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あぶれ者たち  作者: 冷やし中華はじめました
1回限りのクラン
2/23

2

馬車は南へ向かっていた。


 ギルドを出た四人は、カランの遺跡へ向かうため、街道を行く商隊の荷馬車に乗せてもらっていた。


 レオンは荷馬車の端に座り、剣の柄に手をかけたまま、ぼんやりと前方を見つめていた。荷馬車はがたつき、車輪が石を踏むたびに軋む音を立てる。


 横目で見ると、ミアが荷物の上に寝そべり、指先で宙をなぞっていた。詠唱の練習だろうか。彼女はときどき何かを呟いていたが、それが魔法の言葉なのか独り言なのか、レオンには判然としなかった。


 ガルドは反対側の端に座り、足を組んでナイフを弄んでいる。刃先を爪に当て、わずかにこすりながら、その様子をじっと見つめていた。


 リリィは馬車の中央に座り、静かに祈っていた。膝の上に両手を置き、目を閉じている。彼女が動くと、白い法衣がさらりと波打った。


 どこか妙な空気が漂っていた。四人とも互いを意識しながら、誰も口を開かない。


 やがてミアが小さく笑った。


「なんだか、変な旅だね」


 レオンは視線を向けなかった。


「何がだ」


「私たちみたいな連中が、こうしてまとまって旅をするのがね。普通、パーティっていうのは信頼で成り立つものなのに」


 ガルドが鼻で笑った。


「信頼? 冗談だろ」


「まったくね」


 ミアは腕を枕にしながら、仰向けになった。


「どうせ、すぐに解散するパーティ。気楽でいいじゃない」


「俺は気楽には見えねえけどな」


 ガルドは刃先をくるりと回し、鋭い目でリリィを見た。


「なあ、あんた。神の声が聞こえるんだって?」


 リリィはゆっくりと目を開けた。


「ええ」


「それ、本当か?」


 ガルドの声には、露骨な猜疑が滲んでいた。


「信じるかどうかは、あなたの自由よ」


 リリィは表情を変えずに言った。その声には感情がなかった。まるで、長年同じ言葉を繰り返してきたかのように。


「ふうん」


 ガルドはそれ以上追及せず、再びナイフに視線を落とした。


 沈黙が落ちる。荷馬車は進み続け、やがて街道を外れた。


 森が見えてきた。

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