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夕方、馬車は森の手前で止まった。
「ここから先は徒歩だ」
御者がそう告げると、レオンは無言で馬車を降りた。ガルドが伸びをし、ミアが欠伸を噛み殺しながら地面に飛び降りる。リリィは静かに降り、法衣の裾を整えた。
森の向こうに、カランの遺跡がある。
古い文献によれば、かつてここは魔術の研究施設だったという。だが、何が研究されていたのか、その詳細は記録にない。封印の宝珠が存在するということは、何かを封じるためのものがあったはずだった。
それが何なのか、ギルドの依頼には書かれていなかった。
「妙な話だな」
レオンが呟くと、ガルドがにやりと笑った。
「何がだ?」
「誰も受けたがらない依頼。それだけならまだしも、遺跡の詳細が不明瞭すぎる」
「何か隠してるってことか」
「かもしれん」
レオンは剣の柄に手を置き、森へと向かった。
「用心しろ」