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『兄貴、悪いが俺は信長様に呼び出された。〜天下の補佐役、織田家筆頭内政官として無双する〜』  作者: 東西和
墨俣建てちゃうぞ。。

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4 信長の「直轄査察」と美濃の既得権益

三左衛門様が感動のあまり俺の手を握りしめていると、背後の障子が静かに、だが圧倒的な威圧感を持って開いた。


「……三左、下がっておれ。その男をこれ以上『情』で汚すな」


部屋に入ってきたのは、漆黒の小袖を纏った信長様だった。三左衛門様は弾かれたように平伏し、足早に部屋を辞していく。残されたのは、鋭い眼光を向ける主君と、算盤を抱えた俺だけだ。


信長様は、俺が森家に提案した「共済制度」の書状を指先でなぞった。


「面白い。だが、三左一人の家中で収めるには惜しい仕組みだ。小一郎、この『軍事保険』とやらの規模を広げろ。費用は……そうだな、美濃の国人どもが隠し持っている『不当な関銭』を吐き出させて充てろ」


「上様、それはつまり……美濃の既得権益をすべて敵に回せ、とおっしゃるのですか?」


「案ずるな。貴様が算盤を弾き、俺が刀を振るう。それだけのことよ」

1. 「関所」という名のデッド資産を斬る


永禄九年、美濃をほぼ手中に収めつつある織田家にとって、最大の障壁は「各地の国人が勝手に設けている関所」だった。

彼らは「先祖代々の権利」と称して商人をカツアゲし、物流を滞らせている。俺は信長様の威光を背に、美濃の有力国人たちを招集した。


「皆様、朗報です。本日限りで皆様の関所を廃止します。その代わり、皆様を『織田家公認・物流警備隊』として正式採用し、固定給と退職金、さらには負傷時の保険を完備いたします」


「な、なんだと!? 関所を潰せだと? そんな横暴、先祖代々の土地への冒涜だ!」


一人の頑固そうな領主が立ち上がり、腰の刀に手をかける。だが、俺は算盤をパチリと一つ叩き、冷徹な数字を突きつけた。


「落ち着いてください。貴殿の関所の昨年の上がりは、五百貫。ですが、その維持のために雇っている浪人の給与、不透明な徴収による流通の停滞……。それらを差し引けば、実質的な純利益は百貫を切っているはずです。違いますか?」


「そ、それは……」


「一方で、織田家の警備隊に入れば、固定で二百貫。さらに、万が一戦で怪我をしても、先ほど三左衛門様にも説明した『共済』から治療費が出ます。……リスクだらけの百貫と、保証付きの二百貫。どちらが『一族の安泰』に繋がるか、計算できないほど愚かではないでしょう?」


俺の背後では、信長様が退屈そうに爪を噛んでいる。その「退屈」が、返答次第で「処刑」に変わることを、その場の全員が理解していた。

2. 「楽市楽座」への布石


国人たちが青い顔で書状に署名していく中、俺は信長様に次の策を奏上した。


「上様、これで美濃の道は一本に繋がりました。次は『楽市楽座』……つまり、寺社や座の独占権を排したフリーマーケットの開催です」


「ほう、ただ自由に商いをさせるだけか?」


「いえ、目的は**『情報の集約』と『現金化』**です。商人が集まれば、自ずと各地の情報が集まる。さらに、これまで物納だった年貢を市場で換金させれば、織田家は『現金』という最も機動力のあるリソースを手にできます」


この「現金」こそが、後に信長様が大量の鉄砲を買い付け、傭兵を雇うための原動力となるのだ。


数ヶ月後。

美濃の国人たちは関所を守る「門番」から、織田の荷を守る「プロの警備隊」へと変貌していた。そして、そのトップに立つ森三左衛門様の軍勢は、以前とは見違えるような精強さを誇っていた。


「小一郎殿! 見てくれ、この兵たちの顔を!」


三左衛門様が指差す先には、怪我から復帰し、後方支援ロジスティクスを担当するベテラン兵と、その背中を見て「死んでも見捨てられない」と確信して訓練に励む若手兵の姿があった。


「計算で人の心は動かせぬと思っておったが……。小一郎殿、貴殿が示したのは『情』ではなく、部下への『誠実さ』の数値化だったのだな」

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