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遺跡の内部は静かだった。
いや、静かすぎる。
レオンは無言で歩を進めながら、背後に気を配っていた。どこかで何かが蠢いている気配がする。音はしない。だが、確実に“いる”。
ミアがそっと壁に触れる。
「魔力が染み込んでる。昔、ここでは相当な魔術が使われてたみたいね」
「魔術の研究所だったんだろ」
「そう。でも、研究所にしてはおかしいのよ」
「何が?」
「ここ、あまりにも……人の気配がない」
魔術の研究が行われていたなら、そこには人がいたはずだ。だが、ここにはその痕跡がない。生活の名残も、残された書物もない。ただ冷たい石と、染みついた魔力だけが残っている。
「まるで、ここにいた全員が……消えたみたいだわ」
ミアの声が落ちる。
そのとき——
「っ!」
ガルドが咄嗟に短剣を構えた。
何かが動いた。
回廊の奥、闇の中から、黒い影がゆっくりと現れる。
それは、人の形をしていた。
だが、人ではなかった