5・サーチ
「高校卒業までは施設に居れるんだよ。そこからは出て行かなきゃないけないんでね。仕事は掛け持ちでやったね、昼の仕事と夜はラーメン屋で働いたよ。とにかく信じられるのは金だったからね」
「サラリーマンになったのはいつですか?」
「米軍基地に近かったから高校の時から基地で働いていたんだよ。で将来的に有利になるから英語を必死で覚えたんだよ」
「ネイティブイングリッシュですね」
「書くのは苦手だけど、とりあえず会話は大丈夫になったな。23歳ぐらいの時に基地の奴からの紹介で外資系の会社の日本支社の社員になったんだよ。そこからはとにかく結果を出しまくったな。外資系はプロセスは重要視されなくて結果が全てだからね」
「大変ですね」
「そんな事は無いよ、仕事をやっている人はみんなそうだと思うよ?、それで会社の健康診断で癌が見つかったから、会社辞めてラーメン屋やったんだよ。例のラーメンを再現したくてね、何かヒントがあればって、色々なラーメンを作ってみたんだけど再現に至らないね。お手上げだね」
「本当に多彩?なラーメンですね、良く思いつきますね。あのグリーンラーメンとか不思議ですもん」
「仕事で国内外問わず色々行ってたからな、その味の経験を元に色々作ってるよ」
辛一さんは調査にあたって名前と住所などの個人情報の使用を許可してくれた。
調査費用も請求してくれ。とのことであった。
親父に辛一さんの話をしたところ、仕事はこっちでやるからお前は調査をしろ。っと言ってくれた。
集中出来るのはありがたい。
さて・・・
辛一さんが聞いた「ヤブサカさん」だが、「薮坂」であろうか?なかなか無い苗字だと思う。
結婚して「薮坂幸子」になっては居ないだろうか?
SNSで検索をかけてみるが引っかからない。
だか「薮坂」と言う苗字は引っ掛かった。
やはり全国的に多くはない。
奈良の方に見られる固有の名前らしい。
(どうするか・・・)
SNSで引っ掛かった、ワインレッドのダイハツのミゼット2カーゴをアイコンにしている「薮坂光」と言う人に、ダメもとでダイレクトメールを送ってみる事にした。
末期癌で余命が無い事。
一連の辛一さんと母の幸子さんの話とラーメンの話。
あとは俺の名前と住所。
3日後、返信が来た。
「ヤブサカさん」は薮坂光さんのお爺さんの上の兄と言う事だ。2人兄弟でヤブサカさんが長男だったが東京に出てってしまい、しょうがなく次男の光さんのお爺さんが家と家業のうどん家を継いだ。
光さんのお爺さんは健在だか、ヤブサカさんはもう亡くなっているそうだ。
幸子さんだが遺産相続でかなり揉め、親族の縁が切れてる状態と言う事だが、住んでいる所は知って居る。とのことだった。
薮坂光さんは驚く事に辛一さんの事も俺の事も知っているらしい。
会って話したいと言う事だった。
光さんの都合にあわせ明後日、10時に明治神宮の原宿側の鳥居で待ち合わせた。
小田急参宮橋に住んでいるそうだ。
ずいぶん近くに住んでいてびっくりした。




