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扉は重く、ゆっくりと開いた。
その先に広がるのは、湿った空気と薄暗い石の回廊だった。
カランの遺跡。数百年前、魔術師たちが研究施設として築き上げた場所。だが、何の研究が行われていたのかは記録に残っていない。ただ、一つだけ確かなことがある——この場所は、人が足を踏み入れるべきではない。
レオンは剣を抜いた。ガルドは無言で影のように身を低くし、ミアは指先に魔力を集める。リリィは静かに十字を切るように手を動かした。
彼らはそれぞれ、一歩踏み込んだ。
瞬間——扉が背後で閉じた。
轟くような音が響き、遺跡の空気が変わる。
「おい……」
ガルドが低く呟く。
「やばいな。まるで、獲物を閉じ込めた檻みたいだ」
「戻れるの?」
ミアが扉を振り返るが、すでにそこには冷たい石の壁しかなかった。
扉は消えた。
「……どうやら、進むしかないようね」
ミアは薄く笑ったが、その声には緊張が滲んでいた。
「覚悟はできてるだろ」
レオンはそう言って、回廊を進み始めた。