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影は、ゆらりと動く。
身体は黒く、霧のように揺らめいていた。輪郭はあるのに、実体がない。まるで、亡霊のように。
リリィが静かに口を開いた。
「……“ここにいた者たち”ね」
「どういう意味だ?」
レオンが剣を構えたまま尋ねる。
「ここで研究をしていた者たち。彼らはもう存在しない……でも、その“影”だけが残っている」
影が近づく。
冷たい空気が漂い、闇が広がる。
レオンは剣を握る手に力を込めた。
「斬れるのか?」
「試してみる?」
ミアが薄く笑い、指先を軽く振った。
瞬間——炎が迸る。
彼女の手から放たれた火球が影に直撃し、爆ぜる。しかし、影は怯まなかった。
「効かない……?」
「違う!」
リリィが叫んだ。
「物理的な攻撃は通らない……でも、こいつらはただの亡霊じゃないわ!」
「じゃあ、何だってんだ!」
ガルドが叫ぶ。
影が、襲いかかってきた——。