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憧れのゲーム世界へ転生

広瀬告彦(ひろせつぐひこ)。お主の魂はこの世界の輪廻転生から外れ、別の世界へと移ることになる」

「――はい、わかりました神様」


 俺の名前は広瀬告彦、27歳。独身の社畜リーマンだ。

 ある日の仕事帰り、突如トラックのヘッドライトの光に包まれたと思ったら、気づけばスーツ姿のまま、見知らぬ真っ白な空間にいた。

 そんでもって、いかにも神様って感のじいさんが突如目の前に現れ、突拍子もないことを告げていた。だが、俺はこの程度のことで取り乱したりしない。いたって冷静に返答できるのだ。


「……ずいぶんと簡単に受け入れるのう。慌てる様子もない。お主、死んだんじゃよ?」


 神様はぽかんとした表情で俺を見ていたが、まあ今のところすべて想定内なので、慌てる必要がないだけだ。

  俺はディープめのオタクなので、トラックに轢かれて見知らぬ空間に来たとなれば、あとの展開なんて容易に想像ができる。


「はい、異世界転生ってやつですよね。わかります。あ、とくに現世に未練とかないんで気にしないでください」


 現実に戻っても仕事仕事仕事。それしかない毎日だ。

 新作のゲームやアニメを楽しめなくなるのは残念だが、あの日常に戻りたいかと言われれば、答えはノーだ。


「う、うむ……説明が省けて助かるんじゃが、ものわかりが良すぎるのも気持ち悪いのう」

「なんかすいません」 

「ま、ええわい。じゃあさっそくワシの管理する別の世界へと魂を送り込むぞ。その世界で()()()使()()を果たしてほしい――」


 特別な使命? ってことは、あれか。勇者として魔王を倒したりとか、俺TUEEEして、ヒロインからモテモテになるとか……!?


 くぅ~っ、メチャクチャにやけきた。だってこんなん、オタクなら全員一度は憧れるシチュエーションだろ!


 ――などと、余計なことを考えている間に、俺の足の先あたりがキラキラとした粒子となって消えていた。

  

「うおっ! もう転生始まってる!? 神様、ちょ、ちょっと待ってください。転生する前に、いくつか質問があるのですが!」


 いくらこの展開に慣れているとはいえ、いろいろと聞いておくべきことはある。異世界転生といってもいろいろなパターンがあるからな。事前情報は大事だ。


「……む? すまんがもう転生を初めてしもうたんで時間がない。ひとつふたつ程度しか答えてやれんぞ?」

「ええっ!? マジすか助かります!」


 神様の言葉を受け慌てて自分の身体を確認すると、既に膝下あたりまでが粒子化していて、それが全身に至るまでそう時間がないことを悟る。


「え、えーと……そうだ、俺の行く世界のことを教えてください!」


 時間制限があるため、質問の要点を絞らなければならない。

 俺は平凡な脳みそをフル回転させながら考えたが、慌てていたせいか、結局『転生先の世界について』という平凡な質問しかできなかった。


「そうじゃのう……文明レベルはお主の世界でいう中世ヨーロッパと同じ程度かのう。ただ、お主の世界と決定的に違うのは、魔物や魔法が存在するというところじゃ。

 ……ああそうそう、この世界を模したゲームがお主の世界にあるんじゃ。以前気まぐれで作らせたやつなんじゃが、けっこう有名なんじゃよ」

「おお……!」


 まさか、ファイナルクエストやドラゴンファンタジーみたいな、いわゆる王道ファンタジーRPGなのか!?

 有名タイトルは一通りプレイ済みだから、もしかしたらゲーム知識で無双……なんてこともできちゃうんじゃないか!?

 有名ゲーム世界へ行けるだなんて、これぞまさしく神対応!


「あ、ちなみにそのゲームのタイトルって――」


 より詳細な情報を聞き出そうとしたその瞬間、俺の声は途切れてしまった。

 いつの間にか喉元あたりまで粒子化してしまっており、もう声を発することができなくなってしまったようだ。


 最後に見えたのは、笑顔でひらひらと手を振る神様の姿。

 結局は有名なゲームの世界に転生するということしかわからなかった。……まあいいか。ゲーム知識は豊富に持ってるし、向こうに行ってからなんとかなるだろう。


 ――そんな呑気なことを考えながら、俺の意識は再び途絶えるのだった。

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