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3・理由

グリーンラーメンもかなりの評判だったようだ。

見た目のインパクトの投稿と、コッテリして濃厚・舌触りよく滑らか・爽やか・意外とサッパリと言う味の感想も多い。


ラーメン業界界隈のSNSはザワ付いている。

『どんな味なのか?想像も付かない!』

『一度でいいから食べてみたい!近所に住みたい!』

っと投稿画像には多くのコメントが付いている。


辛一さんは周りに迷惑をかけなければ、写真撮影もOKしている。

食べ方も「先にスープを味わってくれ!」なども無く、客の自由でやってくれ。と言うスタイルだ。

水も出さないので、酒以外のドリンク持ち込みはOKだ。

ただ麺を少なめとか固めなどの個別オーダーはお断りしている。



◾️◾️◾️◾️



製麺所の片付けを終えて昼前になったので、長寿庵に空箱を回収に行く。

普通の店ならオープン時間だが、長寿庵はもう全部売り切れて片付けをしている頃だ。

普段なら翌日に持ってくるのだが、定休日の前の日は回収している。


ハイゼットを店の前に停め店正面の暖簾をくぐる。

辛一(しんいち)さーん!箱の回収です!」


「・・・・」


(辛一さん外に出てるのか?)


『ガタッ』



厨房奥から音が聞こえた。

(強盗か!)

工藤は厨房に飛び込み、音のした方を見ると辛一さんが床にうつ伏せになって倒れている。


「辛一さん!」


身体を起こすと、虚だった目の焦点が合い俺を見る。

「だっ、大丈夫だ持病だよ、持病だから」

俺は念のため救急車を呼んだ。


しばらくすると救急車が到着し、隊員が辛一さんを担架に乗せた。

辛一さんがいつも持っている、A4サイズの巾着袋を隊員に渡す。

辛一さんは隊員に話しかけた。

隊員は巾着の中からお薬手帳を見ると、どこかと連絡をとり始めた。

「通院している K病院で受け入れるそうなので向かいます」


◾️◾️◾️◾️


ベッドで辛とさんが横になっている。

「しばらく入院だなぁ、工藤ちゃん閉店の手紙書くから貼っといてくれないか?」


「店畳むんですか!?」


「さすがにもう身体が動かんよ。末期癌で後一年って言われてからもう過ぎちゃってるからね」


「それって、いつの話ですか?」

「リーマンの時だな。そこの検診で見つかってな、でもう手遅れで、家族も居ないし好きな事をしようと思って会社を辞めてラーメン屋だよ」

「好きな事でラーメン屋ですか・・・」

「探し当てた空き物件が、何の皮肉か長寿庵とは笑ったがな」


「・・・辛一さんちょっと聞いていいですか?」

「ん?、良いぞ?何だい?」

「何でラーメンにこだわってるんですか?何を求めてるんですか?」


「・・・・母親の味かな」


「母親ですか?」

「どうしようもない女だったが、小学生の頃よく作ってくれたあの塩ラーメンがもう一度食べたいんだ」

「塩ラーメンですか?その時代に塩は珍しいですね」

「思い出補正入ってらかも知れないけどなぁ」


辛一さんは天井を見上げ声を絞り出した。

「もう一度だけでいいんだ・・・」


「お母さんに聞けませんか?何処にいるんですか?」

「分からないなぁ、俺が58歳だから・・・生きていれは78歳ぐらいかなぁ」

辛一さんの命はきっと長くない、死に行く者独特の死相が見える。

俺は決めた。

「辛一さんお母さんちょっと探して見ます」

「えっ!?、いいよ!無理しないでくれ!」

「ちょっと探してみて手掛かり無ければ辞めます、その幻の塩ラーメンを食べてみたいですから」


俺は決めた事はやるので辛一さんもすぐに諦めた。

「・・・じゃあ工藤ちゃんお願いするよ、よろしく頼む」

「少しお母さんの話を伺っていいですか?」


「あぁ、俺が小学校の頃だなぁ1960年代だな・・・

レコード店から洋楽のホテルカリフォルニア・ダンシングクイーンが流れて歌詞は良く分からないけど、良い曲だなぁって思ってたよ」

1995年生まれ、今年30歳の俺でもその2曲は知っている。


「邦楽では秋桜とかあずさ2号がTVでよく流れてたな。今でも曲を聴くとあの頃の記憶がフラッシュバックするよ・・・」

この2曲も知っている。

昭和の曲は名曲が多いな。と思った。





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