#11 勘違い女子高生
素直じゃない二人がイチャイチャしてる話です。
朝、学校につくといつも通り田中が話しかけてきた。
「おはよう~、昨日は腕貸してくれてありがとね。血流大丈夫だった?」
若干申し訳なさそうに、田中が聞いてきた。本当のところは、貸した直後は若干違和感があったがすぐに戻ったので何もなかったことにする。
「あぁ、大丈夫だよ。今日は胸を貸してやろうか?」
ちょっと恥ずかしかったので、冗談を交えて返事をする。
「今日はたぶん大丈夫かな。逆に、私が胸を貸してあげようか?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。絶対罠だ。乗ったらなんか言われるやつだこれ。俺が強気に出れないのを知って言ってるな!絶対いつか仕返ししてやる…が、今は適当に返す。
「間に合ってるので大丈夫です~」
...なんかすごい形相で睨んでくる。ちょっと怖いな...まさか、いつでも揉めるような相手がいると勘違いされたか?
「間に合ってるっていうのは、別に今は借りたいって思ってないって意味で、お前以外にこういう冗談を言う相手がいるって意味じゃないからな?そこ理解してOK?」
...もっとすごい形相で睨んでくる!目怖ッッ!...もしかして、借りたいって言ってほしかったのか?
「その...お前の体はいいと思うし、辛くなったら借りたいんだけど、今はいいかな...」
お、やっと田中が口を開いた!
「あっそ。あんたにしては面白くない冗談だね」
あの視線はしっかり冗談を返せって意味だったのか...本気で答えてしまった...
「でも、今回はいいや。今度からはもっとノリ良くしてよね」
そう言って田中は自分の席に戻っていったが...最後顔ちょっと赤くなかったか?気のせいかな…
昼休みの時間になった。朝のことがあって田中との昼ごはんは沈黙が続いていた。
「なあ、朝のことまだ怒ってるのか?ごめんて」
沈黙に耐え切れなくなって、そう言ってみた。
「うるさい。間に合ってますとか言った人には私の体触らせないから」
田中がなぜか少し悔しそうにそう呟く。俺はといえば...「いや、そう言いながらあなたこの休み時間中にも何回も俺の頭触ってきてますよね?」と言おうとしたが、火に油を注ぐだけなのでやめておいた。
「本当に許してよ~。今この瞬間が一番胸を貸してほしいよォ~」
...胸といった瞬間、田中がビクッと動いたが胸(という単語)に敏感なのだろうか。
「えぇ~~~、仕方ないなぁ。そんなに言うなら胸を貸してあげても...」
と言ってこっちに胸を突き出してくる田中。絶対勘違いしてる!
「違う違う!胸を貸してほしいっていうのは、慣用句のほうの意味で、どう話せばいいのか教えてほしいって意味だから!」
田中が20秒ぐらいフリーズした。そして、俺が言った意味を完全に理解したのか、いきなり頭を叩いてきた!なんだこの暴力女!
「人に教えてほしいなら素直にそう言いなさいよ!わかりにくいのよ!その冗談!本気にしちゃったじゃない!」
さらにポコポコ殴ってくる。男女平等主義者になろうか迷うところだな…
「ごめん!ごめんって!でも、胸見せてくれてありがとうな!ピンクのブラは可愛かった!」
しまった!つい言ってしまった!またフリーズする田中。次は5秒で復活し、急いで胸元を隠す。自分の体を抱くように隠しながら、
「勝手に見ないでよね!あと、今日のは別にそういう気が合ったわけじゃないから!適当に選んだだけだから!...わかってたらもっと可愛いのを...」
こっちは何も聞いてないのに勝手に自白する田中。正直ちょっとかわいい。
「正直ちょっとかわいい。」
間違えて本音を言ってしまった。めっちゃ恥ずかしい!もうだめだこれ。あ~~、どうしよ。本音言ってキモがられたり、引かれたりするのめっちゃ嫌なんだよなぁ...っていうか田中の顔がめっちゃ赤くなってる!まずいかこれ?
「!?これだけ見せて、感想それだけ!?もっと、なんか、こう...可愛いとか言えないわけ!?この会話下手!」
途中で声が小さくなって一部聞こえなくなったが、大体は分かった。つくづくこいつが俺のことを甘く見てるってこともなぁ!言ってないだけで思ってるんですけど!?言ってやる!言ってやるぞ!
「...可愛すぎ...」
はい、勇気を出して言いましたが、残りは声が小さすぎて聞こえませんでした。敗北したのは俺です。「は~~、こんなことで言い争って馬鹿馬鹿しい...疲れたから寝るわ」
田中が笑いながらそう言う。さっきまで言い合ってたのに、よく笑えるなぁ。笑ってたのは俺も一緒だけど。
「じゃあ、あんたの膝貸して」
???なんで膝?胸じゃなくて?
「そっちのほうが寝やすいでしょ?いいから、さっさと寝かしつけて」
そう言うと、田中が俺の膝に何の躊躇もなく頭を乗っけてきた...何というかこれは、ちょっと可愛すぎね?...と考えている間に、田中が寝てしまった。
「おい、このままじゃいろいろまずいだろ!」
そう叫ぶが起きない。仕方ないので、少し動かしてソファに寝かせる。
...叫んでも起きない今ならいいか...?そう思って田中の服に手をかける。
…
…
...
よし。これで目立ったシワが直せた。脱いだり着たりして、少し汚れてるからそこも何とかしておこう。本当に触ったらダメそうなところ以外は、道具を使って汚れを落としていく。
「ふぅ~~」
これならこのまま教室に戻っても、田中が変な格好だと言われないだろう。
今日の昼休みは特に疲れたので俺も少し寝ることにしよう...
もし神サマってのがいるならよ 見逃してくれよ...こんな俺でもよぉ...好きな女子と昼寝するぐらいの幸せは願っていいよな...?
某鋼漫画のセリフを思い出しながら、俺はゆっくりと眠りに着いた。