終わって、雲雀が俺の元にやってくる。


「お疲れ雲雀。相変わらず上手いな」


「でも、バスケ部が圧倒的だ。あれに勝てる気しねーわ」


 雲雀はストイックだ。謙遜ではなく、本気でバスケ部に勝とうとしている。

 額に流れる汗を体操服で拭く。王道のかっこいい仕草もこいつは様になる。


「雲雀、お前はかっこいい。俺の自慢の親友だよ……」


「ん、おぉ、サンキューな。急にどした」


「どうもしてない。羨ましいなんて一ミリも思ってないぞ」


 俺がコートに向かうところで雲雀に呼び止められる。


「今日の昼一緒に飯食わねーか。足立もいるけど」


「付き合ってるの隠すつもりはないんだな」


「話すつもりがないだけだな」


 二人でいるところを見つかってバレるのは良いらしい。まあ、変に行動を制限されるのは癪か。


「足立さんと食うなら俺はいない方がいいだろ? 俺は二人の時間を邪魔するつもりはないぞ」


 二人が上手くいくには二人の時間が必要だろう。足立さんも俺がいると迷惑だろうし、ここは断るのが吉だ。

 雲雀は少し間を置いて口を開く。


「まあ、そうだな。そうするわ」


「おう。それじゃあ、俺の勇姿を見とけよ!」


「怪我すんなよ」


「しねーよ!」


 帰宅部を舐めてもらっちゃ困る。こちとら毎日通学路で足腰を鍛えてるんだぞ。

 因みにシュートは一本も入らなかった。雲雀は本当にかっこいい。




 昼休み。

 いつもは雲雀と昼飯を食べているが、今日はそうではない。俺は他につるむアテがいないので、このままだとぼっち飯になってしまう。

 空気を読むことが得意すぎてそれが本体になった俺だが、この瞬間だけ教室に居場所がない。自席も狭窄きょうさく感があって、外に出たくなる。空気になりたい。

 

 スマホを適当に弄って廊下に出る。行き先を考えていると、後ろから声をかけられる。音羽さんだ。


「一色くん、もしかしてお昼一人?」


「……まあ、うん。お恥ずかしながら……」


「そうなんだ。一人だと寂しいよね」


 音羽さんは柔らかい笑みを浮かべる。圧倒的美少女の同情は癌に効く。


「じゃあ、今日は紫咲くんと一緒じゃないんだね」


「あぁ、雲雀は……別の人と食べるって」


 念のため濁して答える。

 音羽さんは特段気にせず、辺りに人がいないことを確認する。

 そして、俺へ半歩。


「一色くんが良かったら、今日のお昼一緒にどうかな?」


 背中に隠した手から弁当箱を取り出した。それで口元を隠し、吸い込まれるような大きな瞳で俺を見る。

 それが照れ隠しのように見えて、俺は分かりやすくドキッとした。


「えっと……音羽さんの友達は大丈夫?」


「うん。今日は断って来たの」


「俺が相手でも良いの?」


「……私は一色くんと一緒に食べたい。……だめかな?」


「そんな、だめじゃないよ! 屋上行こう!」


 圧倒的美少女の音羽さんからの誘いを断る訳ない。

 嬉しい。嬉しすぎる。

 これはちゃんとした昼食デートなのでは? 音羽さんがどうして俺と昼飯を食べたいのかは知らないが、今となってはそんなの関係ない! これにて俺もリア充街道まっしぐらだぜ!


 階段を登り屋上へ向かう。屋上には既に人がいて、俺たちのスペースはなさそうだ。


「人多いな……。音羽さん、別の場所行こう」


「そうだね」


 今度は中庭。

 以前足立さんを紹介してもらったベンチには先客がいた。男子三人、体を寄せてみっちり座っている。


「……こっちもいる。ちょっと遅かったか……」


 その次の場所も埋まっていた。

 結局、人気のない校舎裏の非常階段で音羽さんと昼食を食べることに。

 中庭や屋上と違って、ここは狭いし古い。折角の音羽さんとの昼食なのに、少しばかり遅れたせいでこの有様だ。


「……ごめん。いろいろ連れ回したのに、結局ここになっちゃって」


「ううん。一色くんと一緒だったらどこも変わらないよ」


 音羽さんの言葉が温かい。天使はここにいたのか……。


「さ、お昼食べよっか」


 音羽さんは段差に腰掛け、俺に微笑みかけた。

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