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謎アイテム誕生


「わぁっ……見てください神様! 素材がいっぱい落ちてます!」


 しばらく進み、俺たちは新たな部屋に辿り着いた。

 ユナが歓声をあげながら駆け寄った先には、金属の塊、剣の柄、赤い宝石、動物の骨、布の切れ端――などなど、何に使うのかよくわからない素材アイテムが山のように転がっていた。


「……なるほど、さしずめ装備製造部屋ってやつだな」


 この部屋の扉には、【+???】の表記があった。

 ハテナマークが出たのが初めてだったので、一度は選ぶのを躊躇したが、プラス表記があるから悪い結果にはならないだろうと選択した。


 部屋の中央には鍛治場で使うような炉が鎮座している。炉には【使用回数:1】というメッセージと、三つの空きスロットが浮かんでいた。

 きっとここに三つの素材を入れて装備を作れってことなんだろう。どれとどれを組み合わせるかで、性能が大きく変わってくるという――半ば博打のようなやつだ。


 残念ながら素材自体に文字や数字が浮かんでくることはなかった。もし見えていたら最強の装備が作れただろうに、残念で仕方ない。


「よし、ここは慎重に選ぶぞユナ。剣の柄と金属の塊あたりの無難な組み合わせなら、今より良い剣くらいにはなる――」

「わたしはこれがいいです!」


 俺の指示を最後まで聞くこともなく、ユナが掴んだのは赤い宝石、布の切れ端、そして骨。


「おい待て、それじゃ装備っていうか……なんだろう、なんか悪魔とか召喚しちゃいそうな感じじゃない?」

「だってこの組み合わせ、キラキラしてて可愛いじゃないですか!」


 ――可愛いか? 骨だぞ骨。


「うーん……まあいいか。どうせ出来上がりは俺にも予想できないんだ。今回はユナの好きにしていいぞ!」

「やったぁ!」


 勝手に合成を始めないだけ進歩したなあと感慨に耽りつつ、ユナが次々と素材を炉に放り込む姿を見届ける。


 そして――


「じゃじゃーんっ! できましたっ!」


 振り返ったユナが身に着けていたのは、ブローチだった。ドクロの意匠で、眼窩(がんか)のところに深紅の宝石が埋め込まれており、黒いリボンで装飾されている。

 なんというか……可愛いのか不気味なのかわからない謎装備としか言えない見た目だった。


「な、なんだその……うん……なんか、すごいな……」 「どうですか? 似合いますか?」


 ユナはブローチを胸に付けて、得意気に胸を張っている。

 

 うん、まあ……似合わなく……はない。とはいえ、ユナのビジュアルの良さがあってようやく成立するレベルだ。

 だが問題はビジュアル云々ではなく、装備としての性能だ。けれど、この感じじゃあまり期待はできそうにないだろうな。


 ――と、思っていたのに。


「はぁ!? レベル【214】!? ちょっと待て、さっきまでユナのレベルは【107】だったよな!? あの強そうには見えない謎装備だけで倍になったってのか!?」


 今までさんざん苦労して上げてきたレベルが、一気に倍に膨れ上がっていた。新装備しゅごい。

 

「お、おいユナ……それ、適当に選んだんだよな?」

「適当じゃないですよぅ。ビビッときたのを選んだんです」

「それを適当と言うのでは……? いやでも結果的に、一番の当たりを引いたってことか……?」


 いつもはハズレばかりを選びそうになっていたユナだが、今回は最高の引きをした。果たしてトラブルメーカーなのか強運の持ち主なのか……。


 0か100かの極端な結果にしかならないユナの特異性に呆れつつも、俺は笑っていた。


「……ったく、お前は見ていて飽きないな」

「……ねえ神様。わたし、似合ってるかどうかの返事を聞いてないんですけど?」


 突如、頬を膨らませて拗ねた表情をするユナ。身に付けたアクセサリーの評価を求めるあたり、年相応の女の子って感じだな。

 ……しかし、彼女いない歴=年齢の俺に気の利いたセリフなんて言えるわけもない。なので、思ったままを伝えることにした。


「まあ、似合ってるよ。でも、ユナが可愛いからギリ成立してるって感じだけどな」

「…………」


 俺が忌憚のない意見を述べると、ユナはメモリ不足のパソコンのようにフリーズしてしまった。

 ――しまった、返答を間違えたか!?


「えへへ~」


 ――っ、セーフ! 笑っているぞ、少なくとも怒ってはいないみたいだ!


「さっ、神様! 先に進みましょーう!」

「お、おうよ」


 もともとハイテンションな子だけど、心なしか若干テンションが上がったような気がする。

 そんな違和感を胸に抱きながらも、俺は頬を叩き気持ちを切り替え、次の扉の選別を始めるのだった。

 

 ――こうして俺たちは、大幅な戦力強化を果たし、さらに奥へと進む準備を整えた。

 そして、俺の体は強大な何かに近付くのをひしひしと感じ取っていた。そう、このダンジョンの最奥にある秘薬……そして、それを守るボスの存在を――。

 

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